スキルの習得を速めるための2つの豆知識(完璧主義、他人に教えるつもり)

バスケットボールのシュート、楽器の演奏、キーボードの高速タイピングなど、生きていると趣味から仕事まで様々なスキルが必要になります。こうしたスキルの習得は、知識を学ぶだけで足りず、体に感覚として馴染ませる必要もあるので、なかなか時間がかかるものです。
そこで本稿では、スキルの習得に役立つ豆知識として、
- 完璧主義になるとスキルの習得が遅れてしまう
- 他人に教えるつもりで学ぶとスキルの習得が速くなる
ということを調べてくれた2つの研究を見ていきましょう。
完璧主義とスキルの習得
オランダの研究(*1)では、スキルの習得に対する完璧主義の効果を実験により調べています。どんな実験かというと、
- 医学部の学生30人が対象
- 手術用の専門の機器でワイヤーを掴んで、そのワイヤーをいくつかの穴に通す訓練を実施
- 30回の訓練でどれだけワイヤーの長さ(穴を通す効率)とタスクの完了時間が成長するのかを測定
- 完璧主義の度合いも測定がされて、スキルの習得との関係を分析
と言った感じです。手術は手先を正確に動かす必要がある、高度なスキルとも言えるでしょう。
結果:完璧主義とスキルの向上の関係とは?
早速結果を見てみると、
- タスクの完了時間は完璧主義の影響は受けなかったけど、ワイヤーを短く効率よく通すスキルは完璧主義が低い人ほど伸びていた
ということ。完璧主義は仕事などで悪く作用することがありますが、スキルの習得にも悪い影響があるみたいですね。
ちなみに、この研究では完璧主義にも良いケースと悪いケースの2種類があると考えています。
- 高みを目指す完璧主義
自分ならもっと上手くできるはずだと、高い基準を目指すタイプの完璧主義。このタイプはスキルの習得には役に立つと考えられる。 - 失敗が怖い完璧主義
完璧じゃなければ他人から悪く思われてしまうという不安が原動力の完璧主義。このタイプの完璧主義はスキルの習得には悪い効果があると考えられる。
つまり、「失敗してしまうんじゃないか」とか、「他人から何か指摘されてしまうんじゃないか」とか、自分に批判的になってしまう完璧主義は成長にとってマイナスになってしまうということです。
他人に教えるつもりがスキルの習得を速くする
続いては、他人に教えるつもりでスキルを学ぶを成長が速くなることを実験した研究です。この実験の特徴は
- 82人を対象にゴルフのパターの練習をしてもらう
- 半分には「今日学んだことを明日新人に教えてもらいます」と言って、もう半分には「今日学んだ結果を明日テストします」と言う
- 翌日には「新人が来なかったから、代わりにテストをします」と言って、両方のグループでパターのテストを実施する
- パターのテストでは、半分の人には「自分のベストを尽くして」と言って、もう半分の人には「テストの結果は全て記録され、ゴルフのプロに判断されます」とプレッシャーをかける
と言う感じです。
結果:他人に教えるつもりとスキル向上
結果を見てみると
- テストされると言われた人よりも、他人に教えるように言われた人の方が、パターのテストの結果が良かった
- 他人の教えるつもりで練習した人は、「足は肩幅に開いて」みたいな、パターを説明する知識が豊かになっていた
ということ。他人に教えるつもりになると、自分の中で知識をまとめながら練習するので、学習効率が上がるということですね。
一方でプレッシャーを高めた場合のテスト結果を見てみると、
- プレッシャーが高い状態では、他人の教えるように言われた人も、実力がうまく出せなくなって、テストされると言われた人と同じくらいの成績に落ちた
ということです。
なぜこんなことが起きてしまうのか?それは、他人に教えるつもりで練習すると、説明の知識が増えるのですが、プレッシャーが高い状況では頭がうまく回らなくなって知識通りに動けなくなってしまうからなんですね。なので、他人に教えるつもりで練習した後は、プレッシャーの下でも実践できるように、その知識を体に馴染ませる必要があるのかもしれませんね。
まとめ
本稿では「スキル習得を速めるための豆知識2つ」についてお話ししました。
ポイントをまとめると
- 失敗してはいけないというネガティブな完璧主義は、スキルの習得を遅くしてしまう
- 他人に教えるつもりで学ぶと、説明するための知識が増えて、より速くスキルを習得できる(ただしプレッシャーの下ではこの知識がうまく発揮できないので注意)
ということ。
スキルを習得する時には、失敗を恐れずにどんどん挑戦することと、他人に教えるように知識を頭の中で整理することを心がけると良さそうですね。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]
*1 : Perfectionistic Concerns are Detrimental to Skill Learning for Minimally Invasive Surgery