成功したから幸せなのか、幸せだから成功するのか?
仕事の成功と幸福感には相関関係があって、幸福感の高い人ほど収入が高く、上司からの評価も良いという傾向があることが分かっています。これの最も納得できる説明は、
- 成功した結果として、幸福度が向上した
ということです。
しかし、カリフォルニア大学がこれまでの心理学の研究をまとめた結果(*1)によると、逆の関係も分かっていて
- 幸福の結果として、仕事の成果が向上している
ということがあり得るということなんですね。
そこで、本稿では「幸福と成功の関係」について科学的にどんなことが分かっているのかを見てきましょう。
幸せだから成功する?
幸福と成功の関係について調べた研究結果について、どんなことが分かっているのかを
- 相関関係を調べたタイプの研究
- 幸福感の高い人を数年間追跡したタイプの研究
- 実験的に幸福感を高めたときの効果を調べたタイプの研究
の3つに分けて見ていきたいともいます。
①相関関係を調べたタイプの研究結果
まず最初に、仕事の成功と幸福の相関関係については次のようなことが分かっています。
1. 仕事に対してポジティブ
- 幸福度の高い人ほど、仕事の満足感も高い
- 幸福度が高い人ほど、仕事の離職率や欠勤率が低下する
- 幸福感の高い人ほど、自発的でより多彩な仕事に関係している
- 幸福感の高い人は、自分の役割以上の仕事をこなそうとする
2. 仕事のパフォーマンスが高い
- 幸福度の高い人ほど、仕事のパフォーマンスも高いことが色々な分野で確認されている(セールスマンやクリケット選手など)
- ポジティブな感情が高い人は、判断能力や交渉能力が高い傾向がある
- 幸福な雰囲気が仕事のパフォーマンスを上げて、高いパフォーマンスが幸福感を上げるという良いスパイラルが起きる
3. 協力的で人間関係が良い
- 幸福感が高い人は、利他的になり、他の人を助けることが増える
- 幸福感が高い人は、他人から好感を持たれやすく、他人からのサポートも多くもらえる
- 幸福感が高い人は、チーム内での摩擦も少なく、協力的になりやすい
4. 他人からの評価が良い
- 幸福感が高い人は、上司からも良い評価をもらいやすい
- 心の底からの笑顔は、表面的な笑顔よりも交換を得やすい
- 幸福感が高い人ほど、収入も多くもらいやすい
以上、幸福感は様々な仕事の成功の要因と相関があることが分かっているんですね。ただしこれらは相関関係なので、どちらが原因でどちらが結果なのかわからないのが難点です。
②幸福感の高い人ほ数年追跡したタイプの研究
次に、あるときの幸福感を測定して、その後に幸福感が高いほど成功しやすいのかを追跡調査したタイプの研究結果を見ていきましょう。この実験デザインでは幸福感が仕事の成果につながっているという因果関係により近くになっているわけですね。
1. 仕事に対してポジティブ
- 幸福感が高い人ほど、後に仕事の満足度も高くなりやすかった
- 幸福感が高い人ほど、その後に仕事を継続している可能性が高く、欠勤も少なかった
2. 仕事のパフォーマンスが高い
- 18歳の頃にポジティブな感情が高い人ほど、26歳の時点での仕事の成果が高かった
- ポジティブな感情が高い人の方が、半年後のセールスの成績が良かった
3. 協力的で人間関係が良い
- ポジティブな感情の高い人ほど、その後の1年以上にわたって同僚や上司のサポートを多くもらっていた
4. 他人からの評価が良い
- 幸福感が高い学生ほど、後の就活で2次面談に進みやすいかった
- ポジティブな感情の高い人ほど、その後2,3年に渡って上司の評価が高かった
- 幸福感の高い人ほど、16年後に収入が高くなっていた
ということで、相関関係の研究ほど数は多くないにしても、幸せが成功につながるということが長期の追跡調査でも確認されているようですね。
③実験的に幸福感を高めるタイプの研究
最後に、実験的に幸福感を高めた場合に、仕事のパフォーマンスや成功につながる行動が向上するのかを確かめた研究結果を見ていきましょう。この実験デザインには、因果関係を直接測定できる代わりに、実験的に一時的に幸福感を高めるので、現実とは少しギャップが出てしまうという特徴があります。
1. 仕事に対してポジティブ
- ポジティブになると、より高い目標に挑戦するようになる
- ポジティブになると、自分自信の能力の評価が向上し、結果に対しても楽観的になる
- ポジティブなると、アウトドアや他の人との付き合いなどエネルギーを使う活動をしたいと思うようになる
2. 仕事のパフォーマンスが高まる
- ポジティブな感情を高めた状態だと、交渉が上手くなる
- ポジティブな感情が高まると、難しいタスクへの忍耐力が向上する
- ポジティブな感情が高まると、頭の柔軟性が増してクリエイティブになる
- (楽観的になると論理的な判断能力は低下するという負の効果がある場合もある)
3. 協力的で人間関係が良くなる
- 幸福感の高い人は、他の人を高く評価するようになる
- 幸福感が高まると、他人のための行動が多くなる
といった感じで、幸福感が高まったときには、人は仕事のパフォーマンスや人間関係が向上するということが分かっているみたいですね。
まとめ
本稿では「成功が幸せを呼ぶのか?幸せが成功を呼ぶのか?」についてお話ししました。
ポイントをまとめると
- 幸せな人ほど、仕事に対してポジティブな姿勢になる
- 幸せな人ほど、仕事のパフォーマンスも高まる
- 幸せな人ほど、協力的になり人間関係も向上する
- 幸せな人ほど、他の人からの評価も向上する
そして、これらの結果として
- 幸せな人ほど、仕事で成功しやすくなる
ということですね。
成功するから幸せになることも、幸せだから成功するということも、両方ともあり得て、この2つが良いスパイラルをもたらしてくれる可能性もあるわけですね。
[参考文献]