「俺は人の心を読める!?」自己評価が過大になってしまうはどんな人なのか?
人は客観的に自分を評価することが苦手な生き物です。自分は普通の人よりは車の運転が上手いとか、自分は平均よりはIQが高いとか、どうしても自分を良い方向に評価してしまう傾向があるんですね。
それで、この過大な自己評価の現れの一つが「自分は他人の心を読んだり、嘘を見分けることができる」という自信になります。実は相手の心や嘘を見抜ける人がいるのかは科学的にも実験されていますが、正解率はほぼ50%でランダムに選んだ場合と変わらないんですね。なので、人には相手の心を読む力はなく、「自分は相手の心が読める」という自信は、何の根拠もない課題な自己評価に過ぎないのです。
そして、コロンビア大学らの研究(*1)では、この話をもう少し深掘りしていて、
- それじゃあ相手の心を読めるという勘違いは、どんな人がどんな風に持ちやすいのか?
ということを調べてくれていました。
過大な自己評価を持ちやすい人とは?
それでコロンビア大学の研究では、143人の学生を集めて相手の嘘や素性を見破ってもらう実験をしています。どうやって実験したのかというと、15個の動画を見てもらって登場人物の役職や嘘を見抜いてもらったんですね。
それでこのときに
- 自分の成績は全体の何パーセンタイルだと思うか?
- どんな性格なのか?
(ナルシスト傾向、外向性、自尊心、社交スキル)
が測定されています。これらの結果から、どんな人が自分の能力を過剰に評価しやすいのかがを分析したわけですね。
結果
結果を見ると、まず最初に、
- 自分の成績の予測は平均60.1パーセンタイルで、実際の平均の50パーセンタイルを超えていることから、自分の成績を良い方向に予測している人が多いことが分かった
と、これまでの研究結果と同様に、自己評価が高くなってしまうバイアスが確認されています。
そして、どんな人が自己評価が高かったのかというと
- 実際の成績が低い人、ナルシストの傾向がある人、外向性が高い人は自分の成績を上位に予測する傾向が強かった
ということ。
特に実際の成績と予測の成績が面白い関係になっていて、
- 本当の実力が下位25%以下の人の自己評価は全体の56%以上で、実力が低い人ほど予測のズレが激しかった
- 本当の実力が75%以上の上位に入る人の自己評価は全体の65%以上で、実力が本当に高い人は逆に自分の実力を低く見積もっていた
ということ。悲しいことに、実力が低い人ほど自分に実力がないことに気づいていなくて、自分は平均以上だと思い込んでしまっているんですね。
実験2:顔を合わせた交渉ではどうか?
先の実験は動画を見て判断するものなので、2つ目の実験では実際に顔を合わせた交渉で相手の意図や感情を見抜けるかを確かめています。この実験では参加者にペアを組んでもらって、事業を売りたい起業家と、買収する事業を探している多国籍企業の役員の役割で交渉を行ってもらいます。そして、これらの交渉の中で相手はどんな意図を持っていて、どんな感情を抱いているのかを見抜いてもらったんですね。
その結果を見てみると
- 自己評価は全体の61パーセンタイルで平均の50%を超えていた
- 実際の成績が低い人ほど、自己評価のズレが大きかった
- ナルシストも自分を過剰に評価する傾向があった
ということ。ほぼ動画の実験と同じ結果になっていますが、外向性が高い人が自己評価が過剰になるという結果は今回の実験では得られていないということ。
なので、自己評価が特に過剰になりやすいのは
- 実力が無い人
- ナルシスト
の2タイプということで、これらの傾向がある人は注意が必要ですね。
まとめ
本稿では「自己評価が過大になってしまうのはどんな人か?」についてお話ししました。
ポイントをまとめると、
- 本当に実力が無い人は、実力の無さに気づくことすらできないので、自己評価のギャップが大きくなってしまう
- ナルシストは自分をすごい奴だと思う傾向が強いので、自己評価が高くなってしまう
- 逆に本当の実力が高い人ほど、自分の実力の予測は低くなる傾向もあった
とういうことですね。
自分は相手の心が読めるとか言っている人がいたら、ただのナルシストの可能性が高いので注意しましょう。自分の実力のなさに気づくには、少しでもいいのでその分野の知識をつけたりトレーニングをすると良いという研究もあるみたいです。なので、何の根拠もなく自分はすごいと思う前に、謙虚さを持って学んでいきましょう。
[参考文献]