ジョブ・クラフティングは忙しい人ほど効果が高いという研究
ジョブ・クラフティングとは自分の能力や個性に合った形に仕事を変えることで、これにより働きがいや仕事のパフォーマンスが向上することが分かっています。
ジョブ・クラフティングに関しては以前の投稿でも取り上げていて
といったことをまとめてあります。
本稿で注目するのは、ジョブ・クラフティングの効果ややり方でなく、ジョブ・クラフティングの効果を得やすい人の特徴です。この点について
- 仕事の負荷が高い人と低い人で、ジョブ・フラクティングの効果は変わるのか?
という切り口を調べてくれたブリュッセル自由大学らの研究(*1)を見ていきましょう。
3種類のジョブ・クラフティング
ブリュッセル自由大学らの研究ではジョブ・クラフティングを次の3種類に分けています。
- 強みのジョブ・クラフティング
自分の強みを活かすように仕事を変える方法。例えば、自分は他人の気持ちに共感するのが得意だから、接客で活かしてみようとか。
- 興味のジョブ・クラフティング
自分の興味を仕事に取り入れる方法。例えば、自分は音楽が好きだから、お客をリラックスさせるのに音楽を使ってみようとか。
- 成長のジョブ・クラフティング
自分が成長できる機会や自分のポテンシャルを感じられる機会を増やす方法。例えば、将来AIに関する仕事がしたいから、プログラミングを使った仕事をしてみようとか。
実験:ジョブ・クラフティングの効果と仕事の負荷
この研究では99人の社会人を対象に、ジョブ・クラフティングを高めることで、仕事へのエンゲージメントが高まるのかを実験しています。この実験のジョブ・クラフティングの高め方としては、
- 自分の仕事を内容を全て書き出してみる
- それぞれの仕事に対して、昔からやっている仕事か、最近増えた新しい仕事かを書き込む。さらにその仕事にかける時間が昔と比べて増えているのか減っているのかを書き込む
- 自分の強み・興味・達成したいことを書き出し、それらと書き出した仕事がマッチできないかを考える
- 3でマッチした中から、もっと自分のあった形に変えられる仕事を3つ選ぶ
- 次の3週間でどのように仕事や行動を変えるかの目標を立てる
という感じで実践しています。
そしてこの研究のポイントとして仕事の負荷も測定もされていて、ジョブ・クラフティングの効果にどのように影響するのかまで分析されています。
結果1:3つのジョブ・クラフティングの効果
分析の結果を見てみると、
- 強みのジョブ・クラフティングが高い人は、仕事への活力・献身・没頭の3つ全てが高かった
- 興味のジョブ・クラフティングが高い人は、仕事への活力のみが高かった
- 成長のジョブ・クラフティングは3つのどれとも関係がなかった
ということ。一番良い効果があるのは仕事に強みを活かすことで、活力・献身・没頭の全てが向上しています。成長のジョブ・クラフティングではこれといった効果は得られていませんが、長期的なキャリアの構築など他の面で重要になってくる可能性があるので、蔑ろにはしない方が良いでしょう。
結果2:仕事の負荷の影響
次に仕事の負荷の影響を見てみると、
- 仕事の負荷が低い人では、実験を通じてジョブ・クラフティングは特に高まっていなかった
- 仕事の負荷が高い人では、興味のジョブ・クラフティングが高まる効果が得られていた
ということ。
つまり、ジョブ・クラフティングは忙しい人の方が効果を得やすく、仕事の負荷が低い人ではあまり効果は得られていない結果になっています。ジョブ・クラフティングが高まると、強みを活かして仕事のパフォーマンスを向上したり、関心を高めてモチベーションを向上したりと、結果として仕事に対するリソースが増える効果があります。そのため、忙しくてリソースが足りない人ほど、ジョブ・クラフティングの効果の恩恵を受けやすいのかもしれないですね。
まとめ
本稿では「ジョブ・クラフティングと仕事の負荷」についてお話ししました。
ポイントをまとめると
- 強みのジョブ・クラフティングで仕事への活力・献身・没頭の全てが高まった。興味のジョブ・クラフティングでは仕事への活力のみが高まった。
- 仕事の負荷が低い人では、ジョブ・クラフティングを増やそうとしても、なかなか増えにくい
- 仕事の負荷が高い人ほど、興味のジョブ・クラフティングが増えやすく、ジョブ・クラフティングの効果が出やすい
ということ。
今回の研究結果では効果の大きい強みのジョブ・クラフティングが増やせていないのが課題として残ります。強みを活かすように仕事を変えるのは、仕事に興味を取り入れるよりも難易度が高いので、同僚や上司がサポートするなど、もっと強力にジョブ・クラフティングを推進しなければいけないのかもしれませんね。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]