科学的に効果のあるストレス軽減方法10選(前編)
人間関係のストレスや、仕事のプレッシャーから来るストレス、生活習慣の乱れからくるストレスなど、普段の生活の中では色々とストレスを抱えてしまうものです。そして、ストレスを溜め込みすぎてしまうと、うつや不安症などの深刻なメンタルの不調につながってしまうので、ストレスは適宜発散していく必要があります。
そこで本稿では、アテネ大学の論文(*1)を参考に、科学的に効果のあるストレスへの対処法を10個を紹介していきたいと思います。この手法は運動や喫煙のようなハードなものでなく、1分〜20分程度でできるような比較的簡単なストレス対処テクニックになっています。
ストレス対処法
①漸進的筋弛緩法
名前を見るとなんか難しそうに見えますが、やることは簡単で「筋肉に力を入れる→力を抜いてリラックス」を繰り返すだけです。やり方のポイントとしては
- 目をつぶって、10秒力を入れて20秒リラックスを交互に繰り返す
- 脚、お腹、胸、腕、顔に分割して、各部位ごとに3セットずつ行う
- 筋肉の緊張と緩和を通して、自分で緊張をコントロールしている感覚を掴む
ということです。
漸進的筋弛緩法は科学的にちゃんと効果が確認されていて
- コルチゾール(ストレスホルモン)が低減した
- 不安が軽減した
- 血圧と心拍数が低下した
- 頭痛が軽減した
- 睡眠も改善した
という良い効果がたくさん確認されています。
②自律訓練法
自律訓練法は、想像力とセルフトークで体をリラックスモードに入れる方法です。やり方としては、椅子に座るか寝っ転がった状態で目を閉じて、次の6つのステップを心の中でつぶやきながらイメージしていきます。
- 手足が重い
(右腕→左腕→右脚→左脚→両腕→両脚→両腕両脚) - 手足が温かい
(右腕→左腕→右脚→左脚→両腕→両脚→両腕両脚) - 心臓が静かに脈打っている
- 呼吸が楽になっている
- お腹が暖かい
- 額が涼しい
この方法の効果としては
- 緊張の緩和
- 頭痛の軽減
- 睡眠障害の改善
- うつや不安症の改善
に効くことが分かっています。
③リラックス反応
ストレスを受けるということは、脳の特定の部位にストレスの刺激が加わっています。リラックス反応は、他の刺激を繰り返して脳に与えることで、ストレス反応の刺激を追い出してしまおうというものです。やり方としては
- 決まった動作や決まった言葉を10分〜20分繰り返す
- 同じ動作と同じ言葉をひたすら繰り返すことに集中して、思考がぶれないようにする
というものです。
この方法の効果としては
- 血圧が改善しリラックス効果がある
- 短期的に実践するだけで遺伝子の発現まで変わり、長期的な改善効果が期待できる
ということが分かっています。
④バイオフィードバック
この方法は直接的なストレス低減法でなく、ストレスに気づく方法になります。この手法の特徴としては
- 血圧や心拍数、呼吸の状態、筋肉の緊張状態、脳波などをデバイスでモニターしてフィードバックすることで、普段感じているストレスに気づかせてあげる
- 自分のストレスの変化に気づくようになると、ストレスへの意識が変わり、行動の変化が促進される
といったものです。この手法は
- 血圧のコントロール
- 頭痛の治療
- 2型糖尿病の治療
- 心臓病の治療
などでも効果があることが確認されています。
最近ではApple Watchなどのデバイスで心拍数は簡単にモニタできるようになっているので、そういうデバイスを活用してみるのも良いでしょう。
⑤誘導イメージ療法
この手法も想像力を使って体をリラックスさせるタイプの手法です。この手法のやり方としては
- 自分がリラックスして安心している状態をイメージする
- 五感(視覚、触覚、味覚、嗅覚、聴覚)や運動感覚を使って、リラックスしている自分はどんな感覚を感じているのかを具体的にイメージする。
- 時間は1日に10分程度
というものです。自分がリラックスしている状態をイメージすることで、生理的にリラックス状態になったり、その健康的なイメージに近付くような行動の変化が促進できます。
この方法の効果としては
- ストレスの低減
- 痛みや不安の軽減
- 禁煙の推進
などが確認されています。
まとめ
本稿では、「科学的に効果のあるストレス軽減方法10選(前編)」として、5つのストレス低減方法を紹介しました。
- 漸進的筋弛緩法
- 自律訓練法
- リラックス反応
- バイオフィードバック
- 誘導イメージ療法
続いて後編では残りの5つを紹介していきます。
[参考文献]
*1 : Stress Management Techniques: evidence-based procedures that reduce stress and promote health