コロナで不安が高まるほど、陰謀論を信じやすくなってしまうのか?の研究
株価の暴落であったり、コロナショックであったりと、社会が不安定な状況では陰謀論が増える傾向があります。
例えば、コロナに関して言えば、
- コロナは生物兵器として人間に開発された説
- ビル・ゲイツがコロナのワクチンで人類にマイクロチップを埋め込もうとしてる説
- 大企業が利益を優先しなかったらコロナは初期の頃に収束していた説
など、根拠もない陰謀論が巷を騒がせました。最近ではインターネットやSNSを通じて情報が拡散されやすいので、こうした陰謀論が広まりやすくなっていることも関係しているのでしょう。
そこで本稿では、
- コロナの状況下で陰謀論が信じられやすいのは、コロナにより人々の不安が高まったからなのか?
について調べてくれたスロバキアの研究を見ていきましょう。
不安と陰謀説
スロバキアの研究では、コロナの状況下で陰謀論を信じやすくさせる要因として
- 不安
- コントロール感の欠如
の2つを取り上げています。
コロナ禍では不安が高まっているのは間違いなく、アメリカでは50%以上の人の不安が高まったという研究報告もあります。不安が高まると陰謀論を信じやすくなることは以前の研究でも確認されていて、コロナのような状況では、その責任を誰かに押し付ける陰謀論が信じやすくることが想定できます。例えば、コロナは中国のせいみたいなことを根拠がなかったとしても信じてしまいやすいんですね。
また、コロナ禍では外出が規制されて生活の自由が制限されたり、その影響で仕事がうまくいかなくなったりします。こうした影響は自分ではどうしようもないものなので、自分自身で仕事や生活をコントロールしている感覚が失われてしまいます。そうなると面白いのが、人はコロナの状況を少しでも理解してコントロール感を取り戻したいと思うようになり、陰謀論を信じやすくなってしまうと考えられるんですね。
分析:陰謀論の信じやすさと不安・コントロール感
スロバキアの研究では、不安とコントロール感の欠如が陰謀論の信じやすさに与える影響を調べるために
- コロナに関する陰謀論の信じやすさ
- コロナに関係しない陰謀論に信じやすさ(超常現象や似非科学)
- コロナのリスク
- コロナの不安
- コントロール感の欠如
- 政府やWHOなどの機関への信頼
を783人を対象に測定しています。
結果:陰謀論を信じやすいのはどんな人か?
データの分析結果を見てみると、
- 不安とコントロール感の欠如はどちらも陰謀論の信じやすさと相関していた
(コロナだけでなく、コロナに関係しない陰謀論も信じやすくなっていた) - WHOや政府などの機関への信頼が高い人は、不安やコントロール感の欠如が低く、陰謀論を信じにくい傾向があった
- 高齢者ほどコロナのリスクを高く感じていて、陰謀論を信じやすい傾向があった
- 教育レベルが高い人ほど陰謀論を信じにくい傾向があった
ということ。
さらに、単純な相関でなく年齢や性別などを考慮したより複雑なモデルでの分析結果を見てると、
- コロナのリスクを高く感じている人は、陰謀論を信じやすかった(0.10)
- コロナでコントロール感が欠如している人は、陰謀論を信じやすかった(0.20)
- コロナで不安が高まっている人は、陰謀論は有意には向上していなかった(0.05)
ということ。
つまり、コロナで陰謀論が信じやすくなってしまうのは、不安ではなく、コントロール感が失われてしまうのが1番の原因ということです。緊急事態宣言などで生活が制限されると、不満も溜まってしまうもの。こうした状況を誰かのせいにしたくて、陰謀論を信じやすくなってしまうのかもしれませんね。
まとめ
本稿では「コロナで不安が高まるほど、陰謀論を信じやすくなってしまうのか?」についてお話ししました。
ポイントをまとめると、
- コロナで陰謀論を信じやすくなってしまうのは、不安でなくコントロール感の欠如が1番の原因
- 政府やWHOなどの機関を信頼している人や、不安やコントロール感の欠如も少なく、陰謀論を信じにくい
ということ。
教育レベルが高い人ほど陰謀論を信じにくいという結果も出ています。なので、自分が陰謀論や間違った情報に流されないためには、情報の根拠を批判的に考えていくクリティカル・シンキングのスキルの考え方を忘れないようにしましょう
以上、本稿はここまで。
[参考文献]