ストレスを減らすには小さな親切も効果的だ!という研究
仕事のストレスや、人間関係のストレス、時間が足りないストレスなど、毎日の生活の中でストレスは避けて通れない問題です。適度なストレスや緊張感はパフォーマンスを向上するのに役立つということが分かってはいますが、過度のストレスであったり慢性的なストレスは体の健康にも心の健康にも悪い影響を与えてしまいます。
そこでストレスへの対処法の研究も進んでいて、運動や瞑想を始め、様々な手法の効果が検証されています。本稿で注目するのは、その中の一つのカリフォルニア大学らの研究(*1)で、
- 他人に親切にすることもストレスを減らすのに有効だ!
という面白い内容になっていましたので、その中身を紹介していきたいと思います。
親切とストレス
この研究が親切に注目したのには理由があって、
- ストレスは緊張感や苛立ちといったネガティブな感情を増やして、神経的にも逃走闘争反応で警戒した状態にしまう。一方で、他人に親切な行為をすることは、共感や思いやりといったポジティブな感情を増やしてくれて、神経的にもリラックスした状態を作ってくれる。つまり、親切な行為はストレスとは真逆のポジティブでリラックスの状態を作ってくれる。
ということなんですね。
感情と行動は相互に影響し合うもので、「感情が原因となって行動をとる」こともあれば、「行動の結果として感情が生まれる」という関係もあります。なので、「親切な行動を取れば、その結果としてストレスと真逆のポジティブでリラックスした状態が意図的に作れる」と考えられるわけですね。
本当に親切はストレスを減らしてくれるのか?
この研究では、77人の生活を追って、親切がストレスを減らしてくれているのかを分析しています。
測定に期間は14日間で、77人には毎日寝る前に
- その日にストレスを感じた出来事の数
- その日に行った親切な行為の数
- その日に感じたポジティブな感情の大きさ
- その日に感じたネガティブな感情の大きさ
- その日のメンタルの健全さ
を回答してもらっています。
ちなみに親切な行為は「ドアを開けてあげた」とか「宿題を手伝ってあげた」、「助けが必要か声をかけた」みたいな小さなことでも良いみたいです。
それでこの研究では、これらの77人×14日分の1078のデータを分析することで、親切がストレスや感情にどのように影響しているのかを導き出してくれたわけですね。
結果①:全般的な傾向
それで結果を見てみると、まず最初に
- 人は1日に平均で0.59個のストレスを感じる出来事に遭遇している
- 人は1日に平均で1.65回ほど親切な行為をしている
ということ。ストレスは2日に一回程度なので意外と少ないみたいですね。親切な行為は1.65回ということで、一日一善を守れている人が多いみたいですね。
それで、
- ストレスを感じる出来事が多いほど、どの日のネガティブな感情が増えるが、ポジティブな感情は減ったりしない
- 親切な行為が多いほど、その日のポジティブな感情は増えるが、ネガティブな感情は減ったりしない
ということ。まあストレスで悪い感情が生まれて、親切に良い感情が生まれるという当たり前の効果ですね。
両者がそれぞれ片方の感情にしか作用しなかったのは。もともとポジティブな感情とネガティブな感情は独立した感情で、心の中では両者は区別されて管理されているからでしょう。
結果②:親切がストレスに与える影響
それで一番気になるのが「親切がストレスのネガティブな効果を軽減してくれるのか?」で、その分析結果を見てみると
- 親切が少ない人ほどストレスの多い日にネガティブな感情を大きく感じていて、親切が多い人ほどストレスの多い日でもネガティブな感情を感じにくくなっていた
ということが分かっています。
なので親切はストレスに効果ありということですね。ただし、親切はストレスのネガティブな感情を軽減してくれるけどゼロにはならないということで、親切なことだけやればストレス対策は万全というわけではないので注意が必要です。
まとめ
本稿では「親切がストレス対策に効果的」というお話をしました。
ポイントをまとめると
- 他人に親切にする人ほど、ストレスな出来事があってもネガティブな感情を感じにくい
- なので、ストレスが多い日には、親切の数を増やすと良い!
ということですね。
ストレス対策には運動や瞑想など色々な手法がありますが、「親切な行為」も有効だということが分かったわけですね。親切は小さなことでもいいみたいなので、ストレスの多い日には親切の数を増やしてみましょう。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]
*1 : Prosocial Behavior Mitigates the Negative Effects of Stress in Everyday Life