1年間の教育はIQを何ポイント上げてくれるのか?の研究
IQで測定される認知能力は、仕事のパフォーマンスや心と体の健康、高寿命など人生の様々な良い面につながる大切な能力の一つです。
なので、IQは高い方が良くて、小学校、中学校、高校、大学と教育の期間が長くなるほど認知能力(IQ)も高いという相関関係が確認されています。
しかし、この教育機関とIQの相関関係には次の2つの解釈の仕方ができてしまいます。
- 教育にIQを上げる効果があるから、長い教育が高いIQにつながっているという解釈
- 高いIQを持つ人ほど、より長い期間にわたって教育を受けるキャリアを選択しているという解釈
そこで、本稿では研究(*1)を参考に教育にはどれだけIQを上げる効果があるのかをみていきたいと思います。
1年間の教育でIQは何ポイント上がる?
この研究では、42データセット(600,000人以上)から算出された142個の効果量をメタ分析でまとめてくれています。
ちなみに、教育とIQの関係を調べて実験には大きく3つの実験デザインがあって
- IQの変化量を測定するデザイン
教育前にIQを測定し、一定期間の教育後にも教育後のI Qを測定して、教育前後でのIQの変化量を測定する - 教育期間の変化時のIQ変化を測定するデザイン
政策として義務教育が2年間増えたときなど、教育の期間に改革があったときの前後でIQの変化を測定する - 学年によるIQの違いを測定するデザイン
大体の学校は学年という単位で1年ごとに生徒を区切っているので、その区切りを利用してどれだけIQに変化があるのかを測定する
この研究では、これらの3つのデザインそれぞれをメタ分析でまとめてくれています。
その結果が
- 教育にはIQを上げる効果があって、1年間の教育はIQを1〜5ポイント上げてくれる!
ということ、IQの向上効果には実験デザインによってばらつきがあって、
実験デザイン①:1年間のIQ向上は1.197ポイント
実験デザイン②:1年間のIQ向上は2.056ポイント
実験デザイン③:1年間のIQ向上は5.229ポイント
これらを総合するとIQの向上は大体1〜5くらいなんじゃないかということですね。
年齢によって教育の効果は変わるのか?
さらに、この研究では年齢に応じてIQの変化量が変わるのかも調べていて、
それが次のグラフになります。
上のグラフが実験デザイン①で、下のグラフが実験デザイン②の結果となっています。どちらのグラフも横軸が年齢、縦軸がIQの向上の効果量となっています。上のグラフでは右肩下がりのグラフとなっていて、年齢が増えるにつれて1年間の教育で向上するIQが小さくなっていることを示しています。一方で下のグラフでは横ばいの一定のグラフとなっていて、どの年齢でもIQの向上量はほぼ変わらないことを示しています。
これらのグラフからわかるポイントは
- 子供の方がIQの向上が大きい可能性はあるが、どの年齢でも教育によってIQは増やすことができる!
ということだと思います。
大人になると脳は変わらないとか、もう歳だから新しいことは覚えられないとかいう話はよく聞きますが、それはウソで、どんな年齢であっても認知能力は向上できるということがこの研究からも確認できたということですね。
まとめ
本稿では教育がIQをどれだけ上げてくれるのかについてお話ししました
ポイントをまとめると
- 1年間の教育はIQを1〜5ポイント上げてくれる!
- 子供の方がIQの向上が大きい可能性はあるが、どんな年齢でも教育によってIQは向上できる!
ということです。
大学を卒業して仕事を始めたときに勉強をやめてしまう人も多いみたいですが、IQの向上という意味でもそれはもったいないことなのかもしれませんね。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]
*1: How Much Does Education Improve Intelligence? A Meta-Analysis