将来の計画を立てる人ほど、人生の満足感は高いのか?
本稿のテーマは「計画」について。ただし、仕事の計画のような短期的で問題解決の計画でなく、将来どのような人生を送るのかみたいな長期的でオープンな計画のことです。目先の問題を計画的にこなすことも大切ですが、そればかりで視野が狭まってしまうのも問題。人生をより良い方向へ舵取りするには、しっかりと長期的な計画も持っておくことも大切なんですね。
そこで本稿では、
- 長期的な人生の計画を立てやすい人の特徴は何か?
- 長期的な人生の計画を立てる人にはどんな良いことがあるのか?
について調べてくれたブランダイス大学の研究(*1)を見ていきましょう。
人生の計画と満足感
この研究では老若男女2971人を対象として、将来の計画を立てているかどうかを測定しています。測定の仕方としては以下の五つの質問で、1(その通りだと思う)〜4(全くそう思わない)の範囲で点数づけをしています。
- 私は将来の計画を立てるのが好きだ(−)
- 近い将来の目標を立てることは役に立つと思っている(−)
- 私は毎日その日を大切に過ごしている(+)
- 今日のことで頭がいっぱいで、明日のことを考えることができない(+)
- 将来の計画なんでどうせ環境が変化するから無駄になるものだ(+)
上の二つの質問は点数を逆転して計上することになっていて、合計点が低いほど長期的な計画を立てるのが好きな人になります。
そして、これらの長期的な計画に関連する要素として
- 年齢
- 性別
- 教育(大学以上、高卒、中卒など)
- 収入
- ソーシャルサポート(家族のサポートなど)
- 性格(ビッグファイブ性格分析)
- 過去一年のストレスな出来事の数
- 認知能力(ワーキングメモリと問題解決能力)
- 人生のコントロール感
- 人生の満足感
が測定されています。これらの要素が人生の長期的な計画とどのように関係するのかを、2971人のデータを用いてがっつり分析してくれたわけですね。
結果:どんな人が長期的な計画が好きなのか?
最初に長期的な計画を立てやすい人の特徴を見てみると、
- 年齢が若い人ほど長期的な計画を立てやすい
- 教育レベルが高い人ほど長期的な計画を立てやすい
- 収入が高い人ほど長期的な計画を立てやすい
- 家族のサポートが厚い人ほど長期的な計画を立てやすい
- 真面目で誠実な性格と、新しい経験にオープンな性格な人は長期的な計画を立てやすい
ということが分かっています。
一方で、長期的な計画にとってプラスにならなかった特徴も見てみると、
- ワーキングメモリや問題解決といった認知能力は、長期的な計画とは関係なかった
- 解雇や借金などのストレスな経験の多さは、長期的な計画とは関係なかった
- 神経質な性格や周りに同調しやすい性格の人は、逆に長期的な計画をしにくい傾向があった
ということ。
面白いのが認知能力が関係がないという結果。問題解決やワーキングメモリは短期的な計画力には必要であっても、長期的な計画ではあまり重要でないようですね。
結果2:長期的な計画は人生の満足感を高めるのか?
続いて長期的な計画を好んでする人の良い効果を見てみると、
- 長期的な計画をする人ほど、人生の満足感が高い傾向があった
- さらに、長期的な計画と人生の満足感の関係は、年齢が高まるほど強くなった
ということ。
やはりちゃんと計画的に人生を過ごす人の方が幸福感は高いようです。また、若者の方が長期的な計画を好む一方で、高齢者の方が長期的な計画による人生の満足感の向上は大きいということ。なので、高齢になっても将来やりたいことなどの人生のプランニングをしていくことが大切なのかもしれませんね。
そして、最後にこの研究から分かったことは
- 長期的な計画が人生の満足感を向上してくれる背景には、人生のコントロール感の向上が絡んでいた
ということ。長期的な計画を立てると、自分で計画通りに人生をコントロールしている感覚が得られるんですね。このコントロール感がポイントで、後から人生を振り返った時に、自分でコントロールしてきたと実感できる人生ほど、満足できる人生だったと思えるわけですね。
まとめ
本稿では「長期的な計画と人生の満足感」についてお話ししました。
ポイントをまとめると、
- 長期的な人生の計画を立てる人は、自分の人生をコントロールしている感覚が得られて、人生の満足感が向上する
- 長期的な計画は年齢が高まるほど減ってしまうが、実は高齢者ほど長期的な計画で満足感の向上しやすい
ということ。
計画もなくその日暮らしをしていると、もっとあんなことをしておけば良かったという後悔が生まれてしまうでしょう。後から振り返って満足できる人生だったと思えるように、自分の人生を長期的にプランニングしていきましょう。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]