先延ばしは無くすには日記をつけるのが効果的という研究
先延ばしは誰もが悩むもので、仕事を先延ばしにして期限ギリギリになってしまったり、学校で宿題を先延ばしにして遊んでしまったり、家では食器洗いを先延ばしにしてお皿が山積みになってしまったりと、日常の到るとこで先延ばしは起きてしまうものです。
ある研究によると大学生の95%は何らかしらの先延ばしをしてしまっていて、50%は学業成績や心身の健康に響くレベルの大きな先延ばしを経験しているということ。
そこで、本稿では
- 先延ばしを減らすには日記をつけるのが良いのでは?
ということを実験してくれたオハイオ州立大学の研究(*1)を見てみましょう。
先延ばし日記
先延ばしの原因には様々なことが考えられて
- 単純に今楽しいことを優先してしまう
- 失敗が怖くて後回しにしてしまう
- 嫌いなことややりたくないことだから先延ばしにしてしまう
(めんどくさい含む) - 何から始めていいのかわからなくて手をつけるのが遅れてしまう
などなどあります。これらはどれも心理的な要因で「タスクを始めるのに十分なモチベーションがない」わけですね。
そこで、オハイオ州立大学の研究は日記をつけるのが先延ばしを減らすのに有効だと考えています。日記をつけると自分に行動を客観的にモニターできるので、どんなときに先延ばしをしやすいのかとか、先延ばしがどれだけ悪い結果を招いているのかに気づけて、先延ばしを無くそうというモチベーションが働くのでは?と考えたわけです。
先延ばし日記の効果とは?
それでこの研究では11人の大学生を集めて、先延ばし日記を書いてもらう実験をしています。先延ばし日記に書く内容は
- いつ、どんなことを先延ばししてしまったのか?
- 先延ばしをしてしまった主な理由は何か?
- 先延ばしして代わりにどんなことをしたのか?
- 先延ばしした結果、どんな影響があり、どんな気持ちになったのか?
- 先延ばしをしそうになったけど、持ち直したことはあるか?
といった感じ。参加者にはこの日記を2週間に1回の頻度で書いてもらって、先延ばしに対する考えや行動がどのように変化するのかを読み取っています。
そして、実験の結果として、先延ばし日記には4つの効果があることが確認されていますので、順番に見ていきましょう。
結果1:先延ばし頻度とパターンに気付ける
まず参加者が日記をつけて驚いたのが
- 先延ばしが蓄積されて想像を超える量になっていた
- 先延ばしの一時の楽しさの結果として、後々ストレスやネガティブな感情を多く受けていることに気づいた
ということです。確かに、先延ばしは仕事や学業など日常の至る所で起きますから、全てを書き出すとものすごい量になりそうですね。これらの先延ばしの積み重ねが自分の生産性を大きく奪ってしまっているわけですから、先延ばしの影響の深刻さに気付けるというのは日記の大きな効果の一つになります。
そしてそれらの先延ばしを振り返ってみることで
- 自分がいつ、どこで、どんなことを先延ばししやすいのかの傾向がわかった
ということ。自分の弱点さえわかっていれば、そこを重点的に注意できるので、これも日記をつけたことにより得られた大きな効果ですね。
結果2 : 先延ばししていることに気付ける
2つ目の効果としては、先延ばしを日記に書いて先延ばしへの警戒心が高くなることにより
- 自分が今先延ばしをしてしまっていることに、リアルタイムに気がつけるようになった
ということです。メタ認知といって客観的に自分を観察できる能力は、自制心を持って自分をコントロールするのにとても大切な能力の一つです。先延ばし日記を書くということは自分の先延ばしを観察する練習になって、リアルタイムでもその視点が持てるようになるみたいですね。
さらに、先延ばしに気付けるだけでなく、
- 自分の先延ばしに気づいた後に、そこから持ち直すような行動をすることが増えた
という良い効果も確認されています。
結果3:モチベーションが高まる
そして3つ目の効果としては、先延ばしをやめてちゃんとタスクに取り組むモチベーションが高まったということ。これには先延ばし日記のつぎの2つの側面が働いているみたいです。
- 現状の先延ばしのひどさがモチベーションを高める
先延ばし日記を書くと現状の先延ばしがどれだけ酷いのかが分かるので、それが先延ばしを直さなければというモチベーションにつながる。 - 先延ばしの改善がモチベーションを高める
先延ばし日記には先延ばしをしそうになったけど持ち直した経験も書くことになっている。そのため、先延ばしに打ち勝った経験だったり、先延ばしが減ってきたという成長感が得られ、それがモチベーションの向上につながる。
結果4:自分の改善点が明確になる
自分の先延ばしの現状が明確になると、先延ばしを防ぐための対策方針が明確になります。もう少し具体的にいうと
- 自分が先延ばしをしやすいタイミングや場所、タスクの種類に対して、具体的にどんな対策をするべきかの対策方針が立てられるようになる
- 先延ばしをしてしまうのはタスクを多く抱えているからで、どのタスクを優先すべきかの優先度をつけられるようになる
といったことが可能になって、先延ばしにうまく対処できるようになるんですね。
まとめ
本稿では「先延ばし対策としての日記」についてお話ししました。
ポイントをまとめると、先延ばし日記の効果としては
- 自分の先延ばしの頻度やパターンがわかる
- 先延ばしをしていることにリアルタイムに気がつけるようになる
- 先延ばしをなくすモチベーションが高まる
- 先延ばしへの対策方針が明確になる
ということですね。
先延ばしはタスクの種類だけでなく、状況やその人の性格的な側面の影響も受けます。なので、先延ばし日記には「先延ばしをしてしまった状況」や「先延ばし前後の心理・感情面」についても書いてあげると深い分析ができるでしょう。興味がある人は試してみてください。
[参考文献]
*1 : The power of writing about procrastination: journaling as a tool for change