チームが大きくなるほど計画のズレも大きくなってしまうぞ!という研究
最近では変化の激しい時代ということもあって、多様な知識を持ったメンバーを集めたチームで、テキパキと仕事をこなしていくことが大切になっています。
しかし、アメリカのある研究によると、建設業、ヘルスケア、航空宇宙産業、情報技術産業を調べると33%〜88%のプロジェクトが期限から遅れてしまっているとのこと。日本ではどうなのかということも気になりますが、やっぱり最初に立てた計画から遅れてしまうということはよくありますよね。
それでは、なぜ期限内に仕事が終わらないのかというと、最初の計画の見積もりを甘くしてしまうことが原因の一つとしてあって、これを心理学では計画錯誤と言うんですね。
この計画錯誤では個人の計画でもチームの計画でも両方起きてしまうのですが、本稿ではチームの計画錯誤に注目して、チームのサイズと計画錯誤の関係について解説したいと思います。
チームが大きいことにもデメリットがある
チームは多様で大きいほどパフォーマンスも大きくなるというのが広く考えられていることだと思います。確かにチームが大きくなることにはメリットもありますが、実はデメリットも多くあって、チームの計画を立てる上ではこのデメリットも考慮してあげることが大切なんですね。
チームサイズが大きいことのメリット
- 単純にリソースが増える
- メンバーの多様な知識やスキルを持ち合ってクリエイティビティが向上する
- メンバーの専門性をあげられるので、その人にあった仕事をアサインできる
- リソースや知識が豊富なので、状況が変化したときに対応しやすい
チームサイズが大きいことのデメリット
- 情報共有などチーム全体を管理するための仕事が増える
- メンバー間のコミュニケーションミスなどで仕事が遅れる場合がある
- メンバーのモチベーションが低下する可能性がある
(他のメンバーに頼って楽しようとする人が現れる) - メンバー同士で言い争いなどの摩擦が生じる可能性が高まる
- 同調圧力が高まって少数派の意見が通りにくくなってしまう可能性がある
最近では多様性などの言葉が流行っていて、チームサイズのメリットばかりに目がいって、デメリットの方が忘れられがちのようです。例えば、ブレインストーミングがもてはやされていますが、実はチームでアイデアを出し合うよりも、個人個人でアイデアを考えた方がいいアイデアが出るなんてことも研究ではわかっているんですね。
チームサイズと計画錯誤
続いて、チームのサイズと計画錯誤がどう関係しているのかを研究(*1)を参考に見ていきましょう。
この研究では、チームサイズが大きくなることのデメリット(管理コストが増えるなど)を人は甘く見ているので、サイズが大きくなるほど計画錯誤は大きくなるのではないか?ということを調べています。
実験:2人チームと4人チームの計画錯誤
実験として、267人を集めて
- 2人チームを34チーム
- 4人チームを33チーム
に振り分けます。
そして、各チームで協力してLEGOブロックを使って指定通りの人形を作ってもらうタスクに取り組んでもらい、このときに合計時間(チームの人数×完成までの時間)が何分かかるかを予測してもらって、予測と実績の誤差を比較しています。
その結果が
実績 | 予測 | 誤差 | |
2人チーム | 36分 | 23分 | −13分 |
4人チーム | 53分 | 30分 | −23分 |
ということで、4人チームでは予測よりも23分も多くかかってしまっていて、4人チームの方が誤差が大きいということが分かりますね。
さらに、この研究では、予測するときにチームサイズが大きくなることのメリットとデメリットを考慮したかのアンケートも取っていて、
- チームサイズが大きいことのメリットを重視する人ほど予測の誤差が大きかった
ということなんですね。
現実世界でどうなのか?
さらに、この研究では現実世界でも同じようにサイズが大きくなると計画錯誤も大きくなるのかも調べています。
データとしては、ソフトウェアの開発会社の469件のプロジェクトのデータを使っています。開発の最初に出す見積もり工数と実績を比較して、どれだけ計画錯誤があったのかを調査して、チームサイズとの関係を分析したんですね。
その結果としてわかったが、
- 現実のプロジェクトでも、チームのサイズが大きくなるほど計画錯誤が大きくなる
ということ。
先のLEGOブロックの実験と一貫して、現実のプロジェクトでもチームサイズが大きいほど計画錯誤も大きくなってしまうということが支持されたわけですな。
まとめ
本稿ではチームサイズと計画錯誤についてお話をしました
ポイントをまとめると
- 人には計画を甘く見積もりがちな傾向がある
- チームサイズが大きくなるほど計画錯誤が大きくなってしまう
- 特にチームサイズが大きくなることのメリットばかりに注目するほど計画錯誤が大きい
ということです。
ここからわかる教訓としては
- チームは最適なサイズにしよう!
- 計画錯誤を減らすにはチームサイズを大きくすることのコストもしっかりと計画の段階で考慮しよう!
ということに気をつけると良さそうですね。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]
*1: The team scaling fallacy: Underestimating the declining efficiency of larger teams