お金を見ると自己中心的になりやすいけど、子供でもその影響は受けるのか?
お金は裕福さや優秀さのシンボルにもなっていて、とても影響力を持っています。お金の話となると急に興味が湧いてきたり、お金が貰えるとなると急にモチベーションが高まったりしますよね。
そして、お金の影響力は無意識のレベルにも達していることが心理学の研究でわかっています。お金をチラッと見るだけで無意識のうちに行動が自己中心的になってしまったりするんですね。
そこで、本稿では
- お金の影響力がどのように人を変えるのか?
- お金は子供にも影響力を発揮するのか?
について、ワルシャワ大学の研究(*1)を見ていきたいと思います。
お金の影響力
何かを見たり聞いたりした刺激が、その後の行動に無意識影響してしまうことをプライミング効果といいます。心理学では様々なプライミング効果が研究されていて、本稿で注目するのはお金を見たり・お金の話を聞いたりといったお金のプライミング効果です。
これまでの研究でわかっているところとしては、お金のプライミングを受けると
- コストと利益を考えて行動をするようになる
- 自分や利益ばかり考えて他人を助けなくなる
- なんだか強くなった気がして有能感が増す
- お金のために困難な課題にも長く取り組むようになる
というようなことが分かっています。お金の先行刺激は無意識に自分の有能感を高めて自己中心的になっちゃうというわけですね。
そして、お金の影響は何歳くらいから受けるようになるのか?についてはまだよく分かっていないようです。小学生にもなると周りと比較して自分の有能感を感じるようになるので、お金の影響力も大人と同じように受けるように思えます。一方で赤ちゃんにお金を見せても何の価値もわからないので、赤ちゃんと小学校の中間ぐらいではお金の影響を受けるようになっていそうだと考えられます。
そこで、ワルシャワ大学の研究(*1)は
- 4〜10歳の子供の有能感はお金を見るプライミングで高まるのか?
を実験により調べてくれています。
子供とお金の影響力
この研究では
- 8〜10歳を対象にしたお金の影響力の実験
- 4〜6歳を対象にしたお金の影響力の実験
と年齢を分けて2つの実験を行っています。
どちらの実験もお金の先行刺激(プライミング)を子供に与えた上で、有能感や他人を気遣う行動力を測定しています。
どのようなお金のプライミングを行ったのかというと、一つ目の実験では硬貨や紙幣の写った画像を使っています。画像を見た子供に、その中に硬貨や紙幣がどのくらいあるのかを数えてもらい、その3分後に見た画像を絵に書いてもらうというプライミングです。
二つ目の実験のプライミングでは、3種類の硬貨合計30枚を用意して、それらを綺麗に並べてもらうプライミングを行っています。
各実験ではこれらのプライミングの後で有能感の測定を行い、コントロールグループと比べてお金のプライミングでどれだけ有能感が向上するのかを分析しています。このときに有能感にも色々な種類があるので、学業・運動・人間関係・身体的特徴などの分野に分割して測定がされています。
結果:お金のプライミングと有能感
結果として分かったことは、
- 4〜6歳では身体的な有能感のみが向上した
- 8〜10歳では運動の有能感のみが向上した
ということ。これらはどれも”自分に関する有能感”になっているのがポイントです。逆にお金で高まらなかった特徴を見てみると
- 他人が関連する有能感(友達が多くて社交的、母親から好かれているなど)
- 他人を気遣った行動
- 全般的な自分の価値評価
ということ。
まとめると、子供でもお金を見ると自分に関する有能感が増して、自己中心的になる傾向がある。子供の場合には向上する有能感の種類も限られていて、運動が上手い・体が強いといった有能感のみが増すということです。子供のうちはスポーツがうまい人がモテたりしますから、子供は子供なりの有能感が増しているという面白い結果ですね。
まとめ
本稿では「お金の刺激と有能感・自己中心性」についてお話ししました。
ポイントをまとめると
- お金の刺激を受けると、有能感が高まって自己中心的になりやすい
- この影響は子供も受けることが分かって、子供の場合には運動や身体的な有能感といった子供らしい有能感が高まっていた
ということです。
お金持ちになると気が大きくなって自己中心的になってしまう大人がいるように、子供も少なからずお金の影響を受けるということなので注意が必要そうですね。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]