不安によるパフォーマンス低下を防ぐにはリアプレイザルが効果的だ
人は不安によりパフォーマンスが低下してしまうもので、大きなプレゼンで話し方がたどたどしくなってしまったり、スポーツの試合で思うように体が動かなくなってしまったりします。
なので、大きな不安は適切に対処する必要があって、よく言われるのがリラックスして不安を抑えようというものです。しかし、シロクマについて考えないようにすると、逆にシロクマが頭から離れなくなってしまうシロクマ現象と同じで、不安を抑えようとすると逆に不安が頭から離れなくなって増長されてしまうこともあります。
そこで、ハーバード大学の研究(*1)では、
- 不安は抑え込もうとするのでなく、リアプレイザルで解釈を変えてあげる方が効果的だ!
ということを実験してくれていました。
不安のリアプレイザル
リアプレイザルとは感情を再評価して、悪い解釈から良い解釈へ変えることです。例えば、「ストレスはただ悪いものではなく、適切なストレスはモチベーションを高めてくれる」というように良い解釈を見つけることですね。
それでハーバード大学の研究(*1)では、不安のリアプレイザルとして、
- 不安には「自分は覚醒(興奮)しているんだ」という解釈の変更が良い
と言っています。
面接などの大きな不安を感じたときには、心拍数が高まって心臓がバクバクしますよね。覚醒(興奮)状態も心拍数が高まるので、実は不安と覚醒は非常によく似た感情で、それゆえリアプレイザルもしやすいということ。つまり、「不安で心拍数が高まる=体が覚醒して挑戦モードになっている」と考えると、不安が悪者から味方に変わるわけですね。
不安のリアプレイザルは効果があるのか?
それでハーバード大学の研究では、不安を覚醒と解釈するリアプレイザルが本当に効果があるのかを実験してくれています。どの実験でも
- リアプレイザルグループ
不安を感じたときに「私は覚醒しているんだ」と声に出す - 落ち着けグループ
不安を感じたときに「落ち着いて不安を抑えよう」と声に出す - コントローグループ
不安を感じたときに特に何もしない
の3つのグループが比較されています。ちなみに不安を感じるシチュエーションとしては
- 歌を歌ってもらって、カラオケで歌声が採点される
- スピーチを行ってもらう
- 数学の試験を受けてもらう
という3種類の不安シチュエーションが使われています。
結果:リアプレイザルの効果とは?
それで結果がどうだったのかという
- 歌・スピーチ・数学の試験の全てにおいて、リアプレイザルをした人は、他のグループよりもパフォーマンスが高かった
ということで、リアプレイザルは不安を押し込もうとするよりも効果が高いことが分かっています。やっていることは「自分は覚醒しているんだ」と自分に語りかけるだけなのですが、これが不安に結構効くみたいなんですね。
それで、なぜリアプレイザルが不安のパフォーマンス低下を防いでくれるのかの仕組みをもう少し詳しく分析してみると
- リアプレイザルを行った人は、歌やスピーチ・試験を脅威と考えずに、チャレンジだと考える傾向が強くなっていた
ということ。覚醒したと考えを変えることで、不安のソワソワ感が悪者ではなくなって、困難に挑むために体の調子が高まってきた感覚だと考えられるようになったのかもしれませんね。
まとめ
本稿では「不安のリアプレイザル方法」についてお話ししました。
ポイントをまとめると
- 不安を感じたら、落ち着こうとするよりも、リアプレイザルで覚醒だと解釈した方が、パフォーマンスが向上する
ということですね。
とりあえず不安を感じたら「この心臓のバクバクは覚醒して体の調子が高まってきたからだ」と考えるようにしましょう。今回は不安でしたが、リアプレイザルは他のネガティブな感情も使えるテクニックなので、色々な感情に自分なりの良い解釈を探してみるといいのかもしれませんね。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]
*1 : Get Excited: Reappraising Pre-Performance Anxiety as Excitement