トレーニングを短期的に休止するとどれだけパフォーマンスは低下するのか?

トレーニングには可逆性の原理というものがあります。これはトレーニングをすれば能力は向上するけど、トレーニングをしなければ能力は元に戻ってしまうという原理になります。

この原理は様々なトレーニングに当てはまるもので、筋トレをやめてしまうと最大筋力が低下してしまいますし、有酸素運動をやめてしまうと持久力が元に戻ってしまいます。

そこで本稿では、トレーニング停止中のパフォーマンスの低下についての研究結果をまとめてくれたスペインの記事(*1)を参考に、

  • 短期(〜4週間)の休止がどれだけ運動のパフォーマンスに響くのか

を見ていきましょう。

トレーニングの休止と心肺能力の低下

最大酸素摂取量(VO2Max)

VO2Maxは4週間以下の短期の休止でも4〜14%低下してしまうということがわかっています。元のVO2Maxが高い人ほど低下の度合いも大きかったということなので、トレーニングを積んでVO2Maxが高まっている人ほど、低下は大きくなってしまいます。

血量

短期的にトレーニングを停止したときに見られる心臓血管機能の低下は、主に血量が低下してしまうことが原因ということです。短期のトレーニングの停止でも血量は5〜12%低下してしまって、そうすると血液が行う酸素などの運搬も減ってしまうので、有酸素運動のパフォーマンスが低下してしまうということです。

1心拍の排出血液量

血量が低下するので当然1回の心拍で排出できる血液量も低下してしまいます。その低下のほどは10〜21日のトレーニングの停止で10〜17%の排出量の低下であったということです。

心拍数

血量が低下するのに伴って、心拍数は5〜10%増加するということ。1回の心拍で運べる血量が減るので、それを補おうと心拍数が高まってしまうわけですね。しかし心拍数はトレーニングをやめても2〜3週間は維持できるようです。

心拍出量

心拍出量は心臓によって1秒間に送り出される血液の量になります。つまり、1回の心拍の血液量が低下してしまっているのに対して、それを補おうと心拍数は増加しているわけで、それらを総合したときに単位時間で心臓が血液を送り出す能力がどう変化してのかですね。

そして結果としては21日間のトレーニングの停止で8%の最大心拍出量の低下が確認されています。つまり、血量の低下を心拍数で補おうとしても補い切れていないわけですね。

持久力

それで、これらの心拍関連のパフォーマンスの低下の結果として、持久力にどれだけ影響が出たのかを見てみましょう。結果としては、水泳を対象にした研究では2.6%のタイムの低下、そして持久力の測定では4〜25%だけ運動量の低下が確認させています。

ということでまとめると、4週間以下の短期の休止でも有酸素運動系の持久パフォーマンスは低下してしまうということですね。

トレーニングの休止と筋肉機能の低下

筋肉の毛細血管

筋肉の毛細血管の密度は確かにトレーニングを休止すれば減少はするものの、その減少速度は比較的ゆっくりみたいで、4週間のトレーニングの休止後でもトレーニングをする前よりかは高い状態を保っていたということです。

ミオグロビンのレベル

ミオグロビンとは筋肉の中に酸素を蓄えておくためのものですが、ミオグロビンのレベルは短期間のトレーニングの休止では変わらないことが確認されています。

酵素の活動

筋肉を働かせるにはそのエネルギー源のATPが必要で、そのATPを作るのには様々な酵素が必要になります。なので酵素の活動が低下してしまうと、筋肉へのエネルギー供給が減ってしまうわけですね。

例えば、クエン酸シンクターゼの活動は短期の休止でも25〜45%してしまうなど、酵素の活動は短期間の休止でも影響を受けてしまうようです。

ミトコンドリアのATP生産

ミトコンドリアのATPの生産については、3週間で12〜28%低下してしまうということですが、それでもトレーニング前よりも37〜70%高い状態は維持できているということです。

筋繊維のタイプ

筋肉には瞬間的にパワーを発揮する速筋と、持久的にパワーを発揮する遅筋という2種類がありますが、短期のトレーニングの停止ではこれらの筋繊維のタイプは変わらなかったということです。

しかし、サッカー選手やパワーリフターの間では、速筋の断面積の低下が見られた研究もあります。遅筋と比べて速筋は短期の休止でもボリュームが低下しやすいみたいですね。

筋力のパフォーマンス

ベンチプレスやスクワット、ジャンプ力などの筋力を筋電位(EMG)で測定した結果では、2週間で8%〜13%ほど低下していたということです。水泳選手の場合でも水をかく力が4週間で13.6%低下していたということ。

ということでまとめると、4週間の短期の休止でも筋力系のパフォーマンスも低下してしまうということですね。

まとめ

本稿では「短期のトレーニングの休止がどれだけパフォーマンスを低下させてるのか」をお話ししました。

ポイントをまとめると

  • 短期の休止でも血量や心拍出量は低下してしまって、持久系の運動パフォーマンスは4〜25%ほど低下してしまう
  • 短期の休止でも速筋の断面積や筋肉のATPの生産能力も低下してしまうので、筋力系の運動パフォーマンスも8〜13%ほど低下してしまう

ということですね。

運動パフォーマンスを向上させたい場合には、短期の休止でもマイナスになってしまうので、できるだけ運動は継続した方が良いということですね。

以上、本稿はここまで。


[参考文献]

*1 : Detraining: Loss of Training-Induced Physiological and Performance Adaptations. Part I: Short Term Insufficient Training Stimulus

Naoto

シェアする

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

コメントする