恥の気持ちは自分を変えるモチベーションになるのか?の研究

学生時代に勢いでやってしまったことや、自分の黒歴史など、過去を振り帰ってみると、「恥ずかしい自分」を誰もが持っていると思います。そんな恥ずかしさはできれば思い出したくはないですし、他人に見たり聞かれたりなんて言語道断です。
しかし、この恥ずかしさにもいい面があるのではないか?ということを調べてくれたのがマサチューセッツ大学らの研究(*1)です。この研究では
- 恥ずかしいという気持ちは、自分を変えるモチベーションにもなるのでは?
ということを調べてくれているんですね。本稿ではこの研究を参考に、ふと昔を思い出して恥ずかしくなったときに、それをモチベーションに変える方法について学んでいきましょう。
恥と罪悪感
恥と似た感情には罪悪感があります。どちらも過去の自分を後悔するタイプの感情になりますが、「恥は他人には見られたくない過去の自分」なのに対して、「罪悪感は他人に悪いことをしてしまった後悔」という若干のニュアンスの違いがあります。
それで、マサチューセッツ大学はこの似た感情にも違う効果があることを想定していて
- 恥じる気持ちは、過去の自分自身に向いているので、自分を変えたいというモチベーションにつながる
- 罪悪感の気持ちは、他人への償いの気持ちが強くなるので、自分を変えたいというモチベーションはそこまで高まらない
と考えています。
さらに恥ずかしさにも
- 深い恥
倫理的に悪いことをしたなど、自分自身が情けなく恥ずかしく思うレベルの恥 - 浅い恥
全員スーツのパーティに自分だけ場違いな格好で来てしまったみたいな、深い反省まではつながらない、浅い恥のレベル
の2種類で効果が違うことも考慮していて、これらの感情がどのように自分を変えるモチベーションにつながるのかを確かめる2つの実験を行っています。
実験1:恥と自分を変えるモチベーション
最初の実験では174人の大学生を3つのグループに分けて
- 深い恥を掻いた経験を思い出すグループ
- 浅い恥を掻いた経験を思い出すグループ
- 罪悪感を抱いた経験を思い出すグループ
で5分間それぞれの経験について書き綴ってもらいます。
その後に、各グループで
- 自分を変えたいという気持ち
- 過去の行動を償いたいという気持ち
- 過去の行動はなかったことにしたいという気持ち
の3つを測定しています。
結果
この実験の結果として分かったのは
- 深い恥の気持ちを思い出した人は、自分を変えたいという気持ちが一番高く(.33)、次に過去の行動をなかったことにしたい気持ちが高かった(.25)
- 浅い恥の気持ちを思い出した人は、過去の行動をなかったことにしたい気持ちの人が多かった(.23)
- 罪悪感の気持ちを思い出した人は、過去の行動を償いたいという気持ちが一番強く(.55)、次に自分を変えたいという気持ちが高かった(.33)
ということ。
なので、自分を変えたいというモチベーションに一番強くつながるのは”深い恥”の気持ちということですね。罪悪感も自分を変えるモチベーションに若干はつながりますが、過去の行動を償いたいという気持ちが一番強く、それが自分を変えるモチベーションを弱めてしまっているようです。
実験2:恥と後悔
2つ目の実験では53人を対象に
- 深い恥
- 浅い恥
- 罪悪感
- 後悔
と後悔を追加しています。さらに、先ほどの実験では1人に1つの感情を割り当てたのに対して、2つ目の実験では全員に4つの感情を思い出してもらって、自分を変えたいモチベーションが高まるのかを測定しています。
結果
それで結果を見てみると
- 深い恥の感情だけが自分を変えたいモチベーションを予測できた
- 後悔はなかったことにしたい気持ちと過去の行動を償いたい気持ちの両方につながっていた
ということ。
なので2つの研究をまとめると
- 深い恥 → 自分を変えたいというモチベーション or なかったことにしたい
- 浅い恥 → なかったことにしたいという気持ち
- 罪悪感 → 過去の行動を償いたいという気持ち
- 後悔 → なかったことにしたい or 過去を償いたいという気持ち
ということですね。唯一自分を変えたいモチベーションにつながるのは自分自身を恥じる気持ちですが、自分を変えるハードルが高かったりして実際に行動まで至らないと”なかったことにしたい”という弱い気持ちになってしまうようです。
まとめ
本稿では「恥は自分を変えるモチベーションになるのか?」についてお話ししました。
ポイントをまとめると
- 恥の中でも自分を悔い改めるような深い恥なら、自分を変えるモチベーションになる
- 浅い恥や罪悪感、後悔は似たような気持ちではあるが、自分を変えるモチベーションにはならない(しかし、償いのモチベーションにはなる)
ということです。
リアプレイザルといって、ネガティブな感情は無理に抑制しようとするよりも、ポジティブに捉え直してうまく付き合っていく方が賢明だったりします。私も昔の失敗などの恥ずかしい気持ちを思い出してしまうこともありますが、自分を変えるモチベーションとして有効活用してあげると良いのかもしれませんね。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]