お金のコントロール感は、貧乏よりも幸福感に強く影響するという研究
”お金があればもっと幸せなのに”は誰もが思うこと。心理学では本当にお金がある人ほど幸せなのかが研究されていますが、その傾向としては
- お金が足りない分には幸福感は低下してしまう傾向はある
- 十分に生活できるだけのお金があれば、それ以上お金が増えてもほとんど幸福感は向上しない
というような感じになっています。
本稿では、この貧乏と幸福感の関係について、
- 貧乏なことよりも、お金を自分でコントロールできている感覚がない方が、幸福感には大きく影響するのでは?
ということを調べてくれたハーバード大学らの研究(*1)を見てましょう。
貧乏とお金のコントロール感
お金が有り余って贅沢することはあまり幸福感を向上しない一方で、お金が足りないことは幸福感を低下してしまいます。なぜ貧乏な人は幸福感が低下してしまうのかというと、
- お金が足りなくて住居が転々としやすい
- 貧乏が理由で他の人との付き合いが悪くなり孤立しやすい
- アルコールやタバコなどに依存しやすい
などと貧乏は日常生活で様々なネガティブな問題を起こしやすいからなんですね。
一方でハーバード大学の研究は”お金のコントロール感 “にも注目していて、この意味は
- お金に関する問題や出来事を自分自身でコントロールして対処できているという感覚
となります。お金が足りなくて問題が起きたとしても、自分自身で問題をうまくコントロールして対処できているというポジティブな感覚を持っていれば、その問題による幸福感の低下は防げる可能性があるわけですね。
研究:幸福感にはどちらが強く影響するのか?
ハーバード大学の研究では、4083人を対象にした幸福感の調査データを用いて、貧乏とお金のコントロール感はどのように幸福感に影響するのかを分析しています。
この研究でいう貧乏の基準としては、日本円で約5万円の急な出費があったときに、それを自分の貯金から一括で払うことを選ぶか?となっています。5万円を友達に借りるとか、ローンを組むとかを選んだ人は今回の貧乏の基準に当てはまります。アメリカでは貧富の差が広がっているようで、今回の研究データで見てみても20.8%の人がこの貧乏の基準に当てはまっているんですね。
結果:お金のコントロール感の影響力とは?
早速研究の結果を見てみると、
- 貧乏であることよりも、お金のコントロール感が無い方が大きく幸福感を低下させていた
ということ。
もう少し具体的にお金のコントロール感が幸福感にどのように影響していたのかというと、お金のコントロール感が高い人は
- 幸福だと感じる日が多かった
- 日々エネルギーが満ち溢れていると感じていた
- 人生の満足感が高かった
- 人生に意義を感じていた
- 身体やメンタルが不健康である日が少なかった
ということ。
実は自分で物事をコントロールする感覚は幸福感にとって大切なもの。仕事を自分でコントロールする感覚は働きがいを生みますし、人生を自分でコントロールしている感覚は人生の幸福感を生みます。お金のコントロール感も同様に大切だということで、お金に関する問題を自分でうまく対処できるという感覚は、様々な側面から幸福感を高めてくれるんですね。
まとめ
本稿では「お金のコントロール感と幸福感」についてお話ししました。
ポイントをまとめると、
- お金に関する問題を自分でコントロールして対処できる感覚は幸福感を向上してくれる
- お金のコントロール感の影響は、貧乏であることよりも幸福感に大きく影響する
ということ。
コップの中の水をもう半分しかないと考えるか、まだ半分あると考えるかの違いのように、物事は見方次第でポジティブになったりネガティブになったりします。お金も一緒で、上を見て自分よりお金持ちと比べれば、お金はいつまでも足りなく感じてしまいます。なので他人と比べることはやめて、自分自身のためにお金をうまくコントロールして使えているかを考える方がずっと大切なのかもしれませんね。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]
*1: The Role of Financial Fragility and Financial Control for Well‐Being