自分の選択と他人の選択。よりリスキーになるのはどっち?
人生は選択の連続で、キャリアの選択から、今日の昼飯の選択まで、1日で何百回と選択をしていることでしょう。心理学や経済学では選択に関する研究もあり、人はどんなふうに選択そしてしまうのか?そして、どうすれば良い選択ができるようになるのかが研究されています。
しかし、ウィスコンシン大学の研究(*1)が言うには、
- これまでの選択の研究は自分一人の選択を扱うものが多かった。しかし、現実世界では選択に他人(特に近しい人)が関係してくることも多い。そして、自分の選択と他人が絡む選択では、選択の仕方が変わってくるものだ。
ということです。
自分一人だったらタバコを吸っていたけど、家族のためを思ったらタバコを止められたとか。友人と一緒にいると、リスクを顧みずに行動してしまうとか。確かに一人の選択と他人が絡む選択は違いがありますよね。
そこで、この研究では、
- 他人の選択ではリスキーな選択をしやすくなるのか?
という点についてまとめてくれていましたので、本稿ではその中身を見ていきましょう。
自分の選択と他人の選択にはどんな違いがあるのか?
自分のみの選択と他人が絡む選択では、いくつかの違いがあることで研究によりわかっています。
- 他人が関係すると良い面に注目するようになる
選択に他人が関係すると、選択を選ぶ基準としてポジティブな理由を多く並べるようになり、ネガティブな理由は少なくなることが分かっています。そのため、現実的な選択肢よりも理想的な選択肢を選びやすかったり、保守的な選択肢よりも変化をとる選択肢を選びやすくなります。
- 他人のことは軽く考えてしまう
他人に何かを相談されても、それを自分自身で行うときほど真剣には考えられないでしょう。また、自分のお金は慎重に使うのに、会社や他人のお金となったらできるだけ贅沢したりと、人は他人のものの価値を自分のものよりも低く見積もる傾向もあります。
- 責任が生まれると話はまた別
自分の子供に関する重要な選択など、他人のことでも自分に責任が生まれる選択では逆に重く考えることもあります。
という感じです。
よりリスキーになるのはどっちか?
よりリスキーな選択肢を選びやすくなるはどちらかというと
- 全体的には他人が関係する選択の方が、ほんの少しだけリスキーになる傾向がある(d=0.105)
ということがメタ分析により分かっています。しかし、ばらつきも大きいということで、他人が関係するとよりリスキーになりやすい選択には何らかしらの特徴がある可能性が高いようです。
ある研究では、プラスの選択(どっちを得るかの選択)かマイナスの選択(何かを失う可能性がある選択)という選択の特徴を考慮しています。その結果を見てみると
- プラスを選択で他人が関係すると、自分一人のときよりもリスキーな選択を選びやすくなった(d=0.38)
- マイナスの選択で他人が関係すると、逆に自分一人のときよりもリスキーな選択を選びにくくなった(d=−0.32)
ということです。やはり、損失が出るような責任のある選択をする時には、他人に関する選択でもリスキーな選択はできないみたいですね。
まとめ
本稿では「自分の選択と他人の選択のどちらでリスキーになりやすいか」についてお話ししました。
ポイントをまとめると
- 何かを得る方向のプラスの選択なら、他人が関係するとよりリスキーな選択を取りやすくなる
- 何かを失う可能性のあるマイナスの選択なら、他人が関係すると逆にリスキーんな択を避けるようになる
ということ。
選択に他人をまぜることで、リスクをとって新しいことに挑戦する選択がしやすくなったりするかもしれませんね。一方で行きすぎて無駄にリスクを取ってしまうことにも注意が必要かもしれません。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]
*1 : Decision Making For Others Involving Risk: a Review and Meta-Analysis