努力をするほど疲れを感じない?関心が疲れを防ぐ心理学
勉強をしないといけないのにゲームをやってしまったり、難しい仕事を後回しにして簡単な仕事を優先してしまったりと、人はどうしても楽で簡単な方へと流されてしまうものです。難しくて努力が必要な選択は、それ相応に疲れてしまうものですから、報酬がもらえるなどの特別な理由がないと中々手がつかないわけですね。
しかし、疲れの感じ方はそのタスクへの関心の強さによって変わる側面もあります。例えば、全く興味のない数学の勉強では1時間でもぐったりと疲れてしまっても、自分が好きなサッカーの練習だったら何時間も夢中になれるかもしれません。そして、自分が関心のあることに対しては、自ら進んで努力をしていくことも多いでしょう。
そこで本稿では
- タスクへの関心の高さは、そのタスクへの努力を高め、疲れを軽減してくれるのか?
を調べてくれたカールトン大学の研究(*1)を見てみましょう。
タスクへの関心と努力
この研究では、数学のタスクを使って、関心の高さと努力・疲労感の関係を実験しています。
実験は四つ行われていて、どの実験でも参加者は次の二つのどちらかをタスクを選択することになります。
- 努力が必要なタスク
難しい数学の問題を解くタスク - 努力が不要なタスク
簡単な数学の問題を解くタスク。あるいは、テトリスで遊ぶとか、動画を見るといった誘惑のタスク。
これらのタスクの選択は1回のみでなく、時間内に何回も繰り返して行うことになります。数十分間にわたってこの選択を繰り返して、疲労感がどれだけ貯まるのかを実験したわけですね。
そして、努力の選択の傾向と疲労感に影響を与える要素として、
- 数学への関心の高さ
- 数学への自己効力感の高さ(自分は数学をうまく学べる自信の高さ)
の二つも測定がされ、その関係性が分析されています。
結果:タスクへの関心の効果とは?
実験の結果から分かったことは、
- 数学への関心が高い人ほど、努力が必要な難しいタスクを選ぶ確率が高かった
- 数学への関心が高い人ほど、テトリスや動画の誘惑を感じにくかった
- 時間が経過して疲労感が溜まるほど、難しいタスクを選ぶ頻度は低下していった
- 数学への関心が高い人ほど、感じている疲労感は低い傾向があった
ということ。ちなみに自己効力感はあまり関係がなかったようで
- 数学への自己効力感が高くても、難しいタスクを選ぶ確率は向上しなかった
- 数学への自己効力感が高くても、疲労感は軽減されなかった
という結果になっています。
つまり、これらの結果から分かることは、
- タスクへの関心が高い人ほど、自ら努力をする選択を選びやすいが、疲労感は逆に簡単な選択をした人よりも低下している
ということ。自分の好きなことだったら何時間もぶっ続けでできるように、関心の力は疲労感や努力に大きな影響を与えることが確認されたわけですね。
まとめ
本稿では「タスクへの関心と努力・疲労感」についてお話ししました。
ポイントをまとめると、
- タスクへの関心が高い人ほど、努力が必要な難しい選択を選びやすい
- しかも、タスクへの関心が高い人は、努力を多くしているのに、感じる疲労感は簡単な選択へ流された場合よりも低い
ということ。
テレビやYouTubeを見るみたいなついつい流されてしまう受け身な選択は、楽なように見えて意外と疲労感が溜まってしまうのかもしれませんね。疲労感を忘れるくらい没頭できることを見つけたり、目標を立てるなどして仕事や勉強への関心を高めるなどの工夫をすると、努力をしているのに疲れにくい強靭なメンタルに近づけるでしょう。
ただし、今回の研究は数十分間の実験での心理的な疲れの場合です。夜遅くまで働いて睡眠不足になってしまうみたいに、肉体的に疲労感が溜まってしまうとまた別な話になる可能性もあるので、健康には気を遣いましょう。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]
*1 : More Effort, Less Fatigue: How Interest Increases Effort and Reduces Mental Fatigue