起業のような強い決意には、自己効力感と共にフィット感が大切という研究
起業をする決断には、大きな決意が必要になります。失敗する確率も高くてリスクが大きいわけですから、そのハードルを超えるだけのモチベーションが必要なわけですね。
そして、実際に起業を決断できる人は少数であることから、これらの人たちには何らかしらの傾向や特徴があることが想像できます。私なんかは転職を考えだけでも悩むくらいなので、自分の人生をかけて起業をするような決断ができる人には憧れてしまうわけです。
そこで、Miller College of Businessらの研究(*1)では
- 企業の決意が強い人たちは、どのような特徴があるのか?
について自己効力感とフィット感の観点から分析してくれていましたので、本稿ではこの研究を参考に、起業のような決断をしたいときに必要になることが何かを学んでいきましょう。
自己効力感とモチベーション
自己効力感の研究では、行動を起こすモチベーションには2つの要素が必要になると言われています。
一つ目の要素が行動の結果に対する期待です。自分に大きな利益があるほど、その行動へのモチベーションが高まるという、すごく単純な話ですね。そして、モチベーションの源になる2つ目の要素が自己効力感です。自己効力感とは「自分の努力次第で困難があっても乗り越えていける」という自分の能力に対する自信のようなものです。いくら大きな利益がある行動でも、それを成功させる自信がなければモチベーションは湧いてこないということですね。
しかし、起業のモチベーションになると問題になるのが、将来の結果の不確実性が高いということです。起業は将来どうなるかの予測が難しくて、リスクの高い行動のため、自分の能力に自信があっても起業しようという決意はなかなか湧きづらいんですね。
そこで、Miller College of Businessらの研究が注目したのがフィット感です。フィット感とはこの起業が自分にぴったりだという感覚のこと。例えば、自分の能力が発揮できる仕事だとか、これこそが自分が作りたいサービスだとか、自分はこの起業するのにぴったりの性格だとかいう感覚のことですね。
フィット感と起業の決意
それでこの研究では3つの実験により、自己効力感とフィット感、そして起業の決意がどのように関係しているのかを測定しています。
3つの実験のデザインは少し違っていて、意図的に「あなたの性格は起業向きの性格だ」と伝えて自己効力感を高めたときの効果を見たり、介入なしの純粋な相関の分析したりしています。これらの実験により自己効力感・フィット感・起業の決意の関係を3つの側面から分析して、ただの相関関係よりも強い因果関係を推定しているということです。
そして、この研究の結果として分かったことは、
- 自己効力感が高い人ほど起業の決意が強い傾向があり、フィット感を感じているとさらにこの傾向が強くなる
- 自己効力感が高い人でもフィット感を感じていないと起業の決意は弱くなる傾向がある
ということ。起業の決意をする人は、自己効力感とフィット感の両方が高いということですね。まあ確かに、自分にフィットしていないことを、起業をするという大変なプロセスを踏んでまで行いたいとは思いませんよね。なので、起業をしたいという人は、自分のやりたいことはこれだ!と言えるような事業を見つけることが大切ということですね。
まとめ
本稿では「フィット感と起業の決意」についてお話ししました。
ポイントをまとめると
- 自己効力感が高く、フィット感も高い人が、起業の決意が強い
- 自己効力感が高くても、起業へのフィット感を感じていなければ、起業の決意は弱くなってしまう
ということですね。
今回は起業というとても大きな決断でしたが、転職や異動などのキャリアの決断でも同じようなことが言えるのかもしれませんね。なので、転職しようか迷っているときなんかは、自分にフィットする仕事は何かを考えてみると、決意が固まってくるかもしれません。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]
*1 : I KNOW I CAN, BUT I DON’T FIT”: PERCEIVED FIT, SELF- EFFICACY, AND ENTREPRENEURIAL INTENTION