次の予定があると時間が短く感じて、こなせるタスクも減ってしまうという研究
人の時間の感覚は一定ではなくて、集中しているときにはあっという間に時間が過ぎるように感じたり、逆に退屈なときには時間が延々と長く感じたりします。こうした時間の感覚は、モチベーションやタスクの難易度など様々な要素の影響を受けるのですが、ニュージャージー州立大学らの研究では”次の予定の有無”に注目しています。
例えば、
- 次の予定が特に決まっていない状況でのびのびと時間を過ごす
- 1時間後に友達の約束が決まっていてそれまでの1時間を自由に過ごす
この2つでは、同じ1時間を過ごしたとしても、時間の感じ方や使い方が変わってくることが想定できます。
この点についてニュージャージー州立大学の研究では、
- 次の予定が決まっていると、時間を短く感じてしまい、その時間内でこなせる仕事の量が減ってしまうのでは?
ということを実験してくれているので、本稿ではその中身を見ていきましょう。
次の予定と時間の感覚
ニュージャージー州立大学の研究では、次の二つの状況を作って実験をしています。
- 次の予定の時刻を伝えて自由時間の終わりを明確に伝える場合
- 次の予定は特になくて合図が出るまで時間を使っていいと言う場合
そして、この二つの状況下で一定時間過ごしてもらって
- 時間の感覚に違いがあるのか?
- 時間内にどのようなタスクをこなしているのか?
を比較しています。
もちろん両者の違いは次の予定が伝えられるかどうかだけで、実際の実験時間は同じになっています。
結果:次の予定と時間の感覚
まず最初に、時間の感じ方を1(とても短く感じた)〜50(とても長く感じた)で50段階で点数付けをしてもらった結果を見ると、
- 次の予定がない状態では、M=18.27で少し短く感じていた
- 次の予定がある状態では、M=13.76でもっと短く感じていた
となっています。
これは想定通りの結果で、次の予定が迫っているとそれまでの時間はとても短く感じてしまうということ。この現象は次の予定のために準備する時間が足りないというわけではなく、準備がバッチリな完全な自由時間でも、その時間を短く感じてしまうということです。
結果2:次の予定とタスクの取り組み
次の予定が時間感覚を短くすると、それによって起こり得る悪い効果が、
- 「もう次の予定まで時間がないから、他のタスクはこなせないな」
と隙間時間を有効活用できなくなってしまうことです。次の予定がない自由な1時間ではこなせたはずのタスクが、次の予定が迫っている1時間では諦めてこなせないということが起こり得るんですね。
この点に関して実験で確かめてくれた結果を見てみると、
- 次の予定が迫っている状況では、タスクをこなす数が減っていた
- 次の予定が迫っている状況では、時間内に実現可能でより有益だと分かっていても、難しいタスクを避けてしまう傾向があった
ということ。
次の予定があると時間内にあれこれ挑戦することは諦めて、簡単なタスクを少しこなして次の予定までの時間を潰しやすいということですね。うーん、これは仕事では意外と大きくパフォーマンスを落としそうなので、注意していかなければいけませんね。
結果3:タスクの実行力を上げるには?
最後に、タスクの種類によっては、次の予定がある状況でも実行されやすくなることが分かっていて、
- 小さなサブタスクに分割可能なタスクは、次の予定がある状況でも比較的実行されやすかった
ということ。
次の予定がある状況でタスクに手が出しにくいのは、時間が足りなくなることへの不安が主な理由。なので、タスクが細かく分割できて時間内に終える目処が立てば、タスクの実行力も向上するわけです。これは活用もしやすいありがたいテクニックですね。
まとめ
本稿では「次の予定と時間の感覚」についてお話ししました。
ポイントをまとめると、
- 次の予定が決まっていると、その予定までの時間は感覚的に短く感じてしまう
- 次の予定までの隙間時間では、こなすタスクの数が減り、難しいタスクへ手が出しづらくなってしまう
- これを解決するには、タスクを細かく分割することが有効
ということ。
社会人であれば打ち合わせなどで予定は色々と埋まっているものでしょう。予定との隙間時間をうまく活用してパフォーマンスを上げるには、あらかじめタスクを細かなステップに分割しておきましょう。電車を待っている間にスマホをパッと取り出して読書するみたいに、すぐに始められる隙間時間活用法を手元に用意しておくのもいいかもしれませんね。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]
*1 : When an Hour Feels Shorter: Future Boundary Tasks Alter Consumption by Contracting Time