空腹時に運動するのと、運動前に栄養補給するので違いはあるのかの研究
本稿のテーマは「運動と空腹」です。
一般的なイメージとして、
- 運動で最大限のパフォーマンスを発揮したいときには、運動前に必要な栄養を補給しておくことが大切
- 脂肪を燃焼したいなら空腹時のエネルギーがない状態で運動する方が良い
という話はよく聞くと思います。
そこで、これらの話が科学的に本当かどうかを検証してくれたリメリック大学の行った研究(*1)を参考に、運動のタイミングの使い分けを本稿では説明していきたいと思います。
空腹時の運動 vs 栄養補給時の運動
このリメリック大学の研究では、空腹時と栄養補給後の運動の違いを調べてくれた46件の研究をメタ分析でまとめてくれていています。
そしてこの分析から分かったことは大きく2つあります。
- 栄養補給をすると長時間(1時間以上)の運動のパフォーマンスが少し上がる(効果量=0.3)
- 空腹時の運動では脂肪が燃焼しやすい(血中の遊離脂肪酸の効果量=0.7)
ということ。
それではこの2つについてもう少し詳しくみていきましょう
栄養補給とパフォーマンス向上
栄養補給によって長時間の運動はパフォーマンスが向上する一方で、短時間の運動ではパフォーマンスはあまり変わらないとのこと。また、無酸素運動やHIITのようなインターバルトレーニングのパフォーマンスも栄養補給の有無では変わらないようです。
ちなみに、どのようなものを運動前に摂取するのかでもこの効果の大きさが変わるようで
- 低GIの食品を運動前に食べると、長時間の運動のパフォーマンスが向上しやすい
- 逆に高GIの食品は運動前に食べても、運動のパフォーマンスはあまり変わらない
ということ。低GIの食品は吸収されるのに時間がかかるので、運動中にも持続的に栄養を補給してくれるから良いみたいですね。なので、長時間の運動をするときには低GIの食品を食べることがオススメですね!
なお、運動前に食べる物の種類と行う運動の種類の組み合わせによる効果の違いといったような深い部分についてはこの研究ではまだ解明されていません。全体を平均すると運動前の栄養補給は長時間の運動にしか効果はないという結果になっていますが、いくつかの研究では無酸素運動のパフォーマンスも向上したという結果もあるみたいなんですね。
栄養補給をしてパフォーマンスが逆に下がってしまったというマイナスの結果は無いようなので、短時間の運動であってもとりあえず栄養補給しておいてもいいかもしれませんね。もちろん食べ過ぎはダメです(笑)。
空腹時の運動と脂肪の燃焼
この研究によると、空腹時に運動をした方が血中の遊離脂肪酸が多かったという結果が得られています。
遊離脂肪酸とは脂肪細胞に蓄えられた中性脂肪が血液に放出されたものです。つまり、脂肪細胞の中の脂肪をエネルギーとして取り出しているわけですね。なので結論としては空腹時に運動をした方が脂肪は燃えやすいということが言えると思います。
さらに、その効果量も0.7とまあまあ大きめの値となっているので、十分な効果が得られることが期待できますね。
ということで、痩せることが運動の目的であるなら、運動は空腹時に行うことがオススメです。特に朝起きたあとは食事から数時間が経過していていい感じに空腹になっているので、朝運動することを習慣にすると痩せる効果が期待できますね。
まとめ
本稿では空腹時と栄養補給時の運動の効果の違いについてお話ししました。
ポイントをまとめると
- 長時間の運動のパフォーマンスを上げたいなら運動前に栄養補給した方が良い(特に低GIの食品がオススメ)
- 脂肪を燃やしたいなら何も食べずに空腹時に運動した方が良い(朝の運動など)
ということですね。
短時間の運動なら空腹時でもパフォーマンスは意外と出るようなので、短時間で終わって脂肪燃焼効果も高いHIITのような高強度のインターバルトレーニングはやっぱりダイエットに有効だと言えますね。HIITを朝やればかなり痩せそうですけど、HIITはかなりしんどいのが難点ですな。
[参考文献]
*1: Effects of Fasted vs Fed-State Exercise on Performance and Post-Exercise Metabolism: A Systematic Review and Meta-Analysis