幸福は意図的に高めることはできるのか?持続的に幸福を高めるためのポイントについて
本稿のテーマは「幸福度を高めるための心理学」です。
ポジティブ心理学では、もっと幸福になるためにはどうすればいいのかが研究されています。幸福は遺伝で決まってしまうという悲観的な意見もあれば、ある活動をしたら幸福が高まったという楽観的な意見もあります。
そこで本稿ではカリフォルニア大学の論文(*1)を参考に、心理学は本当に幸福を高めてくれるのか?、そして幸福を高めたい場合に何をすればいいのか?とみていきましょう!
幸福は高められない派の意見
まず、幸福は高められないのでは?という悲観的な意見としてどのような考えがあるのかを見てみましょう。
①遺伝で幸福のセットポイントは決まってしまう
人生を通じて幸福度は楽しいときや苦しいときで上下するものですが、その平均値をセットポイントと言います。つまり幸せな時間もいずれは落ち着いてセットポイントに戻るし、苦しい時間もいつまでも続かずにセットポイントへ戻るわけですね。心理学の研究によると幸福のセットポイントがどのくらい高いかは遺伝的な要因が作用するということ。なので、遺伝で決められたセットポイントに戻ってしまうから、持続的には幸福は高められないという意見ですね。
②幸福には性格が作用する
幸福には性格が作用することが分かっていて、ビッグ5性格分析でいう神経性傾向と外向性は特に幸福に影響しやすいんですね。神経性傾向は感情の対応力といったメンタルの強さを表すものですから、メンタルの弱い性格の人は幸福度は低くなりがちということです。性格はすぐには変えられませんから、幸福を高めることも簡単にはいかないのではないかということですね。
③快楽のトレッドミル
快楽のトレッドミルとは、人は快楽に次第に慣れてしまうことを言います。例えば、収入が上がって嬉しかったとしても、数ヶ月経ってその収入額に慣れてしまうと嬉しさは無くなって、もっと欲しいという欲望が生まれてしまうますよね。このように一時的に幸せにしても、それに慣れてしまうので、持続的に幸福を高めることは難しいというわけです。
ということで、幸福は遺伝や性格で決まる固定的なもので、それ以上には高めることはできないという考えがあります。
幸福は高められる派の意見
反対に幸福は高めることができるという楽観的な立場の意見としてどのような考えがあるのかというと、
①実際に幸福度を高めてくれる活動が確認されている
寝る前にその日に良かったことを3つ書き出すなど、ある活動をやってもらったら幸福度が上がった!という研究結果がいくつもあるんですね。研究によっては活動は継続すると幸福度はそれだけ高まっていったという結果もあるので、一時的な幸福だけでなく持続的に幸福度は高めていける可能性は十分にあるというわけですね。
②モチベーションや考え方も幸福に関係している
幸福度はモチベーションや考え方によっても変わるということが分かっています。このモチベーションと考え方は、性格と違って自分で変えやすい特徴なので、モチベーションと考え方を変えれば幸福も高められるのではないかということですね。ちなみに考え方とは「自分と他人を比較しないようにする」とか「物事のポジティブな面を探すようにする」とかいうことです。
③若い人よりも高齢の人の方が幸福度が高い
若い人と比べて、高齢の人の方が幸福度が高い傾向があるというデータがあるということ。つまり、遺伝や性格的な要因だけでなく、人生の経験や知識によって幸福度は高めていくことができるのではないかということですね。
④遺伝は直接幸福度に影響するわけではない
遺伝がなぜ幸福度を下げてしまうのかというと、例えば内向的な性格を遺伝で受け継いで、その内向的な性格が原因で社交の場で幸福度が下がってしまうというように、遺伝そのものが幸福度を下げるわけでなく、性格などの間接的な要因を挟んでいるんですね。なので、内向的な性格を遺伝で受け継いでいるなら、パーティは避けるようにすることもできます。つまり、遺伝に合わない環境を避ければ、遺伝の悪影響も避けることができるから、遺伝はそこまで決定的じゃないということですね。
以上が幸福度は高められる派の意見です。
新しい幸福のモデル
これらの両方の意見を取り入れてまとめたのが、カリフォルニア大学の新しい幸福のモデルです。
このモデルでは幸福は3つの要因で決まるとされて、影響度もそれぞれことなるということ
- 50% : 遺伝的セットポイント
- 10% : 状況的な幸福(年齢や性別、国籍、収入、これまでの経験など)
- 40% : 活動的な幸福(日常生活の中で行う様々な活動)
ということで、幸福の50%は遺伝で決まるけど、残りの半分は自分で高めていけるということですね。
幸福を高めるために大切なこと
幸福を高めるために最も大切な要素は活動的な幸福ということなんですね。
どうしてかというと、まず遺伝的セットポイントは変えられないので、受け入れるしかありません。次に状況的な幸福ですが、これは快楽のトレッドミルの効果で慣れてしまいやすいんですね。例えば、収入は上がったときは嬉しいけど次第に慣れてしまうというようなこと。なので、持続的に幸福度を上げていこうとすると、影響度も40%と大きくて慣れにくい活動的な幸福が一番重要ということなんです。
どんな活動がいいのか?
それではどのような活動がいいのかということで、3つのポイントがあります。
①自分にフィットして活動であること
心理学の実験で幸福度を高める様々な活動を多数の人にやってもらうと、人それぞれ幸福度が高まった活動は違ったですね。なので自分にフィットした活動を探すことがまず大切なポイントです。例えば、外交的な人なら、他人のためになるボランティア活動をするなど、自分の特徴にあった活動を選んでみましょう。
②努力が必要な活動であること
山登りは道中はつらくても、その分だけ山頂での達成感や幸福感は大きいですよね。なので、幸せになるための活動を考えるときに、簡単に手に入る目先の幸福を追い求めるのではなく、途中で努力が必要でも将来的に大きな幸福が得られる活動を選ぶことも大切ということです。
③習慣にしても中身は変化させる
活動を習慣にしてしまうと、慣れてしまって幸福を感じなくなってしまうのではないかと不安に思うかもしれません。確かに毎回全く同じ手順で同じことを行っていればつまらなくなってしまうでしょう。なので、毎回少し活動を変えてみる工夫が大切です。例えば、筋トレでも少しづつ重さを上げて行ったり、その日の体調で鍛える部位を変えたりしますよね。
まとめ
以上、本稿では「幸福度を上げるための心理学」についてお話ししました。
ポイントをまとめると
- 幸福度は半分は遺伝で決まるけど、もう半分は自分で高めることができる!
- 状況的な要因(収入や年齢など)はあまり幸せには関係ない
- 幸福度を高めるためには新しい活動に取り組もう!
- その活動は自分にフィットしていることが大切!
- 活動に慣れてしまわないように、少し中身を変えたりする工夫をしよう!
ということですね。
収入や社会的地位を求めるのでなく、自分の好きな活動を増やすということが持続的に幸福を高めてくれるというわけですね!私もこのポイントは人生の中で大切にしていきたいと思いました。
以上、本稿はここまで!
[参考文献]
*1: Pursuing Happiness: The Architecture of Sustainable Change