テレビを見ると幸福感が下がってしまうのはなぜか?についての研究
普段テレビを見る時間が長い人ほど、幸福感が低いというの割とよく知られているデータだと思います。
しかし、なぜテレビを見ると幸福感は下がってしまうのか?というメカニズムについてはまだよくわかっていないようです
そこで、この問題について、ペンシルバニア州立大学が
- 物質主義
- 他人とのギャップ
との2つの視点でこのメカニズムについて分析してくれた面白い研究がありましたので、本稿ではこの研究を参考になぜテレビを見ると不幸せになってしまうのかを考えていきましょう!
テレビが人を不幸にする原因とは?
この研究ではテレビが人を不幸にしてしまう原因には大きく2つがあると考えています。
原因①:物質主義
一つ目の原因が物質主義です。物質主義とは大きな家を欲しがったり、高級なバッグを欲しがったりと、幸せのために物欲を満たそうとする性質のことを言います。
それで、豪華な家や高級車を持てば人は幸せになれるのかというと、実は逆で物質主義は幸福感を下げてしまうことが分かっているんですね。
しかし、テレビを見るとCMで新しい商品が紹介されていたり、番組の中でも有名人の豪華な家が紹介されたりと、もっと物が欲しいと思わせる刺激であふれているわけです。するとテレビを見る→物質主義が高める→不幸せになってしまうということですね。
原因②:他人とのギャップ
2つ目の原因は他人とのギャップです。テレビの内容を調べた研究によると、テレビはより裕福な人を放送しがちとのこと。お金持ちの家の紹介や、お金のかかりそうな旅番組とかのことですね。しかし実際には、お金持ちの人なんてのは少数派で、そんなにお金を持っていない人の方が何倍も多いわけです。
そうすると上の図のように、現実の富の分布とテレビの富の分布にはギャップができてしまいます。これが原因でテレビをよく見る人ほど、周りは自分よりももっと裕福なんだと勘違いとしてしまうということですね。
つまり、テレビを見る→周りは裕福だと勘違いする→劣等感で不幸になるというわけです。
データを見てみるとわかること
それで、この研究では239人を対象にデータを取得して、この原因が本当なのかを調査してくれています。
その結果として分かったことは、
- テレビを見る時間が長いほど、生活への満足感は低下してしまう
- テレビを見る時間が長いほど、物質主義の傾向が強くなってしまう
- テレビを見る時間が長いほど、他人の裕福さを過剰に見積もってしまう
ということです。そしてさらに
- 物質主義の傾向が強い人ほど、生活への満足感は低くなってしまった
- 他人の裕福さを過剰に見積もってしまった人ほど、自分を下に見るように社会とのギャップを感じてしまっていて、その結果として生活への満足感は低くなってしまった
ということ。つまり、テレビが人を不幸にする原因として
- テレビを見る時間が長い→物質主義が強くなる→生活の満足感が減る
- テレビを見る時間が長い→他人を裕福に見てしまう→自分を下に見る→生活の満足感が減る
の2つメカニズムが存在することがデータから確認されたわけですね。
一方で、3つ目のメカニズムとして
- テレビを見る時間が長い→生活の満足感が減る
という直接の影響もあったということ。この研究で取り扱った要因以外にまだ他の要因が潜んでいるのかもしれませんね。
テレビで不幸になりやすい人、番組の種類
この研究ではさらに、
- テレビで不幸になりやすい人には特徴(年齢、性別など)があるのではないか?
- 番組の種類によって不幸になりやすさが変わるのではないか?
という深掘りをしてくれています。
その結果として分かったことは
- 年齢が高くなるほど物質主義の傾向は薄れてくれる
- 女性の方が他人をより過剰に豊かだと思いがちだった
- 収入が低い人ほどテレビによる幸福感の低下が顕著だった
- 教育が低い人ほど他人をより豊かに見がちだった
ということなんですね。
さらに番組の種類については
- ドラマと音楽・タレントのショーを見る人は、他人をより豊かに見がちだった
- ニュース番組は逆に物質主義や他人とのギャップの傾向が弱かった
- しかし、特定の番組の種類よりも全般的なテレビの視聴時間の方が深く性格の満足度に関係していた
ということ。どんな種類のテレビ番組であってもCMが入ったりする関係で、テレビ全般の視聴時間が長くなるほど生活の満足感も低下してしまうみたいですね。
まとめ
本稿では「テレビはなぜ人を不幸にしてしまうのか?」についてお話ししました。
ポイントをまとめると
- テレビは物欲を刺激して物質主義を強めてしまう
- テレビは裕福さを強調するので自分を下に見てしまう
- それらの結果としてテレビを見る人は不幸になってしまう
ということです。
なので、テレビを見るときには、物欲に囚われないことと、他人と比べて自分を下に見ないことに気をつけた方が良さそうですね。本当に好きな番組を見るは良いとも思いますが、惰性でだらだらとテレビを見るのはやめた方がいいのかもしれませんね。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]
*1: Does Television Viewing Promote Materialism? Cultivating American Perceptions of the Good Life