学習成果を上げるには創造思考と批判思考を身につけることが大切という研究
学習の効果を上げる方法の一つとして、質問を積極的に取り入れる戦略があります。学校の講義であれば、先生が生徒に一方的に教えるのでなく、質問を投げかけて生徒自身に考えてもらう機会を増やすような戦略のことですね。
この生徒自身に考えてもらうということがとても大切で、質問の回答のアイデアを考える中でクリエイティブな思考が鍛えられますし、それらのアイデアのどれが正しいのかを判断するのに批判的な思考も働きます。
本稿では、
- 創造的思考(クリエイティブ・シンキング)と批判的思考(クリティカル・シンキング)の2つを鍛えることで、本当に学習成績は向上するのか?
について調べてくれたマラン州立大学の研究(*1)を見ていきましょう。
創造的思考・批判的思考と学習成績
この研究では、生物学を専攻している52人の大学生を対象に、質問を取り入れたタイプの授業を実践したときに、創造的思考と批判的思考がそれぞれ学習効果にどのように関係するのかを調べています。
最初の授業を受ける前と、最後の授業を受けた後の2回に分けて試験が行われていて
- 創造的思考力
- 批判的思考力
- 認知的学習効果
の3つが測定されています。
結果
それで結果としてどのようなことが分かったのかというと、
- 創造的思考力と批判的思考力は学習効果と強く相関していた
- 学習効果が高いか低いかの72.8%はこの2つの思考力の高さにより説明された
ということ。なので、質問形式の授業を取り入れることで、創造的思考力と批判的思考力の両方が鍛えられて、それにより学習効果が向上するということが分かったわけですね。
それで、もう少し具体的にどちらの思考が影響力が強いのかを見てみると
- 批判的思考力の回帰係数は0.139(学習効果の7.89%)
- 創造的思考力の回帰係数は0.733(学習効果の64.91%)
ということ。
創造的思考力の方が学習効果にはより大きな影響力があるという結果になっています。なので、学習効果をあげたければ、授業の中で創造的にアイデアを出すような機会のが効果的かもしれませんね。
一方で、批判的思考力は学習効果への影響力としては創造的思考力よりも弱目になっています。しかし、批判的思考力は分析や評価、難しい決断などに必要不可欠なもので、創造力的思考力とは少し違う役割を持っています。例えば、創造力的思考力を使えばたくさんのアイデアを出せますが、批判的思考力ではこれらのアイデアを評価して絞り込むことができます。なので、深い学びをするのには創造的思考力と批判的思考力の両方が必要ということですね。
まとめ
本稿では「創造的思考力・批判的思考力と学習効果」についてお話ししました。
ポイントをまとめると、
- 学習に質問を取り入れて、学び手が自分で考える機会を増やすと、創造的思考力と批判的思考力の両方が鍛えられる
- 創造的思考力と批判的思考力が高い人ほど、学習効果も高い相関がある
- 学習効果の64.91%を創造的思考力、7.89%を批判的思考力が占めている
ということです。
創造的思考力や批判的思考力は仕事でも大切になる思考なので、学習を通じて鍛えていけるのは良いですね。自分で何かを勉強するときにも、本を読んだりするだけでなく、練習問題を自力で解いてみたり、なぜそうなるのかを自分で考えてみたり、その知識を何かに応用できないか考えてみたりと、自分で考える機会を増やして思考力を鍛えていきましょう。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]
*1 : The Correlation Between Critical and Creative Thinking Skills on Cognitive Learning Results