パフォーマンスの低下を防ぐ、効果的なチームのダウンサイジングとは?
チームのサイズは大きければ大きいほどに良いという訳でもなく、大きすぎるチームは意思決定が遅くなったり、メンバーの責任感が薄れてしまったりします。
Hackman博士らの研究によると、最適なチームサイズは4.6人とも言われています。もちろん、仕事の内容や状況に応じてチームの最適なサイズは変わるので、4.6人が絶対という訳ではありません。
そして、常に最適なチームサイズにしようとすると、状況の変化に合わせてチームをダウンサイジングすることも必要になります。しかし、ダウンサイジングをすると、メンバーが減る訳ですからチームのパフォーマンスが低下してしまうこともあり得ます。
そこで、パフォーマンスの低下を防ぎつつ効果的にダウンサイジングする方法について調べたミシガン大学らの研究(*1)で、面白いことが分かっていたので、本稿でお話ししていきたいと思います。
チームのダウンサイジングの3種類
この研究によるとチームのダウンサイジングの方法には大きく3種類があるとのこと。
①メンバーを減らす
大体のチームはリーダーがいて、その下に複数名のメンバーがいるという構成になっていると思います。そこで、このリーダーとメンバーのチーム構造は変えずに、メンバーの数を減らすことが一つ目のダウンサイジングの方法です。
イメージにすると下の図のような感じですね。
この方法の特徴としては
- 上下関係はそのままになって、大きな構造の変化がない
- 抜けたメンバーの仕事を他の人たちでカバーすることになるが、仕事にもそれほど大きな変化は生まれない
ということです。これは一番リスクの低い方法ではありますね。
②上下関係を排除する
2つ目のダウンサイジングの方法は、リーダーを排除することで、上下関係を無くしてしまうということです。
この方法の特徴としては
- 上下関係が排除されて、メンバーの責任範囲が広がる
- リーダーが抜けた大きな穴をメンバーで埋めるので、各メンバーの仕事に大きな変化が生まれる
ということです。
リーダーが抜けることはまずいのではと感じる人もいると思いますが、この方法にはそれを補う良い点もあります。それは、リーダーの穴を埋めようとメンバーが新しい行動をとることで、それまでの決まり切ったやり方を壊して、もっと良い方法に改善できる可能性が生まれるということです。
この良い効果がうまく発揮できれば、人数が減ってもチームのパフォーマンスは向上できるかもしれないということですね。
③上下関係をなくすけど、リーダーも残す
最後の方法は、リーダーを残してメンバーを減らすのですが、このときリーダーをメンバーの一人にしてしまうというものです。
この方法は先の2つの中間のようなもので、特徴としては
- 上下関係が排除されて、メンバーの責任範囲が広がる
- だけど、メンバーが抜けた穴はそれほど大きくないので、仕事の変化は比較的少ない
というものです。
抜けたのがメンバーだけなので、それを補うことは比較的簡単です。一方でリーダーがメンバーになっているので、これまでのリーダーの仕事を少しづつメンバーで分け合うことの必要になります。なので、これまでのやり方を抜け出せるほどではないけど、新しい行動の少しは生まれるという感じですね。
どのダウンサイジング法が効果的なのか?
先の研究(*1)では、どの方法がチームのパフォーマンスを最も低下させないのかを実験による調べてくれています。この実験では71組の5人チームが集められ、それぞれのチームでタスクを行ってもらって、そのパフォーマンスを測定しています。各チームはリーダー1人とメンバー4人という構成です。
タスクは全部で2回行われて、1回目のタスクは5人全員で、2回目のタスクはそれぞれの方法でダウンサイジングした後に行われます。ダウンサイジングの方法は4つに分けられていて
- 再び5人全員で行う(コントロールグループ)
- メンバーを一人減らす
- リーダーを減らす
- メンバーを減らして、リーダーをメンバーにする
ということ。これらの4つのダウンサイジング後にチームのパフォーマンスがどのように変化したのかを測定したわけですね。
結果1:一番のダウンサイジングはどれ?
その結果として、コントロールグループと比較して、チームのパフォーマンス低下が少なかった順に並べると
- リーダーを減らしたチーム
- メンバーを減らして、リーダをメンバーにしたチーム
- メンバーを減らしたチーム
ということで、リーダーを減らしたチームのパフォーマンスの低下が最も少なかったんですね。
それがなぜなのかというと
- リーダーが抜けたチームでは、メンバーの行動量が増えていたから
ということ。リーダーがいなくなると、それを補おうとメンバーがより多くの行動を取ったみたいです。メンバーが抜けただけの場合と比べて、リーダーが抜ける方がインパクトが大きいので、各メンバーが自分が頑張ろうと思たのかもしれませんね。
結果2:感情の安定性も大切
それで、チームをダウンサイジングしたときに、特にパフォーマンスの低下に強かった人がいて、それが感情の安定性が高かった人ということ。
感情の安定性が低い人は、不安や不満、怒りといったネガティブな感情を感じやすい人です。このような人は、チームが大きく変わったときに、不安などが大きくなって、行動が少なくなってしまうんですね。
特に、感情の安定性が高い人は、リーダーが抜けたチームでパフォーマンスが大きく向上しているので、チームの大きな変化ほど感情の安定性は大切になるようです。
まとめ
本稿では「効果的なチームのダウンサイジング方法」についてお話ししました。
ポイントをまとめると
- チームのダウンサイジングでパフォーマンスを維持するためには、上下関係をなくして各メンバーの新しい行動を増やすと良い
- 感情の安定性が高い人は、大きな変化があってもパフォーマンスが向上できる
ということです。
この研究は実験室でのタスクということで、実際の仕事の場面でどこまで同じ効果が現れるのかは未知数ではありますが、ダウンサイジングをきっかけに、各メンバーの仕事の範囲を広げて、うまく一人一人をパワーアップできればいいですね。
[参考文献]
*1 : HOW DIFFERENT TEAM DOWNSIZING APPROACHES INFLUENCE TEAM-LEVEL ADAPTATION AND PERFORMANCE