マインドフルネスはスポーツのパフォーマンスを上げてくれるのか?
本稿のテーマは「マインドフルネスやアクセプタンスはスポーツのパフォーマンスを上げてくれるのか?」です。
マインドフルネスとは「今ここ」に集中することで、過去の出来事に対する雑念や将来への不安に囚われずに、まさに今起きていることに頭や感覚を向けることです。
アクセプタンスとは、状況や感情をありのままに受け入れることです。マインドフルネスで今ここに集中しようとしても、雑念はなかなか頭から離れてくれません。ここでやってはいけないのは無理やり雑念を押さえ込もうとすることで、そうすると逆に雑念が強まってしまうんですね。そこで必要なのがアクセプタンスで、客観的に自分の中に雑念が浮かんでいることを受け入れてあげることで、集中力を取り戻すことができるんですね。
それで、このマインドフルネスとアクセプタンスはスポーツに応用することで
- スポーツ中の集中力が増す
- 試合前の不安を軽減できる
- 結果としてスポーツのパフォーマンスも向上する
という効果が期待できるわけですね。
それでこれらのマインドフルネスの効果がどこまで本当なのか?を調べてくれた研究(*1)があったので、本稿ではこの研究を紹介していきたいと思います。
マインドフルネスとスポーツ
この研究はマインドフルネスとアクセプタンスのスポーツへの効果を調べてくれた研究を66 件集めて、それらをまとめてレビューしてくれています。
特徴としては
- スポーツの種類は様々で、総計で3908人のデータを集めている
- 持久力やパワーといった部分的なパフォーマンスでなく、スポーツの総合的なパフォーマンスに対する効果も分析してくれている
- 不安の軽減などのパフォーマンス以外の効果も分析してくれている
といった感じです。
結果①:マインドフルネス
まず最初にマインドフルネスを実践することで、スポーツ中に今ここに集中する力がどれだけ向上するのかを調べた研究結果をまとめると、
- どの研究でも一貫してプラスの効果が確認されていた
- 効果量は小〜大まで研究によってばらつきはあった
ということです。
なので、マインドフルネスを実践することで、失敗や雑念を頭から切り離して、スポーツへの集中力が上がる効果があるということですね。
結果②:フロー
フロー状態とは時間の感覚も忘れるくらいに完全にスポーツに没頭している状態のことで、マインドフルネスがフロー状態を増やしてくれるのかも調べてくれています。
その結果は
- RCTの研究結果ではどれもプラスの効果が確認されていて、効果量は小〜大でばらつきがある
- RCTでない研究結果で一部マイナスの効果に結果もあった
- 相関関係を調べたデータでも、マインドフルネスが高い人ほどフローに入りやすい傾向があった
ということで、全体的にフローを増やしてくれる効果があるようです。
結果③:不安の軽減
スポーツでは試合前の不安でパフォーマンスが発揮できなくなってしまうこともあるので、不安の軽減効果についても調べてくれています。
その結果では、
- RCTの研究ではマインドフルネスを実践することで、不安は大きく軽減していた
- RCT以外の研究では、効果があったりなかったりバラツキもあった
という感じ。
全体としてみれば大きな不安の軽減効果があるが、研究の質が低くてその確かさは低めということですね。
結果④:パフォーマンス
マインドフルネスのスポーツのパフォーマンスへの効果がどうだったのかというと、
- 全体的にマインドフルネスはパフォーマンスを向上してくれた
- しかし、研究の質は低くて効果のバラツキも多かったので、確かさは低め
ということ。
マインドフルネスでパフォーマンスが低下してみたいな結果はなかったようなので、パフォーマンス向上のためにマインドフルネスの向上を試してみる価値は十分にあると思います。
まとめ
本稿では「マインドフルネスがスポーツのパフォーマンスを向上させてくれるのか」についてお話ししました。
ポイントをまとめると
- マインドフルネスはスポーツ中の集中力を高めてる
- マインドフルネスはフロー状態を増やしてくれる
- マインドフルネスで不安が軽減する
- マインドフルネスでパフォーマンスが向上する
ということですね。
ただし、今回の研究は66件の幅広い研究を集めてまとめてくれたものの、個々の研究の質は低めということだったので、効果を確かなものにするにはもっと質の高い研究が必要ということでした。
とはいってもマインドフルネスに悪い効果はなさそうなので、スポーツを行う人はマインドフルネスを高めてみる価値は十分にあると思います。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]
*1 : Mindfulness and acceptance approaches to sporting performance enhancement: a systematic review