時間を時給換算で考えると幸福は低下してしまうのか?
人によって幸せの形が違うように、幸福感は様々な要因に影響されます。その中でも本稿で注目するのはお金と時間について。
まずお金に関しては、ある一定以上の収入があれば、お金はそれ以上増えても幸福感はほとんど増えないことが分かっています。十分に生活するお金さえあれば、高級品を買ったり贅沢をしたりするお金はあまり幸福にはつながらないんですね。
一方で時間は幸福にとって重要な要素の一つ。時間が増えるということは、家族や友人と過ごす時間を増やしたり、自分が好きな活動に取り組んだりすることができて、人生がより豊かにすることができます。お金を時間を増やすことに使うと幸福感が向上したり、通勤時間などの人生にとって重要でない時間が減ると幸福感が向上するという研究もあります。
そこで本稿では、お金と時間が幸福感に与える影響として
- 時間を時給換算でお金で考えてしまうと、幸福感が低下してしまうのでは?
ということを調べてくれたトロント大学の研究を見ていきましょう。
時間のお金換算と幸福感
トロント大学の研究では三つの実験で時間をお金で時給換算することが幸福感に与える影響を調べています。
各実験では
- 自分の収入額を総労働時間で割って、自分の時給を計算するグループ
- 自分の収入と労働時間を書き出すが、時給換算はしないグループ
が用意されていて、参加者はどちらかのグループにランダムに割り振られています。
そして、自分の時給を換算した、あるいはしなかった後で、
- 10分間自由にパソコンを使う(実験1)
(ゲームを行ったり、SNSを使ったり) - 音楽を聴く(実験2,3)
の幸福感を感じる楽しい活動をしています。この時に幸福感の向上が二つのグループでどう変わるのかを測定したんですね。
想定としては、時給換算で時間をお金で考えてしまうと、楽しい活動を心のままに楽しむことができなくなって、幸福感の向上が低下してしまうということです。
結果:時間のお金換算と幸福感
実験の結果を見てみると、
- 時間を時給換算した人はそうでない人と比べて、自由にパソコンを使った時の幸福感が低くなってた
- 時間を時給換算した人はそうでない人と比べて、音楽を聴いた時の幸福感が低くなっていた
ということ。やはり時間をお金で考えてしまうと、本来は楽しい活動でも幸福感を感じにくくなってしまうという結果になっています。
それでは、なぜ時給換算すると幸福感が低下してしまうのかというと、
- 時間を時給換算した人は、音楽を聴いている最中でも、じれったく感じてイライラしてしまっていた
ということ。音楽を聴くこと時間を割くことで、その時間分のお金を損した気分になってしまうわけですね。
結果2:お金がもらえたらどうなのか?
それでは、音楽を聴いた時間に応じて時給が発生したらどうなるのでしょうか?
三つ目の実験ではこの点を確かめていて
- 時間を時給換算して、報酬なしで音楽を聴く
- 時間を時給換算して、お金の報酬ありで音楽を聴く
- 時間を時給換算しないで、報酬なしで音楽を聴く
- 時間を時給換算しないで、お金の報酬ありで音楽を聴く
の四つのグループを比較しています。
その結果は、
- 時間を時給換算して、かつ音楽を聴くことで報酬をもらった人が一番幸福感が高かった
- 次に時間時給換算しなかった二つのグループが幸福感が高かった
- 時間を時給換算して、報酬なしで音楽を聴いた人は一番幸福感が低かった
となっています。なんと、時間を時給換算したとしても、報酬がもらえる活動なら幸福感が大きく向上するんですね。なので好きなことをしてお金を稼げるというのは、幸福感にとってはとても良いことのようですね。
まとめ
本稿では「時間をお金換算したときの幸福感」についてお話ししました。
ポイントをまとめると、
- 自分の時給を計算して時間をお金で換算して考えてしまうと、楽しい活動を行っても、もったいない気分になって幸福感があまり得られなくなってしまう
- ただし、楽しい活動でお金ももらえるなら、逆に時給換算することで幸福感は高まる
ということ。
楽しい活動でお金ももらえるなら文句なしですが、現実的には楽しいことをしてお金ももらえることは少ないでしょう。なので、楽しむときは時給なんで考えずに思いっきり楽しむことにして、メリハリをつけるのが良いでしょう。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]