相手を説得するのに、強い証拠を示すのが逆効果になってしまうときとは?

最終更新日

Comments: 0

相手を説得するためには、信頼度の高い情報を提示するのが有効です。「自分の周りの人はみんなそう言っています」という弱い証拠よりも、「〇〇大学の専門家がそう言っています」とか、「1000人を対象にした調査結果でそう出ています」という強い証拠がある方が、ずっと説得力が上がりますよね。

しかし、強い証拠が常に説得に有効かというと、実はそうでもないようです。この種の問題を取り上げたインディアナ大学の研究(*1)によると

  • そもそもの伝えたいメッセージが弱い主張の場合には、強い証拠は逆に説得力を落としてしまう!

という面白い結果が得られているんですね。本稿ではこの研究を参考に、説得における情報の信頼度の使い分けを学んでいきましょう。

実験:情報の信頼度と説得力

インディアナ大学の研究(*1)では、合計で175人の大学生を対象にした2つの実験で、情報の信頼度が説得力をどう向上するのかを調べています。

実験では、新しい洗剤を推進するメッセージを読んでもらっていて、メッセージには主張の強さで2つのタイプが用意されています。

  • 強い主張のメッセージ
    新しい洗剤はリン酸塩を使うことで、他の製品よりもコストがずっと低く、洗浄力はずっと高いです。この洗剤を使うと洗濯の頻度も減らすことができるため、衣服を長持ちさせることもできます。
  • 弱い主張のメッセージ
    新しい洗剤は大量生産により従来の製品よりも価格を抑えています。この製品は幅広い衣服に使えますし、匂いもありません。

本当のメッセージはもっと長いですが、雰囲気はこんな感じです。そして、これらのメッセージの根拠として、情報の出どころも2つ用意しています。

  • 信頼度の高い情報源
    製品を評価する消費者団体によって作られたメッセージだという
  • 信頼度の低い情報源
    洗剤会社のパンフレットに載っていたメッセージだという

主張の強さが2通り、情報源の信頼度が2通りで、合計4通りの組み合わせで説得力がどのように変わるかを確かめています。

結果:信頼度が説得力と上げるときと下げるとき

結果を見てみると、まず全体的な傾向として

  • 主張の強いメッセージの方が説得力が強く、製品に対して賛同が得やすかった
  • 情報源の信頼度が高い方が、メッセージが信頼されやすく、メッセージを受けた人が製品に対する自分の意見に自信を持っていた

ということ。つまり、主張の強さと情報の信頼性は、個別で見れば説得力を上げてくれるという結果になっています。

問題はこの次で、主張の強さと情報の信頼度の組み合わせ効果を分析した結果を見てみましょう。

  • 主張の強いメッセージに対しては、高い信頼性の情報源を示す方が説得力が高まった
  • 主張の弱いメッセージの場合には、高い信頼性の情報源は逆効果で、低い信頼性の情報源の方が説得力が高かった

と、情報の信頼度はプラスになることもあれば、マイナスになってしまうこともあることが発見されています。これをグラフで見てみると、

こんな感じで、強い主張の実線のグラフでは、信頼度が向上するほど右上がりに説得力も向上しています。しかし、弱い主張の点線のグラフでは、信頼度が向上すると、右下がりに説得力が低下してしまっています。

もちろん、一番説得力が高いのは強い主張+高い信頼性の情報の組み合わせ。しかし、説得の中にはデメリットもあって強く主張できないものもあります。こうした場合には、高い信頼性の証拠は若干逆効果で、弱めの信頼性の情報を提示した方が説得力は上がるということですね。

まとめ

本稿では「情報の信頼性と説得力」についてお話ししました。

ポイントをまとめると、

  • ポジティブな強い主張をするときは、確かな信頼性の情報を提示すると説得力が増す
  • ネガティブな情報も含む弱い主張をするときには、強い信頼性の情報は逆効果で、弱めの信頼性の情報を添える方が説得力が増す

ということです。

強い証拠が逆効果になってしまうメカニズムはよくわかっていませんが、主張が弱いのに証拠の信頼性だけ強いと、どこか違和感が出て納得感が薄れてしまうのかもしれませんね。ということで、主張の強さに応じで、どのくらいの情報の信頼性を主張するのかを使い分けるようにしましょう。

[参考文献]

*1 : When credibility attacks: The reverse impact of source credibility on persuasion

Naoto

シェアする

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

コメントする