歳をとるほど幸福にはマインドフルネスが欠かせなくなるという研究
マインドフルネスとは大きく2つの要素を合わせ持った心の状態で、
- 今ここに心を集中させること
- 価値判断せずに、ありのままに受け入れること
を達成している状態になります。
イメージとしては、悟りを開いたお坊さんのように、余計な価値判断や感情に惑わされることなく、目の前の活動にしっかりと心を向けることが近いでしょう。
そうなると、気になるのが年齢とマインドフルネスの関係について。年齢は高まるほど心は成熟して安定していくものですから、マインドフルネスも年齢とともに上昇していくことが想定できます。
そこで本稿では、
- 年齢が高くなるほど、マインドフルネスは高まるものなのか?
- マインドフルネスが幸福を高める効果は年齢によって強さが変わるのか?
について調べてくれた研究を見ていきましょう。
マインドフルネスと年齢
マインドフルネスは幸福感を高めてくれることが知られています。
マインドフルネスが幸福を高める仕組みとしては、「今ここへの集中」と「価値判断をしない」の2つの要素を起点に、4つのパターンがあることが考えられています。
- 「今ここへ集中する」→「感覚が敏感になる」→「幸福が高まる」
例えば、食事を集中して食べると、味わいもずっと敏感になるように、集中することは感性を高めてくれる。 - 「価値判断しない」→「受け入れの向上」→「幸福感が高まる」
失敗をしても「失敗した自分はダメだ」と価値判断しなければ、冷静に失敗を受け入れることができる。 - 「価値判断しない」→「心の柔軟性の向上」→「幸福感が高まる」
価値判断をしないと固定観念もなくなり、新しいことにも柔軟に対応できる。例えば、自分と違う価値観の人も受け入れられるようになる。 - 「価値判断しない」→「客観性の向上」→「幸福感が高まる」
価値判断をしなくなると、「この感情も一時的なものですぐ良くなる」とか、「人は誰でもこうした苦い思いもするものだ」とか、感情に飲み込まれることがなくなり、客観的に物事をみることができるようになる
そこでフリンダース大学の研究では、18歳〜86歳までの623人のデータを分析して、これら4つのマインドフルネスの幸福向上パターンに、年齢がどのように関係しているのかを調べています。
結果:年齢が高まるほどマインドフルネスは高いのか?
まず最初に年齢が高いほど、マインドフルネスも高まる傾向があるのかを調べた結果を見ると
- 年齢が高いほど、今ここへの集中が高かった(.31)
- 年齢が高いほど、価値判断しない傾向も強かった(.35)
- 年齢が高いほど、受け入れも高かった(.23)
- 年齢が高いほど、心の柔軟性も高かった(.31)
- 年齢が高いほど、客観性も高かった(.22)
ということ。ほぼ全てのマインドフルネスの要素が年齢とともに高まっています。
唯一年齢がマイナスになってしまった項目もあって
- 年齢が高いほど、感覚の敏感さは低下していた(−.18)
となっています。しかし、この感覚の敏感さは幸福感に大して影響しないことがわかっているので、あまり重要な項目ではありません。
結果2:年齢が高まるほどマインドフルネスは大切になるのか?
続いて、幸福感を高めるのに、マインドフルネスが影響する大きさが年齢とともに変わるのかを調べた結果を見ると
- 「今ここへ集中する」→「感覚が敏感になる」→「幸福が高まる」のパターンは、実際にはどの年齢でも見られなかった。
- 「価値判断しない」→「受け入れの向上」→「幸福感が高まる」のパターンは、年齢とともに強まっていった
- 「価値判断しない」→「心の柔軟性の向上」→「幸福感が高まる」のパターンは、年齢とともに強まっていった
- 「価値判断しない」→「客観性の向上」→「幸福感が高まる」のパターンは、年齢とともに強まっていった
ということ。
これらの結果から年齢とともにマインドフルネスで得られる幸福感も強くなっていくことが分かります。ちなみに高齢な人ほど幸福感自体も若干高い傾向も確認されています。年齢を積んで心にゆとりが出てくることは、幸福にとっても大切な役割を持っているようですね、
まとめ
本稿では「マインドフルネスと年齢」についてお話ししました。
ポイントをまとめると、
- マインドフルネスは年齢とともに高まっていく
- マインドフルネスによる幸福の向上効果も年齢とともに高まっていく
ということ。
特に40歳を超えたあたりからマインドフルネスは有意に効果が大きくなるということ。なので、若いうちは感情のアップダウンが激しいエキサイティングな生き方もいいですが、40歳からはマインドフルネスを備えた心に余裕のある大人を目指すとよいでしょう。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]
*1 : Older and more mindful? Age differences in mindfulness components and well-being