「嫉妬」という感情とは?良い嫉妬と悪い嫉妬に気をつけよう。
本稿のテーマは「嫉妬という感情」について
成功している人を見たり、自分の持っていない物を見たときに、嫉妬の気持ちを抱くことがあると思います。心理学の世界でもこの嫉妬の感情が研究されているみたいで、これまでに嫉妬とはどうゆう感情なのかのいくつかのモデルが提案されているようです。
そこで、本稿ではこれらの嫉妬のモデルを総合的に検証してまとめてくれた研究(*1)を参考に、嫉妬とはどういう感情なのかを知っていきましょう!
嫉妬の3つのモデル
これまでの心理学では嫉妬がどういう感情なのかもモデルとして3つのモデルが提唱されているようです。
①悪意のある嫉妬モデル
嫉妬とは
- 劣等感
- 恨み
- 敵対心
などを含んだ悪意のある感情だというモデル。このモデルの特徴は嫉妬を一つの感情として捉えているところです。一番シンプルなモデルですね。
②嫉妬にも2種類あるモデル
このモデルは嫉妬にも「悪意のある嫉妬」と「悪意のない嫉妬」があるという考えをするモデルです。
「悪意のある嫉妬」とはモデル①と同じように
- 劣等感
- 敵対心
- 恨み
「悪意のない嫉妬」はもっと前向きな感情で
- 自分も頑張らないとというモチベーション
- 自分もあの人みたいになりたいという感情
というように、嫉妬にも良い面と悪い面があると考えるモデルです。
③痛みが嫉妬を生み出すモデル
自分よる優れた人や物を見たときに感じる劣等感やフラストレーションという心の痛みが、自分を向上させるためのプラスの行動あるいは他人の不幸を願うマイナスの行動へと駆り立てるというモデルです。
このモデルでも嫉妬は一つの感情となっていて、そこから派生する行動の傾向が人によって変わるということですね。
結局どのモデルが正しいのか?
それで、これらの3つのモデルを総合して検証したときに、最終的にどんなモデルが完成するのかを研究(*1)では分析してくれています。
先の3つのモデルではそれぞれ嫉妬を測定するために異なる指標を使って測定しているので、それらの指標を全て合わせて嫉妬をより包括的に分析したらどんなモデルになるのかを調べてくれたわけですね。合計500人を超える人を対象したデータから得られた結果として
- 嫉妬の中には「心の痛み」、「悪意のある嫉妬」、「悪意のない嫉妬」の3つの因子がある
- 「心の痛み」が大きいと「悪意のある嫉妬」も「悪意のない嫉妬」も大きくなる傾向がある
- 「悪意のある嫉妬」と「悪意のない嫉妬」は微かに負の相関関係がある
(つまり「悪意ある嫉妬」が強い人は「悪意のない嫉妬」は弱めになりがち)
ということなんですね。
このモデルを図で書くと
という形で、「痛み」が「良い嫉妬」と「悪い嫉妬」の両方と相関しつつ、「良い嫉妬」と「悪い嫉妬」はお互いに対立することをさ表しています。
時間が経つと痛みは早く消える
さらにこの研究では、「痛み」と「良い嫉妬」と「悪い嫉妬」が時間が経つとどのように変化していくのかの実験もしています。
その結果は
- 「痛み」と「良い嫉妬」と「悪い嫉妬」はどれも時間とともに弱まっていく
- その中でも「痛み」は特に時間とともに弱まっていくスピードが速く、「良い嫉妬」と「悪い嫉妬」は比較的長く残る
ということなんですね。
「痛み」が時間とともに速く弱まってくれるのは嬉しいことですね。さらに痛みが弱まっても自分にとってプラスとなる「良い嫉妬」が比較的長く持続してくれればありがたいことです。しかし、痛みがなくなっても「悪い嫉妬」が残ってしまうこともあり得るのでその点は注意が必要ですね。
悪い嫉妬はシャーデンフロイデを生む
シャーデンフロイデとはドイツ語で「他人の不幸を喜ぶ気持ち」という意味を持つ言葉です。先の研究では「悪い嫉妬」が高い人ほどシャーデンフロイデも高くなってしまうのではないかということもメタ分析で調べてくれています。
その結果が次のグラフとなっています。
グラフが右肩上がりになっていて、「悪い嫉妬」が高い人ほどシャーデンフロイデも高くなることが分かります。
なんと、「悪い嫉妬」を持つ人は、自分が向上しようとするのでなく、他人に落ちて欲しいと願うようになってしまうんですね。こんなふうに悪い嫉妬をこじらせないように注意したいところです。
まとめ
本稿では、心理学の研究から「嫉妬」という感情について紹介しました。
ポイントをまとめると
- 嫉妬には「心の痛み」と「良い嫉妬」と「悪い嫉妬」の3つの要素がある
- 「心の痛み」は比較的に早く消えて、「良い嫉妬」と「悪い嫉妬」は比較的長く持続する
- 「悪い嫉妬」が強い人ほどシャーデンフロイデ(他人の不幸を願う気持ち)が高くなってしまう
ということです。
これの研究を実際に活用するとしたら、何よりも大切なのは
- 嫉妬の気持ちは自分の向上のモチベーションへと向けよう
ということですね。悪い嫉妬の感情に囚われて他人のことを責めてしまうときには、客観的に自分の嫉妬という感情を見直して、「悪い嫉妬に囚われても何もならない、それよりも自分を高めるためにできることを一歩でもやってみよう」と考えるのが良いと思います。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]