普段は自己コントロールがうまい人でも、不確実性でコントロールを失ってしまうぞ
自己コントロール能力は長期的な利益を選ぶ能力で、
- 不健康な食べ物を我慢して野菜を食べる
- ゲームをやりたい気持ちを我慢して勉強をする
- 短期的な利益を我慢して、長期的により大きな利益の出る投資をする
など人生の様々な場面で活躍する能力です。
自己コントロール能力は常に高くキープできればいいのですが、気分が落ち込んでいるときや、ストレスを抱えているとき、睡眠不足のときなど、特定の状況で低下してしまうことがわかっています。
そして、テキサス・テック大学らの研究では、自己コントロール能力が低下してしまう新しい原因として、
- 将来が不確実なときほど、自己コントロール能力は低下してしまうのでは?
ということを調べてくれていました。これはなかなか面白い着眼点で、例えば、自分の好きなおかずを最後に残しておくでも、そのおかずが誰かに取られてなくなってしまう可能性がある不確実な状況では、最後まで残さずに最初に食べますよね。そんな感じで、不確実性と自己コントロールにどんな関係があるのかを本稿では見ていきましょう。
不確実性と自己コントロール能力
このテキサス・テック大学の研究では、182人を集めて不確実な状況でセルフコントロール能力が発揮できるかの実験を実施しています。この実験で参加者は「これからスピーチをする人とそのスピーチを聞いて評価する人に分かれてもらいます」といって、参加者を次の3つのグループにランダムで割り振っています。
- ①確実にスピーチをするグループ
「あなたはスピーチをする人に決まりました」と伝える - ②確実にスピーチを聞くグループ
「あなたはスピーチを聞く人に来ましました」と伝える - ③不確実グループ
「あなたがスピーチをする人かスピーチを聞く人かが書かれた紙を忘れてしまったので、後でどちらかを伝えます」と伝える
3つ目の不確実グループだけが、自分がスピーチをするのか聞くのかが未確定のもやもやした状態になっているわけですね。
そして、スピーチを行う前にチョコレートの味見に参加してもらって、チョコレートを食べた量で自己コントロール能力が測定されています。想定としては不確実グループの人は自己コントロール能力が低下して、チョコレートをいっぱい食べてしまうというわけですね。
結果:
それで結果がどうなったのかというと
- 不確実な状況では、チョコレートを食べる量が増えて自己コントロール能力が低下していることが確認された
- ただし、自己コントロール能力が低下したのは普段は自己コントロール能力が高い人だけだった
ということ。
上のグラフがその結果を表していて、普段から自己コントロールがうまい人(薄い棒グラフ)の結果を見てみると、一番左の不確実な状況でチョコレートを食べた量が高まっているのが分かります。なので、不確実な状況では普段発揮している自己コントロールが失われてしまうわけですね。
一方で、自己コントロール能力が低めで普段から食事がだらしない人は、不確実な状況で一番チョコレートの摂取量が低く、スピーチをしないと分かっている状況でチョコレートを一番多く食べています。まあ自己コントロール能力が低いだけに全体的にチョコレートの摂取量が多いので、普段から自己コントロール能力が低い人は、不確実な状況とかを気にする前に、自己コントロール能力をどうやってあげるのかを考えた方が良いのかもしれません。
まとめ
本稿では「不確実性と自己コントロール能力」についてお話ししました。
結論をまとめると
- 普段から自己コントロール能力が高い人ほど、将来の不確実性によってセルフコントロール能力が低下してしまうので注意
ということですね。
今回はチョコレートでの実験でしたが、ジャンクフードやお酒など他の食べ物の自己コントロールが効かなくなってしまうことも十分考えられます。なので、不確実な状況では自分が特に誘惑されやすい食べ物には警戒心を持つようにした方が良いのかもしれませんね。
[参考文献]