時間にもメンタル・アカウンティングはあるという面白い研究
本稿で注目するのは、時間のメンタル・アカウンティングです。
メンタル・アカウンティングは簡単にいえば心の中でのお金の分類のことで、行動経済学で発見された考えになります。この考えでは、人はお金を入手した状況によって心の中でお金を分類していて、その分類によってお金の使い方も変わるというんですね。
例えば、仕事の給料でもらった30万円も、宝くじで当たった30万円も、同じ30万円なのですが、心の中ではこの2つの30万は別々の意味を持っています。なんとなく感覚としてわかりますよね。さらに使い方もこの分類で変わってきて、給料の30万はよく考えて使うのに、宝くじで当てた30万はパーっと使っちゃうなんてことがあります。これがメンタル・アカウンティングというわけですね。
ここからが本稿の主題なのですが、実は研究(*1)で、このメンタル・アカウンティングがお金だけでなく時間でもあるということは発見されていました。つまり、時間の使い方がその時間を得たときの状況で変わるということですね。
それではこの研究をもう少し詳しく見て、うまい時間の使い方を探っていきましょう。
時間のメンタル・アカウンティングの研究
この研究(*1)では時間を大きく次の2つに分けています。
- 仕事の時間
- 余暇の時間
それで、急に自由時間が得られたとして、その時間が仕事中に得られたのか、余暇中に得られたのかで、自由時間の使い方が変わるのではないかということを調べたんですね。
例えば、実験では仕事と余暇で自由時間が得られることのシナリオとして次のような文章を読んでもらって、そのときの自由時間の使い方を調べたわけですね。
仕事のシナリオ
ビジネスコンサルタントのジムは出張へ向かう飛行機を4時半に予約しています。3時半に空港に着くと飛行機が1時間遅れていることがわかりました。仕事のアポイントメントは月曜のためこの遅れは仕事には影響しません。
余暇のシナリオ
ビジネスコンサルタントのジムは家族旅行へ向かう飛行機を4時半に予約しています。3時半に空港に着くと飛行機が1時間遅れていることがわかりました。家族と合流するのは翌日のためこの遅れは仕事には影響しません。
仕事のシナリオといっても、業務時間のようなにきっちりと仕事として決められた時間ではなく、仕事の帰りの飛行機が1時間遅れたとかそんな感じものみたいですね。
この研究では、このような実験をいくつかのパターンを作って、合計で5回行っています。
その結果からわかったことは、
- 同じ自由時間であっても、余暇のシナリオの方が自由時間の楽しみが大きかった
- 仕事のシナリオを読んだ人の方が、自由時間に仕事のことを多くした
- 余暇のシナリオを読んだ人の方が、自由時間に仕事以外のことを多くした
ということで、同じ自由時間であってもそれが得られた文脈で時間の使い方が変わることがわかったわけです。
また、得られた自由時間の長さでも使い方が少し変わっていて
- 自由時間が短い(1時間)と仕事以外のことをすることがずっと多かった
- 自由時間が長い(2時間以上)と仕事のことをすることが増えた
(それでも仕事以外のことの方がまだ多い)
ということもわかっていました。
さらに
- 平日に得られた自由時間は仕事のことに使うことが多かった
- 週末に得られた自由時間は仕事以外のことに使うことが多かった
ということで、曜日によっても時間の意味が変わっていたんですね。これは平日は仕事の日、週末は余暇の日というような意味で、時間が心の中で分類されているからかも知れませんね。
まとめ
本稿では時間のメンタル・アカウンティングについて紹介しました。
ポイントをまとめると
- お金と同じように時間にもメンタル・アカウンティングがある
- 時間を得られた状況によって、その時間の使い方が変わる
(仕事中に得られた時間は仕事に関するをしやすい)
(余暇中に得られた時間は仕事以外のことをしやすい)
ということですね。
お金をうまく使いたかったら、宝くじで当てたお金もパーっと快楽的に使ってしまうのでなく、きちんと計画的に使う必要があります。なのでメンタル・アカウンティングの心の分類に惑わされずに、全てのお金をうまく使う必要があるわけですね。
時間も同じで、そのときの状況に惑わされずにうまく時間を使ったり、あるいは時間をうまく使えるように状況の方を作っていくことが大切なのかも知れません。何も決めていないと急に時間ができても家でボーッ動画とかみて過ごしてしまうなんてこともありますから、隙間時間にやることを決めてすぐできるようにしておくとかもいいかもですね。
私も休みの日になかなか勉強に集中できなかったりするんですが、これはメンタル・アカウンティングで心の中では余暇の日になっているのが原因なのかも知れないと思いました。そうすると勉強の時間と場所を決めるなどして、時間のメリハリをつけることも大切そうですね。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]
*1: The mental accounting of time