有酸素運動で筋トレ効果は落ちてしまうが、HIITでも落ちてしまうのか?
筋トレは筋力や筋肉をつけるため運動で、有酸素運動は脂肪を燃やしたり持久力をつけるための運動です。体づくりにはどちらの運動も大切なので、筋トレと有酸素運動の両方に取り組んでいる人もいると思います。
それで、過去の研究の傾向をみると「筋トレと有酸素運動を組み合わせると、有酸素運動系のパフォーマンス(VO2Maxなど)は低下しないが、筋力向上や筋肥大の効果は少し低下してしまう」ということが分かっています。長時間の有酸素運動は脂肪と一緒に筋肉も分解してしまい、筋トレの効果は少し低下してしまうようですね。
筋トレとHIIT
しかし、有酸素運動にも色々な種類があって、中でも最近注目されているのはHIITという有酸素運動です。これは日本語で言うと高強度インターバルトレーニングのことで、限界まで追い込むレベルの高強度な運動をインターバルを挟んで短時間で何回か繰り返すものです。例えば、20秒全力ダッシュ+10秒休憩を8セット繰り返すみたいな方法ですね。
それでHIITは合計でもたった4分ほどしかかからないのに、アフターバーンの効果で普通の有酸素運動20分にも匹敵する脂肪燃焼が効果があるとも言われているんですね。
そして、HIITにはもう一つ期待できることがあって
- 短時間で切り上げられるHIITなら筋トレの効果にもそこまで影響しないのでは?
ということが考えられます。
HIITは筋トレ効果を妨げるのか?
そこで、HIITと筋トレの組み合わせ効果について調べてくれたシドニー大学らの研究(*1)を見ていきましょう。
この研究ではメタ分析という手法で先行研究13件をまとめてくれていて、
- HIIT+筋トレの組み合わせ
- 筋トレのみ
の2通りのトレーニング方法で筋力や筋肥大の効果に差が出るのかを分析しています。
また、HIITの取り入れ方によっても効果が変わる可能性もあるので、
- HIITの種類(ランニングかサイクリングか)
- 筋トレとHIITの間の休息時間
の2つによる効果の違いも確かめてくれています。
結果:
早速結果を見てみると
- HIITと筋トレを組み合わせで、下半身の筋力の伸びは少しだけ低下してしまった(効果量d=−0.248)
- HIITと筋トレの組み合わせでも、上半身の筋力の伸びは変わらなかった
- HIITと筋トレの組み合わせでも、筋肥大の効果は変わらなかった
ということが結論として得られています。
HIITで主に使う下半身の「筋力」のみが少し伸びが悪くなってしまうという結果となっていますね。ちなみに、どのくらい伸びが悪くなってしまうのかというと、筋トレのみでは23.9%向上していたスクワットの最大重量が、HIITを組み合わせた場合は19.4%の向上になったという感じです。どちらも向上していることに変わりはないので、この数%の違いにこだわるかどうかですね。また、筋肥大の効果には差がないので、最大重量の伸びよりも体づくりを優先する人はHIITを取り入れても問題はなさそうですね。
そして、HIITの取り入れ方による効果の違いを見てみると
- サイクリングよりもランニングの方が筋トレの効果の低下は少なかった
- 筋トレとHIITの間に24時間の休息を入れると筋トレ効果の低下を軽減できる可能性がある
ということです。筋トレを毎日やる人は少数だと思うので、筋トレをしない日にHIITを行うと良いのかもしれませんね。逆に筋トレの直前にHIITをすると、疲労で筋トレのパフォーマンスが下がってしまうので、やめておいた方が良いでしょう。
まとめ
本稿では「筋トレとHIITの組み合わせ」についてお話ししました。
ポイントをまとめると
- HIITと筋トレを組み合わせると、下半身の筋力の伸びが少しだけ低下してしまうが、筋肥大と上半身の筋力の伸びは変わらない
- 筋トレと組み合わせるなら、HIITはランニングがよく、筋トレとの間隔も24時間空けると良い
ということですね。
個人的には下半身の筋力の伸びの低下も少しのものですし、それ以上にHIITのメリットの方が大きいと思うので、大抵の人はHIITは取り入れてOKだと思います。特に引き締まったかっこいい体を作りたい人は、有酸素運動で脂肪を燃やすことも必要なので、HIITは取り入れるべきでしょう。
一方でHIITを取り入れない方がケースは、下半身の筋力(スクワットの最大重量など)を数%でも強く鍛えたいという競技者とかマニアックな人だと思います。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]