自制心に限界はないと考える方が、目標の達成率が上がるという研究
セルフコントロール(自制)とは、短期的な誘惑に負けずに、長期的な目標達成のための行動を選択することです。例えば、ダイエットを成功させるために、目の前にあるケーキの誘惑を我慢する力のことですね。
目標の達成には自制心が必要不可欠なわけですが、自制心を持続的に発揮していくためには、そもそも自制心がどういうものかという根本的な認識を正しく持つことが大切になります。
そこで、本稿では、
- 目標の達成率を高めるための自制心の捉え方のポイント
について調べてくれた香港大学らの研究(*1)を見ていきましょう。
自制心に上限はあるのか?
自制心を語る上で大切なのは、自制心に上限があるのか?です。
例えば、1日に使える自制心が100だとして、自制心を使う度に自制心が100→90→80…とすり減っていって、最終的に疲れ果てると誘惑に負けてしまうというのが自制心の上限の考え方です。心理学の研究でも、ニンジンをゴリゴリ食べるタスクで自制心を使わせるとその後に誘惑に負けやすくなってしまうとか、ブドウ糖を摂取すると自制心が少し回復できるとか、色々と実験がされています。
一方で、自制心には上限がないという考え方もあります。世の中を見渡してみると、一流のスポーツ選手のようにストイックに自分を追い込むことができる人がいます。そうすると、自制心にはそもそも上限なんてなくて、自分の意志力次第でどこまでも自制はできる。あるいは、自制心は筋肉のように鍛えられるもので、上限を100→110→120…と向上していけるという説も考えられます。
そこで、自制心は上限があると考えるのが良いのか?自制心には上限なんてないと考えるのが良いのか?について香港大学の研究が実験を行っています。
自制心の考え方が目標設定と目標達成をどう変えるのか?
香港大学の研究では、学生を対象に3つの実験を行っていて、
- 自制心は固定的で上限があると考えた場合
- 自制心は鍛えられるもので上限はないと考えた場合
の考え方の違いで、
- 設定する目標の数や難易度は変わるのか?
- 目標の達成率は変わるのか?
を追跡調査して分析しています。
結果:自制心の考え方と目標設定
まず最初に目標設定の違いの結果を見てみると、
- 自制心は固定的で上限があると考えた人は、立てた目標の数が少なかった
- 自制心には上限がないと考えた人は、立てた目標の数が多かった
- 目標の難易度は両者で違いはなかった
ということ。
自制心は鍛えられて上限がないと考える人の方が目標を多く立てています。上限がないと考える人は、自分は将来的にもっと高い自制心を発揮していけると見込むので、より多くの目標をこなせると思うのでしょう。
ただし、目標を多く立てても達成できなければ意味がないので、次に目標の達成率について見ていきましょう。
結果2:自制心の考え方と目標の達成
自制心の考え方と目標の達成率を見てみると、
- 自制心が固定的で上限があると考えた人は、立てた目標が少なかったのに、目標の達成率も悪かった
- 自制心には上限がないと考えた人は、立てた目標が多かったが、目標の達成率も良かった
ということ。
なので、考え方としては「自制心は鍛えることができて、上限なんてない」と思う方がお得ですね。
ちなみに、自制心には上限があると考える人にも救いはあって
- 自制心に上限があると考える人でも、自己効力感が高い人なら目標達成率はよかった
ということ。つまり、自分が使える自制心は限られているけど、自分なら上手くできるという自信があれば目標達成率は高まるということです。
まとめ
本稿では「目標達成率を高める自制心の捉え方」についてお話ししました。
ポイントをまとめると、
- 自制心が固定的で上限があると考えると、目標の数も減ってしまうし、目標達成率も悪くなってしまう
- 自制心は上限なく鍛えられるものと考えると、目標の数が増えるし、目標達成率も向上する
ということ。
筋トレと同じで、自制心がすぐにムキムキになることはなく、育つのに時間がかかるかもしれません。その場合は途中で何回も誘惑に負けることにもなりますが、あまり引きづらないようにして、”自制心を少しずつ育てていこう”と前向きに気持ちを切り替えていきましょう。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]