昼寝をしすぎてパフォーマンスを落とさないためのポイントとは?
朝起きたときや、昼寝から目覚めたときには、頭がぼんやりとして少しの間寝ぼけた感覚が残りますよね。これは睡眠慣性と言って、睡眠状態から起きるときには、すぐにフル回転にはならずに時間をかけてゆっくりと目覚めるんですね。
それで、この睡眠慣性の寝ぼけた時間には、脳の機能が低下することは研究で分かっていて、
- 判断能力が低下する
- ワーキングメモリの働きが低下する
- 論理的な説明能力が低下する
- 実行機能が低下する
などの悪い効果があること知られています。
この睡眠慣性の時間は大体10〜30分だと言われていますが、フルに脳が働くようになるには2時間かかるという研究結果もあるようです。
そこで本稿では、睡眠慣性についてもう少し深く調べてくれた研究の一つ(*1)を参考に、この睡眠慣性とうまく付き合ってタスクをこなしていく方法についてお話ししていきたいと思います。
睡眠慣性とタスクのパフォーマンス
この研究(*1)では昼寝をしたときの睡眠慣性とタスクのパフォーマンスについて実験を行なっていて、
- 90分の睡眠を午前中に取るか午後に取るかで、睡眠慣性に違いはあるのか?
- タスクの難易度によって睡眠慣性中のタスクのパフォーマンスに差は出るのか?
を調べてくれています。
実験の手順としては、まず32人の参加者に前日の睡眠時間を6時間以下に制限してもらいます。そして翌日に午前に昼寝をする場合、午後に昼寝をする場合、あるいは昼寝をしない場合で、ワーキングメモリーを使うタスクを実施してもらって、脳のパフォーマンスを測定しています。
結果①:午前中と午後の昼寝
最初に90分の昼寝を、午前10時からとった場合と、午後3時からとった場合でどのような違いがあったのかを見てみると
- 午後の昼寝の方が、睡眠時間が長くなりがちで、深い眠りが多かった
- 午後の昼寝の方が、睡眠慣性によるタスクのパフォーマンスの低下が大きかった
ということ。午後の遅めに昼寝をとると、昼寝なのに深い眠りになりがちで睡眠慣性も長くなってしまうという結果になっています。午後の遅くに昼寝で深く眠り過ぎてしまうと、夜の睡眠に影響する可能性もあるので、昼寝はあまり遅くしない方が良さそうですね。
結果②:タスクの難易度と睡眠慣性
午後に睡眠をとった直後は寝ぼけていて大きくパフォーマンスが低下してしまったということですが、このときにタスクの難易度によってパフォーマンスへの影響が変わっていて、
- 簡単な難易度のタスクであれば、昼寝の直後であろうと、昼寝をしなかった場合であろうと、同じパフォーマンスが発揮された
- 難易度が難しくなると、睡眠の直後のパフォーマンスは、睡眠を取らなかった場合のパフォーマンスを下回ってしまった。
ということ。つまり、睡眠慣性で脳機能が低下しているときでも、あまり頭を使わない簡単なタスクであればパフォーマンスは低下しないということですね。
なので、朝起きたときや、昼寝から起きたときには、頭の回転が上がるまで簡単なタスクをこなした方が失敗も少なく効率的でしょう。逆を言えば、睡眠慣性の時間は難しいタスクは避けるべきで、例えば、1日の計画はその日の朝に立てるのではなく、前の日に立てておくなどの工夫をすると良いと思います。
まとめ
本稿では「睡眠慣性とタスクのパフォーマンス低下」についてお話ししました。
ポイントをまとめると
- 睡眠から起きてもすぐには脳は働いてくれない時間がある
- 昼寝をする場合には、時間帯が遅くなるほど深い眠りになって、睡眠慣性も強くなってしまう傾向がある
- 睡眠慣性中でも頭をあまり使わない簡単なタスクならパフォーマンスは低下しない
ということですね。
やっぱり昼寝はお昼の12〜13時とかに取るのが良さそうですね。昼寝は20分以内ならぱ睡眠慣性もなくパッと目覚めることができるということです。
睡眠慣性から早く回復する方法も色々と研究されているようで、顔を洗うとか、体温を上げるとか、光を浴びるとかが実験されているようですが、確かな効果は確認されていないようです。現状で有効だと分かっているのは「昼寝の前にカフェインを摂取すること」といことなので、コーヒーを飲んで20分以内の昼寝をするという定番の方法が一番有効そうですね。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]
*1 : Effects of sleep inertia following daytime naps vary with executive load and vary time of day.