他人を許すと人生の意義が高まるという研究結果
ポジティブ心理学で研究されている人を幸福にする要因の一つとして”許し(Forgiveness)”があって、嫌なことをされた相手を回避したり復讐することは自分の人生をネガティブにしてしまって、許すということは自分の人生をもっとポジティブにしてくれるんですね。
そんな許しには実は人生の意義を高める効果もあるという研究結果(*1)を見つけたので、その内容を本稿では紹介したいと思います。
許しと人生の意義の研究
この研究では許しと人生の意義の関係を確かめるために2つの実験をしています。
実験1
一つ目の実験では491人を対象に最近恋人にされた嫌なことを書き出してもらって、そのときの許しと人生の意義を測定します。
また許しのモチベーションとして
- 回避へのモチベーション
- 復讐へのモチベーション
- 慈悲へのモチベーション
の3つも測定していて、回避と復讐が許しのモチベーションに反対し、慈悲が許しモチベーションに正相関します。
その結果がどうだったかというと
- 許しが高い人ほど人生の意義も高かった(r=0.18)
- 回避と復讐が高い人ほど人生の意義は低かった(回避:r=−0.19, 復讐r=−0.28)
ということで、許すことは人生の意義に正相関して、逆に回避と復讐は負の相関をしてしまうことがわかったわけですね。
実験2
一つ目の実験では、最近の嫌なことを思い出してもらって、その時点の1点で許しと人生の意義の相関を調べていました。
2つ目の実験では長期間にわたって許しが実際に人生の意義を上げていくのかを調査しています。
この実験では105組みのカップルを対象に、4ヶ月にわたって定期的に許しを測定し、そして4ヶ月後にどれだけ人生の意義が変化したかを確認します。
その結果は
- 対立が少ないカップルは元から人生の意義は高かった
- 対立が多いが許しが低いカップルは、人生の意義が低くなった
- 対立が多くても許しが高いカップルは、人生の意義が高くなった
ということで、長期間の調査でも許しは人生の意義を高めてくれることがわかったわけですね。
許しはなぜ人生の意義を上げるのか?
それではなぜ許しは人生の意義を上げてくれるのか?というと、許しは人間関係を良くしてくれるからだと考えられているようです。
人生の意義にとって人間関係はとても重要で、例えば家族や恋人のために仕事を頑張れるみたいなことってありますよね。一方で、悪い人間関係は人生に意義にとっても毒になってしまって、すごく嫌なやつがいるとずっと頭から離れなくなってしまうなんてこともあります。
なので人間関係を改善することが大切なわけで、回避や復讐といった行動は人間関係を悪化させてしまうのに対して、許しは唯一その人との関係を修復して人間関係を改善してくれる行動なんですね。
つまり
- 許す→人間関係が改善する→人生の意義が高まる
- 復讐や回避→人間関係が悪化する→人生の意義が低くなる
ということで、研究の結果でもまさにこの現象が確認されたわけですね。
まとめ
本稿では、許しと人生の意義について説明しました
ポイントをまとめると
- 許しは人生の意義を高めてくれる
- 復讐や回避は人生の意義を下げてしまう
ということですね。
嫌なことをされた相手を許すというのはなかなか難しいことかも知れませんが、復讐をして人間関係の泥沼にハマるよりも許した方がずっといい人生になるということで、ぜひ実践していきたいところですね。
そのときのポイントとしては
①自分の中の相手への嫌な感情と向き合う
相手にどんなことをされて、自分はどんな思いをしているのかを書き出してみる
②相手への立場に立って共感を得る
性格や経験、置かれている状況などの違いがあること認識して、
相手の行動に誤解があったり、状況的にしょうがなかった面がないかを考える
③自分からちょっとした親切をする
電話をする、笑顔を見せるなどちょっとした親切から始めてみる
ということに気を付けてみてください。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]
*1: Forgiveness Increases Meaning in Life