ゲーミフィケーション使った人事システムを1年間運用してみた結果とは?
ゲーミフィケーションとは、仕事などにゲームの要素を加えることで、もっと楽しいことにすることを言います。例えば、仕事の成果を目に見えるようにスコアにするとか、そのスコアをランキングにして競い合うとか、仕事の実績をバッジにして表彰するとかです。
それで、ゲーミフィケーション自体が仕事のモチベーションや満足度に良い効果があること実験でも確認されているようですが、サンクトガレン大学の研究では、もっとガッツリと、
- ゲーミフィケーションを使った人事システムを、現実の仕事で取り入れてみたらどうなるのか?
を検証してくれていました。本稿ではこの研究を参考に、仕事におけるゲーミフィケーションの効果を見ていきましょう。
ゲーミフィケーションのシステム
この研究では、〜10000万人規模の金融関係の会社で、情報共有やチームコラボレーションの土台となる人事システムを、ゲーミフィケーションを使ったシステムに取り替えて実際に運用しています。
そして、この新しいシステムがなかなか面白そう。
この画像はバッジ機能の画面で、仕事で誰かを助けるとHelperのバッジがもらえたり、あるいは自分から他の人にバッジを与えることもできるということ。バッジをもらえる喜びがありますし、相手にもお返しをすることで良い人間関係が深まりそうですね。
この画像はランキングシステムで、バッジなどでついたスコアの合計ポイントを競い合えるようです。ランキングアップを狙ってモチベーションの向上などが期待できそうですね。
さらにこの画像では、それぞれの人にレベルがあるようで、次のレベルまでは後何ポイント必要とか、今のミッションの進捗とかが見えるようになっています。自分の成長感や進捗感につながるので、これも働きがいを高めてくれそうです。
そして、他にも仕事のベストプラクティスを共有することなどにも使えるということで、仕事の効率アップにも効果がありそうです。
ゲーミフィケーションの効果とは?
それでこの研究では、このシステムを1年間にわたって運用していて、6ヶ月、9ヶ月、12ヶ月目でゲーミフィケーションでどんな効果が得られたのかを測定しています。
その結果を見てみると
- 仕事の楽しさが向上して、仕事満足度も高まった(β=0.46)
- バッジシステムなどのフィードバックにより、お互いに良い評価やサポートを与え合う関係性が高まった(β=0.69)
- そして、お互いの協力関係が高まると、仕事満足度とエンゲージメントも高まった(β=0.42)
- 新しいシステムで仕事の効率面も高まり、それが仕事へのエンゲージメントを高めた(β=0.17)
- 仕事のモチベーションも向上し、それが仕事へのエンゲージメントを高めた(β=0.14)
ということ。
ざっくりとまとめると、ゲーミフィケーションのシステムの効果として、
- ①仕事の楽しさやモチベーションの向上
- ②互恵性による人間関係の向上
- ③効率的な情報共有の向上
- →これらの結果として、仕事満足度とエンゲージメントの向上
が得られたということですね。
ちなみに6ヶ月、9ヶ月、12ヶ月と時間での効果の推移を見てみると、「ゲーミフィケーションの効果は時間と共に廃れることはなく、むしろ少しずつ効果は高まっていった」ということも分かっています。なので、長期的に使うような人事システムでもゲーミフィケーションは役に立つということですね。
まとめ
本稿では、「ゲーミフィケーションの実運用効果」についてお話ししました。
ポイントをまとめると
- ゲーミフィケーションで、仕事の楽しさやコミュニケーション、人間関係が改善し、最終的には仕事満足度とエンゲージメントも向上する
- ゲーミフィケーションの効果は長期的に持続していく
ということです。
今回の研究はゲーミフィケーションの人事システムを実運用してみたという大変参考になるものでした。リモートワークだったりで直接顔を合わせる機会が減ってしまうときにも、バッジシステムのようなデジタルのコミュニケーションが、人間関係を深めるのに役に立つのではないでしょうか。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]
*1 : The effects of a gamified human resource management system on job satisfaction and engagement