自分より優れた人がチームにいるとモチベーションが上がるという研究
一人で行うよりも、2人以上のチームで行う方がモチベーションが高くなるということってありますよね。
例えば仕事では、チームに憧れの先輩がいると、自分も先輩みたいになりたいという気持ちが生まれて、モチベーションが高まります。
筋トレでも、一人で行うよりも上級者と一緒にトレーニングをした方が、自分を厳しく追い込むことができたりします。
このように、仕事でも筋トレでもチームで行うことで、特に能力の劣るメンバーは、自分を向上させようというモチベーションが高まることがあるんですね。
そこで、本稿では
- チームの下位メンバーのモチベーションの向上効果はどれほどなのか?
- この効果を高めるにはどうすればいいのか?
についてお話ししていきたいと思います。
下位メンバーのモチベーションはなぜ向上するのか?
まずは「なぜ下位メンバーのモチベーションはチームになると向上するのか?」について大きく2つの理由があるので、その中身を理解していきましょう。
理由1:上のメンバーと自分との対比
理由の一つ目は、自分と周りの人を比較することがモチベーションを生むからです。
自分よりも能力の高いメンバーが周りにいると、そのメンバーから刺激を受けて、
「自分もあの人みたいになりたい」
「あの人に勝ちたい」
のように、追いつき/追い越したいという気持ちが生まれるんですね。
自分一人で取り組んでいるときには、基準が自分しかいないので、自分の能力がどのレベルか?になかなか気付けません。他のメンバーと一緒に働くことで、能力の対比が明確になって初めてこのモチベーションが生まれるということですね。
理由2:チームに貢献したいという気持ち
チームで取り組むとなると、チームに対して自分の役割に責任感が高まります。
その結果として、
「チームの成果にもっと貢献したい」
「チームの足を引っ張らないように、早く能力を高めたい」
というようなチームへの貢献したいという気持ちが、モチベーションを高めてくれます。
特にこのタイプのモチベーションが高まりやすいのは、個人の成果がどれだけチームの成果につながっているのかが明確に分かるような場合です。自分がどれだけ頑張っても、その結果としてチームにどれだけ貢献できているのかがわからなければ、やりがいは生まれないということですね。
下位メンバーのモチベーション向上効果のほど
それで下位メンバーのモチベーション向上効果がどれくらいなのかを調べてくれたのがヴュルツブルク大学の研究(*1)になります。17件の研究に及ぶ2,240人分のデータをメタ分析でまとめてくれていているので、信頼度は高めだと思います。
まず、この研究で分かったことは
- 下位メンバーはチームで取り組んだ方がモチベーションが向上する!
(効果量 g = 0.60)
ということ。
やはり下位メンバーはチームで取り組んだ方がモチベーションを高まるのは間違いないみたいですね。一人で取り組んだときと比べたときの効果量はg=0.60ということで、効果のほどもそこそこの高めということです。
さらに、この研究ではタスクの内容などによって、このモチベーションの高まり具合は変わるのではないかということを深掘りして分析してくれています。
①タスクの構造
深掘りの一つ目として、チームで取り組むタスクの構造によるモチベーションの変化を確かめています。
タスクの構造とは
- 連結的なタスク
各メンバーが働きが連結してチームの成果となるタスク - 加算的なタスク
各メンバーの働きは独立していて、各メンバーの成果の加算がチームの成果になるようなタスク
という2つの分類のことです。連結的なタスクのほうが、下位メンバーはボトルネックになりやすく、大きな責任感が生まれると考えられるわけですね。
そして、分析の結果として、下位メンバーのモチベーション向上の効果は
- 連結的なタスクの効果量はg=0.72
- 加算的なタスクの効果量はg=0.41
ということで、どちらのタスクでも一人で行うよりかはモチベーションは高くなるものの、連結的なタスクの方が効果が高いという結果となっています。
②タスクの種類
続いて、タスクの種類として
- 身体的なタスク
筋トレなどの体を使うタスク - 認知的なタスク
ブレインストーミングでアイデア出しなどの頭を使うタスク
の2つの種類で効果に違いがあるのかを確かめています。
その結果としては
- 身体的なタスクの効果量はg=0.82
- 認知的なタスクの効果量はg=0.38
ということで、身体的なタスクでも認知的なタスクでもモチベーションの向上効果はあって、特に身体的なタスクの方が顕著にこの効果が出るということです。
③他メンバーの成果が見えるか
深掘りの3つ目として、他のメンバーのパフォーマンスが見えるかどうかで、下位メンバーのモチベーションが変わるのかを分析しています。
その結果によると
- リアルタイムに他メンバーのパフォーマンスが分かるときの効果量はg=0.64
- リアルタイムに他メンバーのパフォーマンスが分からないときの効果量はg=.38
ということ。
どちらの場合でも一人で行うよりかはモチベーションは高くなるものの、リアルタイムに他のメンバーのパフォーマンスが分かる方が下位メンバーのモチベーションは上がるという結果になっていますね。
④他メンバーが近くにいるか
4つ目の深掘りとして、チームメンバーが物理的に近くにいるかどうかが、モチベーションに影響するのかを確かめています。最近ではリモートワークなどでメンバーが近くにいないことも増えてきていますよね。
その結果は
- チームメンバーが近くにいるときの効果量はg=0.79
- チームメンバーが近くにいないときの効果量はg=0.52
ということ。
どちらの場合でも効果はあるけど、メンバーは物理的に近くにいた方がモチベーションの向上は大きいという結果が得られています。
まとめ
本稿では「チームの下位メンバーのモチベーション向上効果」についてお話ししました。
ポイントをまとめると
- 一人で取り組むよりもチームで取り組んだ方が、能力の劣る下位メンバーのモチベーションは向上する!
- この効果を高めるには「メンバーの責任感と向上心を高めること」が大切で、次のようなことをすると良い!
①タスクの構造を連結的にする
②各メンバーのパフォーマンスを見えるようにする
③チームメンバーを物理的に近づける
ということですね。
一つ注意した方がいいのは、下位メンバーの能力と求められる能力のギャップが大きすぎると、このモチベーションの向上効果は無くなってしまう可能性があることです。なので、下位メンバーから見て「頑張れば達成できる」という適切な難易度を設定してあげると良いと思います。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]
*1: