アクションゲームで注意力が鍛えればスキルの習得が早くなるかもという話
スキルを効率的に習得するには?
新しいスキルを習得するのには練習が必要になります。
車を運転すれば、運転のスキルが高まりますし。
テニスをすれば、ボールを狙った場所に打ち返すスキルが高まります。
まあ、当たり前のことですよね。
それで、どんな練習がスキルの習得に効果的なのかについての研究もあって、そこで問題とされているのが「スキルの転移」の問題です。これは「ある練習で向上したスキルが、他の場面でもちゃんと役に立つのか?」という問題になります。
例えば、脳トレのゲームを繰り返しプレイして、そのゲームで高得点が取れるようになったとしても、ただゲームが上手くなっただけで、実生活に全く役に立たなかったら意味がありませんよね。
スキルの転移をうまくする練習
それで、スキルが転移しやすい練習方法と、転移しにくい練習方法があって、そのポイントは「練習のバラエティ」になります。
例えば、ゴルフのパターの練習をする場合で考えてみましょう。
このとき、バラエティの少ない練習方法とは、「ひたすら3mの距離からパターの練習をする」というように、同じ練習を繰り返す練習です。この場合は3mのパターのスキルが大きく向上しますが、他の距離のパターは向上しないため、全般的なパターのスキルはあまり向上しません。
一方で、バラエティの多い練習方法は「毎回距離を変えてパターの練習をする」といった方法です。この場合は色々な距離への対応力がついて、より実践的なパターのスキルが身につきます。
つまり、まとめると
- ピンポイントに特定のスキルを習得したい場合は、ひたすらその練習をすれば良い
- スキルを転移させて、全般的なスキルの向上をしたい場合は、バラエティの多い練習をすると良い
ということですね。
スキルの横のつながり
それで、広く役に立つ汎用的なスキルもあれば、特定の場面でしか役に立たないピンポイントなスキルもあったりと、スキルよって転移先の横の広がりが違います。
例えば、「車の運転」のスキルは、「バイクの運転」や「トラックの運転」には役に立つことがありますが、「ボートの運転」にはそれほど役に立たないといった感じです。
そして、スキルの習得において横に広く役に立つものの一つが「注意力」になります。注意力とは特定のことに注意を向けて集中するスキルで、スポーツでも、勉強でも、仕事でも、注意力が高ければそれだけ飲み込みが早くなることが期待できますよね。
つまり、
- 色々なスキルの効率的に習得したければ、まずは注意力を鍛えれば良いのでは?
ということが考えられますよね。
アクションゲームと注意力
それで面白いのが、アクションゲームには注意力を鍛える効果があるということなんですね。ゲームにもRPGやシミュレーションなど様々なジャンルがあれど、注意力を鍛えてくれるのはアクションゲームのみということ。
実際にアクションゲームをする人としない人を比べてみると、アクションゲームをする人は次の種類の注意力が高いことが分かっているんですね。
- 空間の選択注意力
空間的に散乱した情報から特定の情報に注意力を向けて、他の情報を無視できるスキルのこと。例えば、画面上の特定のキャラクターに注意力を向けて、背景の動きのようなノイズは無視するといった感じですね。 - 時間の注意力
情報が時間とともに次々と流れてくる中でも、それらの情報に注意力を向けて、特定の情報を見逃さないスキル。 - オブジェクトの注意力
特定のオブジェクトに注意力を向けて、そのオブジェクトの動きをずっと追い続けることができるスキル。
アクションゲームはリアルタイムに敵と戦ったりするので、画面の変化に注意を向けながら、次の瞬間に何が起こるのだろう?と予測しつつ、それに対してどういう行動をとるのか選択するというように、とても高度な処理を頭の中では行っているんですね。これが注意力を鍛えるのにとても良いということ。
そして、これら注意力のスキルは、スポーツや日常生活など様々な場面で役に立つものなので、
- アクションゲームをプレイして注意力を上げれば、全般的に新しいスキルの習得がうまくなる
ということが期待できるわけですね。
まとめ
本稿では「スキルを効率的に習得する方法とアクションゲーム」についてお話ししました。
ポイントをまとめると
- ピンポイントなスキルを身につけるためには同じ練習を繰り返すのがよく、汎用的なスキルを身につけるには練習にバラエティを持たせると良い!
- スキル同士の横のつながりも考えて、まずは幅広く役に立つスキルを鍛えると効率的!
- アクションゲームは注意力を鍛えてくれるので、他のスキルの習得にも役に立つかも!
ということですね。
アクションゲームが注意力を鍛えてくれるのは、研究から明らかなようですが、それが他のスキルの向上にどの程度役に立つのかはまだ未知数な部分もあると思います。なので、可能性があるくらいに考えておくのが良いと思います。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]
*1: Learning, Attentional Control, and Action Video Games