リスクのある選択をするためには好奇心を高めるのが良いという研究結果

転職した方が良いのか?
それとも、今のまま安定をとった方が良いのか?

新しい革新的な製品を買った方がいいのか?
それとも、みんなが使っている製品を買った方がいいのか?

生きていると安定を取るのかリスクをとって挑戦するのかの選択に迷うことがありますよね。しかし、勇気が出ずになかなかリスクを取る決断ができないこともあるでしょう。

そこで本稿では、将来が不確実な選択においてリスクを取るためには「好奇心」を持つことが大切というお話を、ライデン大学らの研究(*1)を参考にしていきたいと思います。

選択と好奇心

まずは選択を考える上で大切な3つのポイントについて説明していきたいと思います。

  • リスクの回避
  • 後悔の回避
  • 好奇心とは何か?

ポイント①:リスクの回避

例えば、次の2つの選択肢が与えられたらどちらを選びますか?

  • 100ドルをもらう
  • コイン投げをして、表がでたら200ドル、裏が出たら何ももらえない

一つ目の選択肢は確実に100ドルもらえるのに対して、2つ目の選択肢では何ももらえないリスクがあるけど、倍の200ドルをもらえるチャンスもあるわけですね。

実はこの選択では一つ目の確実な選択を選ぶ人が圧倒的に多いです。
人にはリスクの回避を優先するバイアスがあるんですね。
なので、リスクを取るよりも安定する選択をとってしまうのは、心理的には自然なことなんですね。

ポイント②:選択の後悔の回避

選択の後悔の回避は、選択をした後で、その選択が実は間違っていたという情報を知りたがらない現象です。

例えば、新しい掃除機を1万円で買うかどうかを迷って、思い切って買うという選択をしたとします。その後、実はとなりの店では同じ商品が8000円で売っていたという情報を聞いたら少し後悔しますよね。つまり、もう買ってしまった後では、となりの店でいくらで売っていたかの情報は別に知りたくはないということです。

このように人は一度した選択に対して、それが間違っていたと思わせるような情報は知りたがらないことがあります。

しかし、このような情報を回避してしまっては、悪い選択をしてしまった時にそれに気づかなくなってしまいます。 なので、できればきちんとフィードバックの情報を入手して次の選択に活かしていくべきなんですね。

ポイント③:好奇心とは何か?

飛行機が飛ぶメカニズムが知りたい!
思い切ってやってみたらどんなことが起こるのかを知りたい!

など、好奇心とは”何かを知りたいという欲求”のことを言います。

逆を言えば、好奇心を持つためには知りたいと思う情報が必要となります。今の知識じゃわからないけど、もう少しで分かりそうという”情報のギャップ”が人の好奇心を駆り立てるわけですね。

この情報のギャップをうまく使うと好奇心を高めることができて、例えば、

選択と好奇心の関係

選択と好奇心に関するこれらの3つのポイントをつなげると、

  • 人は選択でリスクを避けたがる
  • 人は一度した選択の間違いを示すフィードバックを避けたがる
  • しかし、情報のギャップをうまく作って好奇心を高めれば、リスク回避やフィードバック回避のバイアスに打ち勝てるのでは?

ということ。

つまり、リスクのある選択が怖くて取れないときは、その選択肢への好奇心を高めればいいのではないかというわけですね。

研究によると

ライデン大学らの研究(*1)がこれらの選択と好奇心の関係を実験してくれているので、その中身を見ていきましょう!

実験:知れば知るほど好奇心は高まるのか?

この研究では参加者に次の2つのどちらが欲しいかを選択してもらいます

  • 15ユーロ
  • 中身のわからない包み

15ユーロは確実にもらえる安定の選択肢で、包みの方が何が貰えるのか分からないのでリスクの高い不確実な選択肢にあたります。

ここで参加者は3つのグループに分けられます。

  • 包みの中身について何も情報が無しで選択するグループ
  • 包みの中身は丸いモノとヒント有りで選択するグループ
  • 包みの中身は丸くはないモノというヒントありで選択するグループ

つまり、包みの中身に関する情報(ヒント)を知ることで、包みへの好奇心が高まって選ぶ人が増えるんじゃないかということですね。

その結果は

  • ヒント無し:33%が包みを選択(10/30人)
  • 丸いヒント:70%が包みを選択(21/30人)
  • 丸くないヒント:66%が包みを選択(20/30人)

ということで、不確実な選択肢でも情報を与えて好奇心を高めることで選ぶ確率がグッと上がったという結果が得られています。これは面白いですね。

後から包みの中を教えてくれるなら?

先の実験に一捻り加えて、15ユーロを選択した人でも後で包の中身を教えてあげるという条件で選択した場合は、また違う結果となりました。

  • ヒント無し:66%が包みを選択(20/30人)
  • 丸いヒント:40%が包みを選択(12/30人)
  • 丸くないヒント:53%が包みを選択(16/30人)

先ほどの結果とは逆で、包みの中身のヒントを得た人の方が、包みを選ぶ確率が減ってしまっています。

これがなぜなのかというと、包みを選ばなかった場合にでも包みの中身を知ることになる条件では、「包みを選べばよかった」と後悔する可能性が出てくるわけです。そうすると、この後悔をしたくないためにヒント無しでは包みを選ぶ人が増えて、ヒントを見て後悔しなさそうだなと感じれば包みを選ぶ人は減るということが起きているようです。

つまり、これらの2つの結果をまとめると

  • どっちの選択がよかったのかの結果が後でわからない場合には、好奇心の強さで選択が変わる
  • どっちの選択がよかったのかの結果が後でわかる場合には、後悔しないようにという思考で選択する

というわけですね。

まとめ

本稿では「リスクのある選択をするためには好奇心が役に立つ」というお話をしました。

ポイントをまとめると

  • 情報を知るほどに好奇心は高まって、もっと情報が欲しくなる
  • リスクのある選択肢でも、その選択肢の好奇心を高めれば取る確率は高められる
  • 選択の結果がどちらを選ぼうと分かる場合には、選択の失敗による後悔を回避しようという思考の影響が強くなって、好奇心を邪魔する場合もある

ということですね。

なので例えば、転職したいけど怖くてできないみたいな人は、新しい仕事の情報を増やして好奇心を高めることで、リスクを取る決断がしやすくなると思います。一方で、年収が下がってしまうかもみたいに、選択の結果として目に見える指標に注目すると、選択の後悔の回避へと思考が傾いてしまいます。そんなときは、逆に安定をとることで失っている損失に着目することで、安定をとることの後悔を考えてみると良いかもしれませんね。

以上、本稿はここまで。


[参考文献]

*1: When curiosity killed regret: Avoiding or seeking the unknown in decision-making under uncertainty

Naoto

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