仕事の情熱はどんな性格の人が高まりやすいのか?の研究
仕事の情熱を感じられることは、生産性という意味でも、働きがいという意味でも大切なことです。しかし、ギャラップの調査によると、仕事に情熱を感じている人は、世界でわずか13%しかいないということ。思っていたよりもずっと低い数値でびっくりしました。
そこで本稿では、
- 仕事のタイプと社員の性格面が仕事の情熱にどのように関係しているのか?
を調べてくれたミュンヘン工科大学らの研究(*1)を参考に、情熱を感じている13%の人にはどんな特徴があるのかを見ていきましょう。
性格 × 仕事のタイプ × 仕事の情熱
この研究では824人を対象に、オンラインで情熱や性格に関するデータ取得を行なっています。
社員の性格としては、ビッグファイブ性格分析から特に情熱に関係の深い次の3つの項目が測定されています。
- 誠実性
勤勉で真面目にコツコツと働く気質 - 神経性傾向
神経質でメンタルが不安定な気質 - 協調性
他人に協力したり、チームのルールを順守する気質
そして、仕事のタイプの測定としては、 RIASECという6種類の仕事の分類方法が使われて、特に研究的な仕事と企業的な仕事の2つが情熱との関係の分析対象になっています。
- 現実的な仕事
機械を扱ったり、体を動かしたりする仕事 - 研究的な仕事
物事を考えたり、調査したり、分析したりする仕事 - 芸術的な仕事
音楽や小説、芸術などに関わる仕事 - 社会的な仕事
接客をしたり、世話をしたりと人と関わる仕事 - 企業的な仕事
何かを企画したり、組織をマネジメントしたりする仕事 - 習慣的な仕事
ルールに従って仕事をしたり、決まったフォーマットで文章を作成したりする仕事
最後に情熱は2つのタイプに分けられていて、
- 調和的な情熱
その仕事が自分に合っていて、楽しく仕事に打ち込む対応の情熱 - 強制的な情熱
やらなければいけないプレッシャーや、出世や昇給のために仕事に打ち込むタイプの情熱
となっています。基本的には調和的な情熱は良い情熱で、強制的な情熱は離職率を高めてしまうなどの悪い効果のある情熱になっています。
結果1:性格と仕事の情熱
上記のデータの分析結果からわかったことは、まず最初に
- 誠実性が高い人ほど、調和的な情熱が高く、強制的な情熱も高い傾向があった
- 神経性傾向は仕事との情熱とは関係がなく、誠実性と組み合わせっても情熱をさらに上げることもなかった
- 協調性も仕事との情熱とは関係がなく、誠実性と組み合わせっても情熱をさらに上げることもなかった
ということ。情熱に大切なのは何よりも「真面目にコツコツ頑張る誠実性」ということがわかります。神経性傾向と協調性は全く意味がないのかというわけではなく、仕事のタイプによって効果が現れることがわかっています。ですので、次には仕事のタイプの影響を見てみましょう
結果2:仕事のタイプと情熱
仕事のタイプを分析した結果として、まず企業的な仕事を見てみると、
- 企業的な仕事では、神経性傾向が高い人ほど、強制的な情熱が高かった
- 企業的な仕事では、誠実性が高くて協調性が低い人ほど、強制的な情熱が高かった
- 企業的な仕事では、誠実性が高くて神経性傾向が低いほど、調和的な情熱が高かった
ということ。企業的な仕事では組織で働く気質が強いので、組織の細かいルールや人間関係に神経質になったり、うまく協調できないときに、調和的な情熱が失われて、強制的な情熱が高まってしまうようですね。
次に研究的な仕事では、
- 研究的な仕事では、神経性傾向が高いほど、調和的な情熱が高かった
- 逆に研究的な仕事でない場合は、誠実性が高く、神経性傾向が低い方が調和的な情熱が高かった
ということ。研究的な仕事のみで、神経性傾向が情熱にとってプラスになっています。研究的な仕事では、論理的に批判したりする思考が必要になるので、それが神経性傾向とあっているのかもしれませんね。
まとめ
本稿では「仕事のタイプ・性格と仕事の情熱」についてお話ししました。
ポイントをまとめると、
- 誠実性は情熱にとって最も大切な性格の要素
- 企業的な仕事では、神経性傾向が低く、協調性は高い方が情熱にとって良い
- 研究的な仕事では、神経性傾向が高い方が情熱にとって良い
ということ。
仕事に情熱を感じている人はわずか13%ということで、自分の性格と仕事のタイプのマッチングは情熱を高めるのに必要な観点なのでしょう。チームにあった性格の人を選んだり、その人の性格にあった指導をしたりと工夫することでも、仕事の情熱は向上できるかもしれません。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]