SNSを使うと幸福度は低下してしまうは本当か?を長期的に調査した研究
ツイッターやフェイスブックなどのSNSは、コミュニケーションを促進する便利なツールである反面で、SNS依存などメンタル面に悪い効果があることも懸念されます。若い人がスマホに気を取られて、集中力が低下してしまうのもSNSのネガティブな効果の一つですね。
しかし、これまでのSNSの悪い効果を調べた研究では、SNSがメンタルを低下してしまうという研究結果もあれば、SNSが逆に人間関係を促進して幸福感を上げるといった研究結果もあります。本当のところどっちなのかがいまいちはっきりしていないんですね。
そこで、本稿では、
- SNSやインターネットを使う時間が長いほど、幸福感は低下してしまうのか?
- SNSやインターネットを使う時間が長いほど、うつの傾向は高まってしまうのか?
を9年の歳月をかけて長期的に調べてくれた研究を見てみましょう。
SNSの良い面と悪い面
SNSが幸福感やメンタルに作用するメカニズムには、良いメカニズムと悪いメカニズムのそれぞれが考えられます。
まずSNSが幸福感を低下してしまうパターンとしては、次の4つのメカニズムが考えられています。
- オンライン上でのやり取りに時間をかけると、現実世界での人間関係にかける時間が減ってしまって幸福感が低下する
- SNSで発信されている友達や知り合いの状況と自分を比較してしまい、劣等感を感じてしまう
- SNSを使っているときは、流れてくる情報を受け身になって読んでいるだけになってしまっている
- オンライン上では悪口や暴言などの誹謗中傷に遭いやすい
逆にSNSで幸福感が向上するパターンのメカニズムとしては次の3つが考えられています。
- SNSを使うことで人間関係を充実させることができるので、それが幸福感の向上につながる
- 自分が発信した情報に対して、「いいね」などのポジティブなフィードバックがもらえると幸福感が向上する
- SNSでコミュニケーションを取ると、SNSを使わない場合よりもコミュニケーションの量と質が向上する
実際の研究結果もポジティブな効果とネガティブな効果の両方の結果があるんですね。
実験:9年間の追跡調査
ヨハネス・グーテンベルク大学マインツでは、4,338人を対象に9年間の追跡調査を行なっています。測定は2年おきに行われていて
- 幸福感の変化
- うつの傾向の変化
- インターネットの使用時間の変化
- SNSの使用時間の変化
- テレビの視聴時間の変化
といったデータが取得されています。これらのデータから、インターネットやSNSの使用時間が、幸福感やうつの傾向に長期的にはどのように影響するのか?を分析したわけですね。
結果:
早速結果を見てみると、
- インターネットの使用時間が幸福感やうつの傾向に与える影響は、長期的にはほぼゼロだった
- SNSの使用時間が幸福感やうつの傾向に与える影響は、長期的にはほぼゼロだった
- テレビの試聴時間ではうつの傾向には影響しなかったが、幸福感は有意に低下していた。(ただし低下の程度はごく小さかった)
ということ。
意外なことにSNSやインターネットは、良い効果も悪い効果もあり、長期的にみればプラスマイナスゼロになるようです。もちろんSNSやインターネットには良い使い方と悪い使い方があるので、使用方法には注意した方が良いですが、普通に使う分には幸福感が低下する心配はしなくてよさそうです。
唯一悪い影響があったのはテレビの見過ぎということ。今回の研究では友人との人間関係に満足している人ほど幸福感が高いという傾向がわかっています。テレビはSNSと違って人間関係を促進はしてくれないため、幸福感の低下につながってしまったのかもしれませんね。
まとめ
本稿では「SNSは幸福感を低下してしまうのか?」についてお話ししました。
ポイントをまとめると、
- SNSやインターネットは長期的には、幸福感やうつの傾向に与える影響はほぼゼロ
- 一方でテレビの試聴は若干の幸福感の低下につながってしまう
ということ。
SNSで幸福感は低下しないということで、人間関係を充実させるコミュニケーションツールとしてうまく使えば良いでしょう。幸福感にとってはマイナスでなくても、SNSが気になって集中力が低下してしまうなどの他の悪い影響はあり得るので、そこら辺は気をつけた方が良いかもしれません。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]