良い行動を習慣づけるのに、自動音声応答が役に立つという研究

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運動を習慣したり、タバコをやめたりと、普段の行動を変えるのはなかなか難しいものです。新しい地域に引っ越したとか、子供が産まれたとかのように、環境や社会的な状況に変化があれば行動も変わりやすいものですが、そうした環境の変化も簡単ではありません。

そこで、行動を変えるためにテクノロジーの力を活用できないかということが色々と考えられていて、その中の一つが自動音声応答です。自動音声応答とは、電話上でコンピュータが自動音声を流してユーザーとやりとりする技術です。宅配便の再配達の依頼や、製品の問い合わせ窓口などで、自動音声はよく使われていますよね。

この自動音声応答の技術を行動の改善に活用すると、どんなことができるのというと、

  • 薬を飲み忘れていないかの確認電話を自動で行う
  • 健康に役立つ情報を自動で発信する
  • ユーザーの運動量などの状況を自動で聞き取る

ということをコンピュータを使って無人でできるわけです。

そこで本稿では、自動音声応答の効果として

  • 自動音声応答を活用すると、本当に行動を改善できるのか?

を調べてくれたケンブリッジ大学の研究を見てみましょう。

自動音声応答と行動の変化

ケンブリッジ大学の研究では、自動音声応答を使って行動の改善を実験した15件の研究結果をメタ分析でまとめています。これらの研究では、

  • 薬を忘れずに飲むこと
  • 運動をすること
  • 食事を改善すること
  • お酒を控えること

といった行動の改善に自動音声応答が活用されています。自動音声応答の活用に仕方にも色々あって

  • 個人ごとに合わせた内容が作られるタイプ
  • ユーザーが行動をしたのかを聞き取るタイプ
  • 行動へのフィードバックをするタイプ
  • 健康に関する情報を発信するタイプ

など様々です。

結果1:自動音声応答の効果

メタ分析の結果を見てみると、自動音声応答の導入により

  • 薬の使用が有意に改善した
  • 運動が有意に改善した(効果量0.254)
  • 食生活は少し改善したが統計的に有意ではなかった(効果量0.13)
  • お酒に関する行動改善には全く効果はなかった(効果量−0.07)

ということが分かっています。

行動の種類にもよりますが、自動音声応答は効果量は小さいけど確かに効果があるみたいですね。お酒に関する行動であまり効果が出なかったことから推測すると、自動音声応答は新しい行動を続ける系の行動改善には効果があっても、何かをやめる系の行動改善では効果が出にくいのかもしれませんね。

結果2:どんな音声応答が良いのか?

メタ分析の結果から、もう少し深掘りして自動音声応答の内容に違いを分析した結果を見てみると、

  • 個人名が入ってパーソナライズされた音声応答は効果が高かった
  • ユーザーを支援するようなソーシャルサポートの音声応答は効果が高かった
  • 行動により得られる健康効果を伝える音声応答は効果が高かった

ということ。

自動音声応答はコンピュータベースの無機質な感じがしそうなので、パーソナライズしたりソーシャルサポートの要素が加わると効果が高まるのかもしれませんね。

まとめ

本稿では「自動音声応答で行動は改善できるか」についてお話ししました。

ポイントをまとめると

  • 自動音声応答で効果量は小さいながらも確かに行動は改善する
  • 特に運動や薬の定着で効果があり、飲酒や食生活の改善では効果は低い
  • 自動音声応答の効果量を高めるには、パーソナライズ、ソーシャルサポート、健康効果の情報発信が有効

ということ。

自動音声応答のいいところは、コンピュータが自動で行ってくれるので人の手がかからないことです。自動音声応答と似たものとして、アップルウォッチを使っていると「1時間近く座りっぱなしが続いているので少し立ち上がりましょう」みたいな通知をしてくれます。振り返ってみると、確かに自分の行動はその通知で改善されていて、そのありがたさを改めて実感しました。この調子でAIが発展していけば、将来はAIがトレーナーになって日常の健康を支援してくれるようになるのかもしれませんね。

以上、本稿はここまで。


[参考文献]

*1 : Interactive voice response interventions targeting behaviour change: a systematic literature review with meta-analysis and meta-regression

Naoto

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