リアプレイザルでネガティブ感情が減るし、記憶力も向上するという研究
リアプレイザルとは、解釈の仕方をポジティブに変えることで、うまくネガティブな感情を抑える手法です。例えば、転んで怪我をしたときに、「この程度の怪我で済んで良かった」とポジティブに考える感じですね。
これまでの研究でも、ネガティブな感情は無理に抑え込もうとするのでなく、リアプレイザルでポジティブに変換しようとする方がうまくいくことが分かっています。
本稿では、リアプレイザルのさらなる効果として、
- リアプレイザルをすると、記憶力も向上するのでは?
ということを調べてくれた研究(*1)を見てみましょう。
リアプレイザルと記憶力
デューク大学らの研究(*1)では、リアプレイザルと記憶力の関係を調べるために、25人の参加者を対象に実験を行なっています。どのような実験かというと、次の3つの方法でネガティブな写真(人が頭を抱え込んでいる写真など)を見てもらっています。
- シンプルに見る
(普通に写真を見るだけ) - 感情抑制で見る
(できるだけ感情を顔に出さないように写真を見る) - リアプレイザルで見る
(写真の出来事が自分や自分の愛する人に起きなくて良かったと思って写真を見る)
3つの方法にはそれぞれ40枚ずつのネガティブな写真が割り当てられていて、合計で120枚のネガティブな写真を見ることになります。そして、これらの方法の効果として
- ネガティブな感情をどれだけ軽減することができたのか?
- fMRIで脳の活動状況を見ると、どんな違いがあるのか?
- 2週間後の記憶テストで、前に見たことがある写真をどれだけ正確に思い出せるのか?
が測定されています。
結果1:リアプレイザルとネガティブ感情の軽減
最初にネガティブな感情の軽減効果を見てみると、
- 感情を顔に出さないようにするだけでも、ただ見るだけよりかはネガティブな感情は軽減された
- リアプレイザルは一番効果が高く、感情抑制よりもネガティブな感情が軽減していた
ということ。
従来の研究結果の通り、リアプレイザルには高いネガティブ感情の抑制効果があることが確認されています。感情抑制は今回の実験では効果ありとされていますが、ネガティブな感情の原因が直接自分に関係することだったりすると、無理に抑え込もうとすることで逆にネガティブ感情が強まってしまうこともあり得るので注意が必要です。
結果2:リアプレイザルと脳波の活動
続いて、3つの手法での脳波の活動状況の違いを見てみると、
- ただ見るだけの場合と比べて、感情抑制とリアプレイザルの方法では、島皮質(意識的な感情を生み出す体験に関する部位)と扁桃体(情動反応や記憶に関する部位)が活発に活動していた。
- 感情抑制と比べて、リアプレイザルでは、前頭前皮質(考えや行動を編成することに関する部位)のいくつかの部位が活発に活動していた。
- リアプレイザルと比べて、感情抑制では、島皮質や縁上回が活発に活動していた
ということ。
3つの方法でそれぞれ脳の中の働きが違っていて、それによりネガティブな感情の抑制効果や、次に述べる記憶の効果が変わってくるわけですね。
結果3:リアプレイザルと記憶力
最後に2週間後の写真の記憶力の結果を見てみると、
- 感情抑制の記憶力は、ただ見た場合とほとんど変わらなかった
- リアプレイザルの方法のみ、感情抑制やただ見た場合と比べて、記憶力が向上していた
ということ。
リアプレイザルにはネガティブな感情を抑制するだけでなく、記憶力を向上させる効果もあることが確認されています。感情抑制にもネガティブな感情を抑える効果はありましたが、記憶力は変わらなかったということ。なので、ポジティブに考えを変換することに、何か特有の記憶力向上効果があるのかもしれませんね。
まとめ
本稿では「リアプレイザルと記憶力の向上」についてお話ししました。
ポイントをまとめると、
- リアプレイザルや感情抑制をすると、脳の処理の仕方が変わって脳波に現れている
- ネガティブ感情を抑えるには、感情抑制とリアプレイザルの両方とも効果的だが、リアプレイザルの方が効果が高い
- リアプレイザルでは記憶力の向上効果もあり、これは感情抑制には見られない
ということ。
試験に受かるかどうか不安など、ネガティブになってしまっている時は、リアプレイザルでポジティブに考えるようにしてみましょう。そうすると、試験勉強も捗るかもしれません。リアプレイザルの考えの変え方は以前の投稿でまとめていますので、そちらをご覧ください。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]