英語は間接的に触れるだけでもちゃんと学べるのか問題

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英語はぜひとも身につけたいスキルの一つですが、勉強方法にも色々と種類があります。

  • 英単語を毎日10個覚える
  • 英会話レッスンを受ける
  • 洋書を読む
  • 洋楽を聴いて覚える
  • 映画を字幕で見る

などなど、どれがいいのか困ってしまいます。

そして、よく聞くのが「英語を使わざる負えない状況に身を置いたら、自然と英語が身についた」という話。確かに、アメリカの赤ちゃんが英語を習得する過程を考えると、英語の勉強なんてすることなく、日常的に英語に触れることで自然と英語ができるようになっているので、これは一理ある気がします。

本稿ではこの問題について、

  • 第2言語は直接的な勉強をしなくても、副次的な効果で学習できるのか?

を調べてくれたラドバウド大学らの研究(*1)を見てみましょう。

英語を副次的な効果で学習する

英語に副次的に触れるということは、英語の勉強以外の目的を達成するために、自然と英語に触れることです。例えば、映画を見るついでに英語の音声に触れるとか、外国人と一緒に仕事をすることになって英語をよく聞くようになったとかですね。

ラドバウド大学の研究では、副次的な英語の学習を4つの段階に分けています。

  1. 音声のみ
    聞き流しの教材のように、英語の音声のみに触れる学習方法
  2. 音声+視覚情報
    映画を英語の音声・字幕で見るとか、外国人のYouTube動画を見るとか、音声に合わせて視覚的な情報もある学習方法
  3. 音声+視覚情報+タスク
    音声や視覚情報に加えて、英語を使って特定のタスクをこなすタイプの学習方法。
  4. 音声+視覚情報+タスク+やりとり
    タスクをこなすのに加えて、その中で他の人と英語でやりとりする必要があるタイプの学習方法。例えば、外国人と協力して仕事するのはこのレベルになりますね。

下に行くほど難易度も向上していくので、より学習効果は高いと予測ができるわけですね。

英語は副次的な方法でも学習できるのか?

ラドバウド大学の研究では、副次的に英語に触れるだけで本当に英語が学習できるのかを調べるために、先行研究32件をメタ分析でまとめています。これらの研究には105の効果量が含まれていて、実験の総参加者数は1964人という規模になります。

結果:英語の副次的な学習の効果

メタ分析の結果を見てみると、

  • 英語の副次的な学習は、効果量がd=1.05で大きな効果があった

と、確かに副次的に英語に触れることでも英語は学べることが確認されています。

それでは、どのレベルで触れればいいのかの結果を見てみると、

  • 特に効果が高かったのは、音声+視覚情報+タスク+やりとりの全てが合わさった場合
  • 続いて効果が高かったのは、音声+視覚情報+タスクの3つが合わさった場合
  • 音声のみと音声+視覚情報の場合には、統計的に有意な効果は得られなかった

ということ。つまり、ただ英語を聞き流すとか、映画を英語版で見るとかでは、あまり学習効果は期待できないということ。英語力を高めるためには、英語を活用して何かのタスクに挑んだり、実際に英語でやりとりする必要があるわけですね。

結果2:その他の分かったこと

この研究で他に分かったこととしては

  • 副次的な学習の効果は大学生>高校生>小中学生の順で、年齢が高いほど効果が高かった
  • 学習効果の測定方法が、選択形式のテストの場合により効果が大きく、自由記述のテストの場合には効果は低下した

ということ。

英語の学習は年齢が若いうちから始めた方が良いと聞きますが、大学生くらいまでならそんなこともないのかもしれません。また、選択形式のテストの方が効果が高かったということで、副次的な効果で学習した内容は、その英語を目にしたときに思い出せても、自分から自由に引き出して使えるレベルまではいかないのかもしれませんね。

まとめ

本稿では「英語は副次的に触れるだけでも学べるのか?」についてお話ししました。

ポイントをまとめると、

  • 英語を副次的に触れるだけでも大きな学習効果がある
  • ただし、音声や映像を聴いたり見たりするだけでは効果はなく、英語を使ってタスクをこなしたり、他の人とやりとりをすることで学習効果がグッと向上する

ということですね。

英語が必要な仕事をしたり、英語圏で暮らしてみたりすることは、必然的に英語のやりとりやタスクをこなすことになるので、高い学習効果が期待できます。一方で、ただ聞き流すだけの教材や動画を見るだけはあまり効果は期待できないので注意しましょう。


[参考文献]

*1 : A Meta-Analysis and Meta-Regression of Incidental Second Language Word Learning from Spoken Input

Naoto

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