マジシャンも使う他人の選択を誘導するための”逆心理”テクニック
人には言われたことと逆のことをしたくなる心理があり、これを逆心理と言います。絶対に押すなと言われると押したくなってしまったり、絶対に覗かないでくださいと言われると覗きたくなっちゃうあれですね。
この逆心理はうまく使えば人の選択を逆方向へと仕向けることができるので、商品の広告などでも使われているということ。例えば、パタゴニアが「このジャケットは買ってはいけません」という謳い文句で商品に注目を集めて、売り上げを向上したという例もあるみたいなんですね。
そして、逆心理を使うのが上手いのがマジシャン。マジシャンは好きなカードを選んでくださいと言いつつも、実はとあるカードが選びやすいように逆心理で誘導していることがあるんですね。
そこで本稿では、
- マジシャンが使う逆心理が本当に有効なのか?
を実験したロンドン大学ゴールドスミスの研究(*1)を見てみましょう。
逆心理とトランプのカード選択
ロンドン大学ゴールドスミスの研究では、5枚のトランプからターゲットの一枚を選ばせる逆心理テクニックで、どれだけ選択率が向上するのかを実験しています。5枚のカードはそれぞれ下の図のようになっていて、引かせたいターゲットはハートの4になります。
カードを選ぶ側の心理としては、
- ハードのKは、一つだけ絵柄のカードで目立つ
- クローバーの7は、一枚だけ黒色のカードで目立つ
- ダイヤのAは、ど真ん中にエースは一番目立つ
- ハートの4は、他の4枚と比べて地味
- ダイヤの9は、一番右で取りやすい位置で目立つ
となって、ハートの4が目立たないように5枚のカードが選ばれています。
それで、マジシャンが使う逆心理のテクニックとしては、
- 「この5枚の中からあなたが選ぶカードは分かっています。さあ選んでください」と、選択者の選択が誘導されていることをあえて強調する
という方法を取ります。こう言われると選択する人には、できるだけ選ばれにくそうなカードにしようという逆心理が働いて、一番目立たないハートの4を選びやすくなるという戦法ですね。
この研究では、カードの位置による選ばれやすいさも考慮して、ハートの4の位置は変えて実験も行い、比較対象としては「この5枚はランダムに選ばれたものだから好きな一枚を選んでください」と逆心理を働かせないグループを用意しています。
結果:
実験の結果
- 逆心理を働かせないシンプルな選択の場合には、ど真ん中のエースが一番多く選ばれて(33.3%)、ターゲットのハートの4は選ばれにくかった(21.2%)
- 逆心理のテクニックを使った場合には、ど真ん中のエースの選択率がガクッと落ちて(15%以下)、ターゲットのハートの4が一番多く選ばれた(31.8%)
ということ。さらには、
- ハードの4の位置を変えても同じ現象が起きたので、たまたまターゲットのカードが選ばれやすい位置にあったのでなく、純粋に逆心理の効果で選択率が向上している
ということ。
つまり、逆心理は実際に有意な効果があってカードの選択率を10%ほど向上していたということです。マジシャンの場合には10%だけ選択率が向上しても、マジックは失敗する可能性の方がまだ高いのでなんとも言えません。しかし、マーケティングで考えれば、自分たちの商品の選択率が10%向上するとなるとそれは大きな違いになりますね。
まとめ
本稿では、「逆心理と選択の誘導」についてお話ししました。
ポイントをまとめると、
- 逆心理は言われたことと逆のことをしたくなってしまう心理のこと
- 逆心理には逆の選択を誘導する効果があり、トランプのカードの選択率を10%ほど向上できた
ということ。
ダチョウ倶楽部の絶対に押すなよ!を押してみたくなるように、逆心理をうまく活用していきましょう。ただし、逆心理がマイナスに働くことも考えられて、営業マンが自分に買わせようとしていると気がつくと、逆に買いたくなくなるということもあり得るので注意しましょう。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]
*1 : Don’t read this paper! Reverse psychology, contrast and position effects in a magician forcing technique.