肥満な人は午前と午後のどっちに運動するのが良いのか?
本稿のテーマは
- 朝に運動するのと、夜に運動するので、どちらが代謝の改善が大きく、痩せやすいのか?
で、この点について調べてくれたマーストリヒト大学の研究を見ていきたいと思います。
サーカディアン・リズムと運動
人の体の中には、サーカディアン・リズムという体内時計のリズムがあって、体の状態はそのリズムに応じて変化します。
例えば、一番分かりやすいのは睡眠で、朝に目が覚めて夜に眠くなるのも、体の中で起きるメラトニンなどの生理現象が24時間のリズムで変動しているからです。実は夜更かしをしてしまうのも、スマホのブルーライトなどの刺激で、この体内時計のリズムが乱れてしまうことが原因なんですね。
そして、サーカディアンリズムは睡眠の周期だけでなく、それ以外にも様々な変化を体に引き起こします。その中でも本稿で注目するのは代謝の変化。朝起きたばかりは体温が低くて代謝も低いのに対して、日中にかけて体温と一緒に代謝も上昇してきていきます。
そして、ピークを迎えるのが夕方あたり。このときには身体もあったまって、より活動に適した状態になっています。朝と夕方の体の状態が違えば、当然運動のパフォーマンスや健康効果も変わってくることが想定できて、マーストリヒト大学はその違いを実験してくれています。
実験:朝と夕方の運動で代謝の改善に違いは出るのか?
マーストリヒト大学の研究では32人を対象に、朝の運動と夕方の運動の効果の違いを測定しています。この実験の特徴としては
- 12人は朝(8時〜10時)に運動して、20人は夕方(15時〜18時)に運動している
- 期間は12週間で、週2回の有酸素運動(30分)と、週1回の筋トレを行う
- 参加者の体重は平均で95kgで肥満体型の人が対象
となっています。
結果:
実験の結果として分かったことは、
- 夕方に運動した人の方が、インスリン感受性が大きく改善していた
(インスリン感受性が低いと肥満や糖尿病になりやすい) - 夕方に運動した人の方が、血中のグルコースレベルが改善していた
- 夕方に運動した人の方が、運動のパフォーマンスも高かった
- 夕方に運動した人の方が、脂肪の減少量も大きかった
という感じ。
どの結果でも夕方の運動の方が有利になっていて、夕方に運動する方が健康効果が大きいと言えるでしょう。ただし、今回の実験対象は肥満体型の人なので、アスリートのような上級者でどうなるかは微妙なところです。
まとめ
本稿では「朝の運動と夕方の運動はどちらが良いのか?」についてお話ししました。
ポイントをまとめると、
- 夕方の運動の方が、インスリン感受性などの代謝の改善効果が大きく、脂肪の減りも大きい
ということ。
夕方の方が健康効果は大きいということですが、朝の運動もちゃんと効果はあります。朝の方が習慣にしやすければ、無理に夕方に変える必要はないでしょう。朝の運動は脳を活性化して、朝からシャキッと働くのに良いとか効果もあり得るので、そこら辺は自分のライフススタイルに合わせて選ぶと良いではないでしょうか。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]