ネガティブな感情だけでなく、ポジティブな感情の抑制も必要だよねという研究
感情のコントロールは心理学で研究されている分野の一つで、不安や怒りなどの感情がコントロールできれば人生はより豊かになることが期待できますよね。
感情のコントロールは意外と難しいもので、無理に押さえ込もうとすると、頭の中で感情が増幅して逆効果になってしまうこともあります。そこでリアプレイザルのような方法では、感情を押さえ込もうとするのでなく、感情の解釈を変えてあげる方針をとります。例えば、不安で心臓がバクバクしているときには、「極度の不安で動揺している」というネガティブな解釈でなく、「本番に向けて体のテンションが上がっている」とポジティブな解釈に変えることができるわけですね。
そして、このような感情のコントロールでは、大抵は不安や怒り、落ち込み、悲しみなどのネガティブな感情を減らすことを目的としています。しかし、トロント大学の研究(*1)によると、
- ネガティブな感情だけでなく、ポジティブな感情も抑制できた方が、人生はもっと良くなるよね
ということを言っていました。本稿ではこの研究を参考に、なぜポジティブな感情の抑制も大切なのかを見ていきましょう。
ポジティブな感情の抑制はなぜ必要なのか?
一見するとポジティブな感情は多いほど良いように思えますが、時と場合によってはポジティブな感情は過剰になりすぎない方が良いこともあります。
- ポジティブな感情を表に出さない方が良い場面もある。
例えば、大学の合格発表で、自分は合格したけど、友達は落ちてしまったときに、友達を前にして自分だけ喜んでいると人間関係が悪くなってしまいますよね。このように、場面によってはポジティブな感情を出さない方がうまくいくこともあり、そのときにポジティブな感情を抑制する力が必要になります。
- ポジティブな感情も過剰になると害を生むことがある
ポジティブな感情を過剰に感じるようになると、それに対して熱狂的になりすぎてしまったり、場合によっては依存症になってしまうこともあります。例えば、ギャンブルへの依存がこのケースで、ギャンブルの快楽を自分の中でコントロールできなくなってしまうと破滅的な結果にもなり得ます。
2つ目のケースはギャンブルだけでなく、過度の飲酒や、お菓子を食べ過ぎによる肥満、ゲーム中毒など、割と身近にも起こりうることなので注意が必要ですね。
ポジティブな感情のコントロールの研究
それでトロント大学の研究では、合計で1000人以上を対象にして調査を行って
- ポジティブな感情を抑制する能力
- ポジティブな感情を上げる能力
- 失望や落胆を抑制する能力
- 怒りを抑制する能力
をそれぞれ測定して、これらの関係性や、ポジティブな感情をコントロールできない人にどのような行動が多いのかを測定しています。
結果
結果として分かったことは
- 感情面の敏感さやメンタルの揺さぶられやすさには、ポジティブな感情をコントロールする能力よりも、ネガティブな感情を抑制する能力の方が大切
- 4つの能力はそれぞれ相関していて、ネガティブな感情のコントロールがうまい人は、ポジティブな感情のコントロールもうまい傾向がある
そして、ポジティブな感情をコントロールする能力について
- ポジティブな感情のコントロールがうまい人は、自尊心が高く、問題を回避せず、困難な状況への耐性(レジリエンス)も強く、人間関係への不安も少ない
- ポジティブな感情を抑制できない人は、怪我や薬物などのリスキーな行動が多くて、病院にかかる確率が高かった
ということ。
やはり、ポジティブな感情が足りないときにそれを補ってあげたり、逆にポジティブな感情が過剰なときにそれを抑える能力が、人生にとってプラスになるという結果が得られていますね。落ち込んだときや不安なときのネガティブな感情のコントロールだけでなく、興奮して浮かれすぎないようなポジティブな感情のコントロールも大切ということですね。
まとめ
本稿では「ポジティブな感情の抑制」についてお話ししました。
ポイントをまとめると
- ネガティブな感情だけでなく、ポジティブな感情も抑制できると人生にとってプラスになる
- ポジティブな感情が抑制できないと、リスクのある行動も浮かれてとってしまうようになるので注意が必要
- ポジティブな感情のコントールができる人は、自尊心やレジリエンスが強く、人間関係の不安も少ない
ということ。
ポジティブな感情は場面によってはネガティブな結果にもなりうるということで、過剰になってそうなときは一度冷静になってみた方が良さそうですね。一方でポジティブな感情は基本的には良いものなので、押さえ込みすぎないことも大切です。そこら辺はうまくバランスをとってコントロールしましょう。
[参考文献]