筋トレの動作は速い方がいいのか、ゆっくりの方がいいのか問題
筋トレをやっていると、高重量を扱ってガツガツと動作させるのが良いか?それとも低重量でしっかりと効かせながらゆっくりと動作させる方が良いか?という疑問を持つ人も多いと思います。
そこで、本稿では筋肉をつけるために効果的な負荷のかけ方と動作速度を紹介したいと思います。
負荷のかけ方の3種類
まず、筋肉に対する負荷のかけ方には大きく分けて3つの種類があります。
①コンセントリック(収縮)
一つ目はコンセントリックと呼ばれるもので、筋肉が収縮する時に負荷をかける方法です。
ポジティブと呼ばれることもあります。
例えば、ベンチプレスでいうとグッとバーベルを持ち上げる動作がコンセントリックの動作に当たります。
②エキセントリック(伸展)
コンセントリックを逆に筋肉が伸ばされる動作中に負荷をかけることをエキセントリックと言います。ネガティブを呼ばれることもあり、ネガティブで効かせるという言い回しを聞いたことがある人も多いと思います。
ベンチプレスで言えば、持ち上げたバーベルを胸まで下げる時の動作がエキセントリックに当たります。
重力に抵抗するようにバーベルをゆっくりと下ろすことで、エキセントリックの動作でしっかりと筋肉に負荷をかけることができます。
③アイソメトリック(保持)
3つ目アイソメトリックは、筋肉を収縮も伸展もさせずに、負荷がかかった状態で一定のポジションで維持する方法です。
外からの重量と筋肉が発揮している力がちょうど釣り合っている状態です。
他の2つと比べてあまり一般的なトレーニング方法ではないようです。
動作速度と負荷のかけ方はどれがいいのか?
それでは、負荷のかけ方はどれが効果が大きいのか?
また、動作速度は速い方が良いのか?ゆっくりの方が良いのか?
という問題について、McMaster大学の研究(link)を見てみたいと思います。
この研究では負荷のかけ方と動作速度で次の4つのグループで筋トレの効果を比較しています。
- コンセントリック(収縮)で速く
- コンセントリック(収縮)でゆっくり
- エキセントリック(伸展)で速く
- エキセントリック(伸展)でゆっくり
ここで速いは180°/s、ゆっくりは30°/sとなっています。
例えば腕を下から上に180°曲げる動作の場合は、
速いでは1秒、ゆっくりでは6秒かけて1回の動作を行うということになります。
6秒となると結構なゆっくり度合いですね。
そして、8週間筋トレを続けた結果が次のグラフになります。
トレーニングした筋肉の前部、中部、後部に分けてその効果の大きさをグラフにしています。
白の棒グラフがコンセントリック、グレーの棒グラフがエキセントリック、
左の2本が速く動作した場合、その右の2本がゆっくりと動作した場合を示しています。
グラフから4グループを効果順で並べると
- エキセントリック(伸展)で速く
- エキセントリック(伸展)でゆっくり
- コンセントリック(収縮)でゆっくり
- コンセントリック(収縮)で速く
ということで、
1位のエキセントリック(伸展)で速く動作がグラフで見ても飛び出て効果が高いことがわかります。ちなみにコンセントリック(収縮)よりもエキセントリック(伸展)の方が筋肉の発達効果が高いことは、他の研究でも示されているようです。
なぜ速い動作の方が筋肉がつくのか?
なぜ速い動作の方が筋肉がつくのかをもう少し深掘りして調べてみると、2つの理由があります。
①筋肉へのダメージが大きい
トレーニング後に筋肉繊維のZ-Lineの乱れ具合を見ることで、筋肉のダメージ量を見ることができます。
研究によると、速い動作の方が遅い動作よりも筋肉のダメージが大きいことがわかっています。
ダメージが大きければ、その分だけ修復後により大きな筋肉になるということです。
②遅筋と同時に速筋も鍛えられる
筋肉には持久系の活動で主に使われる遅筋と、瞬間的に力を発揮する速筋の2種類があります。
遅い動作で鍛えると主に遅筋が鍛えられ、速筋があまり使われません。
一方で速い動作で鍛えると、遅筋と速筋の両方を鍛えられることができます。
速い動作で鍛える方が、使う筋肉の種類が多い分、筋肉の発達も大きくなるということです。
まとめ
以上、ポイントをまとめると、
- エキセントリックの筋肉が伸ばされる時にしっかりと負荷をのせることが重要
- エキセントリックで効かせる時の動作速度はゆっくりすぎない方が良い
6秒かけるほどゆっくりだと高重量も扱えなくなってしまうので、それならある程度重量を扱った上でネガティブで効かせるのが良いのでしょう。
ただし、エキセントリックで効かせるにはしっかりと重量に抵抗することが必須です。
動作速度を速めるために重力に任せて抵抗することを弱めてしまっては筋トレの効果が弱まってしまいます。
また、フォームが崩れてしまっては対象の筋肉に効かなくなってしまうので、動作を速くしようというよりはゆっくりし過ぎないようにするという意識で良いと思います。
結論としては、
正しいフォームを維持できる範囲で高重量を扱い、重量を下ろす動作は1秒程度の速度にして、しっかりとエキセントリック(伸展)で効かせる
というのが一番効果的でしょう。