ネガティブ感情を活用してチームを一致団結させることもできるという研究
楽しそうな人や幸せそうな人を見ることで、なんだか自分の気持ちもポジティブになることがあると思います。ポジティブな感情は周りに伝染するもので、楽しさや嬉しさを共有するチームは、一体感が向上して仕事のパフォーマンスも上がるんですね。
それでは、真逆のネガティブな感情ではどうなのか?
周りに怒っている人やイライラしている人がいると、自分の気持ちもなんだかネガティブになってしまうもの。怒りっぽい上司が一人いるだけでチームのモチベーションが低下したりと、ネガティブな感情はチームの輪を乱してしまいます。
しかし、よくよく考えてみると、ときにはネガティブな感情はチームの一体感につながることもある。どんな時かといえば、敵チームにバカにされた怒りでチームが一致団結するときとかですね。
そこで、本稿では
- ポジティブな感情やネガティブな感情はチームの一体感とパフォーマンスにどう影響するのか?
を調べてくれたワシントン大学らの研究(*1)を見ていきましょう。
ネガティブな感情とチームの一体感
ワシントン大学の研究では
- ポジティブな感情はいつもチームの一体感を向上してくれるもの
- 一方でネガティブな感情は、時と場合によってプラスにもマイナスにも働くもの
という考えです。
それで、どんなときにネガティブな感情がプラスに働くのか?を確かめるために、この研究では
- ネガティブな感情の発生源
チームの内側でネガティブな感情が発生しているのか?
それともチームの外側にある原因でネガティブな感情が発生しているのか? - チームの構成
一時的に作られた一回きりのチームなのか?
これからも継続して付き合っていくチームなのか?
の2つを分析の対象にしています。分析の手法としては、39件(2799人)の先行研究のデータをメタ分析でまとめてくれています。
ポジティブな感情とチームの一体感
まず最初にポジティブな感情の効果を見てみると
- ポジティブな感情が高いチームは、一体感が強く、パフォーマンスも高かった
- この関係はチームの内側で発生したポジティブな感情でも、チームの外側で発生したポジティブな感情でも得られた
- また、この関係はチームの構成が一時的なチームであっても、持続的なチームであっても得られた
ということ。
なので、基本的にポジティブな感情はどんなときでもチームにプラスに働くということですね。チームの外で起きたポジティブな感情でもプラスに働くので、景気が良くなってきたとかの嬉しいニュースがあるだけでも、チームの一体感は向上するかもしれませんね。
ネガティブな感情とチームの一体感
次にネガティブな感情の効果を見てみると
- チームの内側で発生したネガティブな感情は、チームの一体感とパフォーマンスを低下させた
- チームの外側で発生したネガティブな感情は、チームの一体感とパフォーマンスを向上させた
ということ。
面白いことにネガティブな感情の発生源で真逆の効果になっています。なので、チーム内のいざこざからくるネガティブな感情はちゃんと解消した方がよく、景気が悪くなっているみたいなチーム外の要因のネガティブな感情は逆に一致団結するのに使えるということ。
さらに、チームの構成による違いを見てみると
- 一時的なチームでは、ネガティブな感情はチームの一体感を向上させた
- 持続的なチームでは、ネガティブな感情はチームの一体感を低下させた
ということ。
チーム構成によっても効果は全くの逆になっています。おそらく一時的なチームはまだ一体感が低いので、最初にチームのアイデンティティを形成するのにネガティブな感情が役に立つのでしょう。逆に持続的なチームでネガティブな感情が蔓延してしまうと、チームがバラバラになってしまうので特に注意しましょう。
まとめ
本稿では「ポジティブ感情・ネガティブ感情とチームの一体感」についてお話ししました。
ポイントをまとめると
- ポジティブな感情は基本的にはどんな場合にも、チームの一体感とパフォーマンスを向上してくれる
- ネガティブな感情は、原因がチームの外部にある場合と、一時的なチームの場合には一体感とパフォーマンスの向上につながる
- 逆にネガティブな感情がチーム内部で発生した場合や、持続的なチームでは、一体感とパフォーマンスの低下につながってしまう
ということ。
ネガティブな感情も外部で発生した場合には、チームの一体感の向上のために活用していきましょう。もちろんポジティブな感情もチームにとっては大切ものなので、ずっとネガティブ続きにならないように注意は必要です。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]